上条先生との約束

影狼

1時間目 先生

誰もいない0時頃の路地、柚木は血濡れたナイフを持った男に腕をつかまれ捕まっていた。

「お嬢ちゃんみたいな子がこんな時間に一人でいるなんて珍しいね・・・」

にやりと不気味に笑う男を見ようとせずただ路地の奥の方を見つめる。

「おじさん、離してください。」

「怯えもしない奴なんて初めてだよ。お嬢ちゃんに少し興味出ちゃったかも。」

男は柚木の話を聞かずに興味深そうに柚木を見る。

その視線に少し寒気を感じながらただ一言ぽつりとつぶやいた。

「上条先生・・・」

男は何を言っているんだという顔になる。

「先生?こんな時間に助けなんて」

少し馬鹿にしたような風に言うと背中に急に痛みが走った。

「ヒーローの参上なんてね?」

「・・・」

後ろにはニコニコと笑った男が血にぬれたナイフを持ちながら柚木を見ていた。

「上条先生遅いです。」

柚木は痛みで力が緩んだ男の腕を振りほどいて上条の近くへと行く。

「な、何なんだお前は!!」

「俺?俺はこの子の護衛人(ナイト)だよ。」

上条はその言葉と同時にナイフを男に突き刺す。

その動きは素早いもので抵抗も出来ずに男は倒れた。

「今日もありがとう御座います。」

ぺこりと頭を下げると上条はぎゅううううううっと柚木を抱きしめた。

「まったく、君は俺らみたいな『殺人鬼』に好かれやすいから凄いヒヤヒヤしたよ・・・」

「先生、苦しいです。」

上条はそんなこと気にせず力を強めて抱きしめ続ける。

「本当に柚木は可愛すぎて殺したくなっちゃうよ。」

「言ってることが物騒ですよ。あと早く離してください。」

上条はしぶしぶ腕から柚木を解放すると柚木はため息をついた。

「先生は何でこんなに私に「好き」だとか「愛してる」だとかいうんですか?ぎゅうぎゅう抱きしめてり。もう暑苦しくなるのでやめてください。」

「好きだからやるに決まってるだろ。」

マジメに答える上条にまた大きくため息をついた。

「先生はロリコンなんですか?先生は24歳で私は17歳ですよ?」

「年齢なんて関係ないだろ?恋はするものではなく落ちるものなんだから。」

「私は一度も『好き』とも言っていませんがね。そういうことはちゃんと相思相愛になった相手にやってください。」

「俺の恋はお前で最初で最後だ。それに顔を真っ赤にするじゃないか、俺にだってまだチャンスがあるって事だろ?」

柚木の手を取ると自分の頬に手をあてた。

真っ赤になっていく柚木の顔を見て上条は優しい笑みを見せる。

「もう好きにしてください、私は絶対に好きにはなりませんから!!」

顔を真っ赤にしながらそっぽを向く柚木の手の甲に上条はキスを落とした。

「それはどうかな?絶対にお前を俺なしじゃ生きていけなくなるようにしてやる。」

「それはもう違う意味でなってるじゃないですか!」

柚木は上条の目を見て冷静に答えた。

「まぁ、そうだな。だがそれは「今」だけの話だろ?」

「そうですけど・・・」

柚木は自分の手を上条から離すと黙り込んだ。

「今後の事は「今」じゃわからないから二人でゆっくり考えてみようじゃないか。な?」

ぽんっつと柚木の頭をなでると柚木を抱え上げた。

「ちょ!?何するんですか!?」

「帰るんだよ、『俺らの家』に。」

「おろしてください!!」

「今日は月が綺麗だね。」

「話をちゃんと聞いてください!!」

男の死体をそのまんまにy区域の路地の奥にある家に闇に溶けるように消えて行った。

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