第2話
第2話 うぇるかむとぅ異世界
ーーーわたしをーーたすけてーーー
ーーわたしをーーたすけないでーーー
頭の中で声が響く
声が1つになったと思えば。また別れ始める。重く怠そうな声。弾むような透き通った声。
「ったく。どっちなんだよ.....」
疑問を口にした瞬間。意識がゆっくりはっきりしてくる。片方は聞いたことなんてないのだが片方は悠莉にどこか似ているな声をしていた。
すると重く怠そうな声がイツキに告げる。
ーーあなたの加護は・きょせい・ですーー
「加護??虚勢??あんた何訳わかんねぇこと言ってんだ?」
ーー・きょせい・の効能は相手に余裕があると錯覚させる。それだけですーーーー
「は??それだけ?」
ーーはいーー
「ちょいちょいちょいたんまたんまー!それってまさか俺の能力で、俺、異世界転生すんの?」
ーーー異世界転生?ふふ。変わった言葉を使いますね。そうですよ?貴方は生まれ変わるのですーー
どうやらガチの方の異世界転生のようだ。これならあの事故の地縛霊化現象にも納得がいく。
ーーーーさぁ我が愛しの加護は渡しました。さぁナツカワ イツキよ。この力を使い迫りくる困難を打破して私のところまで辿り着いてくださいーー
まるで我が子を預けたといわんばかりの言い様だ。
「はっ。悠莉と別れたばかりの傷心の俺にそんなこと頼んでも意味ないと思うぜ?」
ーーーいいえ?あなたは必ず私の所へ。ぁぁ、これからが楽しみですーーー
なんの根拠かわからなかったが妙に自信に満ち溢れた声をしていた。まるで未来が読めているかの様に。
「まぁいいや。でもな。でも。1ついいか?虚勢。虚勢ってなんだよ!絶対あんまり使えねえじゃねぇかよ!某大人気パズルゲーだったら絶対銀卵くらいの価値だよねそれ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これ以上は何も言わないようだ。
どうやらチュートリアルとやらは終了らしい
その証拠にチクチクと体の感覚がもどってくる。
今度こそ。意識が体の指揮権を獲得してーーー???
ーーあれ?
ーー手も指も足も動かねぇーー
すると再び体の感覚は消え、代わりにただ白い世界が広がっていた。
「どーなってんだこれは…まさか俺が加護とやらに文句をつけたから?転生はやっぱ無しですとか?ごめんなさいごめんなさい」
さすがにそれは無いだろうとナツキは土下座をして先ほどの重く怠けた声の主に謝る。
すると今度はあの悠莉に似た声が告げる。
ーーーたすけないでーーわたしをーーー
ーー殺して。
「は??たすけての次は殺してだぁ?何言ってんだお前ら」
ーーーあなたに俺の能力を託しますーー
今度聞こえてきた声は明らかに男性。声的に同い年かそれ以上。そんな感じかした。
「ちょ待てよ。能力?加護?」
ナツキは不躾に声の主に先程と全く同じ質問する。が、しかし
ーーあー!ーな!ーーーーー
声が途切れ途切れになっていく。
ーーなんなんだ?能力?託す?わけわかんねぇ事ばっかだな。
瞬間。イツキは頭部に冷たい感触を覚え目覚める。
その冷たい感触は間違いなく水だった。感じた水の感覚は死んだ自身の肉体が異世界で再び蘇ったことを教えてくれた。
「うわっ!冷めてぇ!」
まずはお決まりのリアクション。普通の場面なら怒るところだが今はこの冷たさに感謝さえしながら呟く。
「生きててよかった!死んだけど」
「えっ?死んだの?」
瞬間耳を疑った。
ーーここにいるはずがない。だってここは異世界で、俺は転生したばかり。ないないない!悠莉がここにいるなんて…
両耳を通りすぎたのは悠莉の声そのものだったのだ。確かめるのが怖い。もし悠莉であれば悠莉も死んでしまったということになるからだ。そんなことはあってはならない。
イツキは最大限確かめるのを躊躇うように後ろを振り向いた。
「大丈夫?怪我はない?まだ死んではない、よね?」
そこには白の少女が心配そうにイツキを見つめていた
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