十八 …… 十月六日、深夜
◆十八 …… 十月六日、深夜
「……ようし、これでいい」
ダニエルは一息ついて、テーブルに広げた地図から目を離した。ペンを置いて、凝りを解すように肩を回す。
地図は、細かい書き込みだらけで、使い込んだ参考書のようだった。ダニエルは自分が実際に歩いた記憶を元に、地図に国境までのルートを書き込み、各所に注釈を入れたのである。そしてここに、アミアン脱出限定、特別仕様の地図が完成した。
まったく、なんと物騒な地図だろうと考え、ダニエルは可笑しくなる。教会の連中が見たら目を回すかもしれない。
(今日の偵察で、国境の強行突破も現実味を帯びてきた。だが、まだ油断するには早過ぎる)
ダニエルは壁に掛けられた斧を手に取り、裏口から外へ出た。斧を小屋に寄りかからせるように置いて、切り株の椅子に腰を下ろす。両手を組んで、雑念を掃い、瞑想に耽る。
瞑想と修練は、毎日の日課だったが、ここ数日――少女に会ってから――は欠かしていた。
強行策を取るにせよ、懐柔策を取るにせよ、今から準備を始め、近い内に動くつもりである。心身両面で、最高のコンディションを保っておく必要があった。
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