第六章 ゴレイロへの挑戦
第19話 へろへろフットサル(上)
久しぶりの
筋肉痛やこむら返りになるのを恐れてか、コイツの動きがどことなくぎこちない。
「別に無理しなくてもいいのよ」
「なぁに、体重計のぞいたお
着替えをのぞくのはお詫びするにあたらないのかよ? ヲイ!
「ネぇチャン、おわったでぇ」
コイツの体にシャワーをかけてやる。
気をつけていてもやっぱり垢はでるんだな~。
ぬるま湯を掛けながらコイツの体をなでていると
”ムチッ!”
……なんだろう? お腹に何かが詰まっているような?
「どうしたぁ? ネェチャン?」
コイツの声がどことなく勝ち誇っているのは気のせいかな?
「ねぇ……あんたひょっとして?」
「ムフフフ、さすがネェチャンや、ようわかったのう」
『おめでた?』
「なんでワイが妊娠するんや! 父親は誰や!? ネェチャンか!? ネェチャンは女やろ!? どないしてタネを仕込むンや! フグの白子でも食うタンか!? いっぺん食わしてぇなぁ~!」
そんな高いモノ誰が食わせてやるか!
食べた私がおめでたになったらどうする! ……あれ?
「ハイハイ、ジェットなんとか一人ツッコミお疲れ様。でもお腹周りが固いんだけど?」
「ネェチャン。男の体で固い部分があって驚いてちゃ、いざって時に困るでぇ」
「まったく……アンタはセクハラ中年親父か?」
「おんやぁ~ワイは
くっ!
「もしかして病気? 肝硬変とか?」
「やめてぇ~なネェチャン。その言葉はハゲと水虫と加齢臭に匹敵する、中年親父に対する『コンハラ』やで~」
「こんはら?」
「コンプレックス・ハラスメントや。セクハラ、パワハラとかの
「はいはい。って、その三つはわからなくはないけど、肝硬変ってお酒の飲み過ぎが原因でしょ? 自業自得じゃない!」
「酒の誘惑に負けた弱い男を虐める言葉でもあるンやでって、えらい脱線してもうたがや。ネェチャンが肝硬変なんて不吉な言葉を言ったせいやぁ~」
「とりあえず体拭くわよ。アンタは元々海のモノだから雨に濡れても何ともないけど、人間様は風邪をひくからね」
”フオォ~!”とドライヤーで髪を乾かしながらコイツに尋ねる。
「んで、なんで体が固くなったんですかシュモク様」
「えらい棒読みで投げやりな言葉やな。まぁええわ。つまりな、ワイは生まれかわったんやで!」
ジト目で睨みつけたる。
「そういう目をするのも無理ないけどな。簡単に言うと漫画でもあるやろ? 修行で体がボロボロになった主人公が、パワーアップして敵を倒すってヤツや」
「修行って、アンタ毎日食っちゃ寝食っちゃ寝して……もしかしてこの前の筋肉痛?」
「まぁそれもあるけどな。ネェチャンにオチを言われんよう先に言うわ。空を飛ぶ時に尾びれや胸びれを使うンやけど、それがいいトレーニングになったんや」
「尾びれって、アンタ超能力で空を飛べるんじゃ?」
「ネェチャン、超能力も無限やないで。この前ネェチャンにカットされたけど、血と涙の物語があったんや……」
「あ~つまり、調子にのって超能力で空を飛んでいたら、力尽きて墜落したと」
「……またオチを先に言う~。まぁええわ、ほんで超能力と体中のヒレを半々に使った方法で空を飛ぶことにしたら、いつのまにかマッスルボディーを手に入れたんや」
「へぇ~」
ダイエットやスポーツジムの会社からスカウトが来そうだな。
「つまり、今
「お! ええ言葉やんけ。そうや、わいは超能力とマッスルボディを持つ、ハイブリッドシュモクザメやぁ!」
惰眠と中年親父のハイブリッドとは言わないでおこう。
「というわけや。今のワイは例え地球に隕石が落ちてきても、超能力とこの尾びれで、宇宙の果てまで蹴飛ばしてやるでぇ!」
もっと大きく出たな。ブラックホールの次は宇宙の果てかよ。
「はいはい、その時になったらお願いする……」
”ピッピロピロ!”
SNSの着信だ。ワイルドから?
《フットサルのメンバーが足りない!(T_T) ヘルプ頼む!m(_ _)m》
《他の子は?》
《不思議とおしとやかは確保した(^_^)v》
大丈夫か? すでにチームが崩壊しているんじゃ?
《いいよ。でもマークって言うの? 相手にくっついてヘロヘロ走るぐらいしかできないよ》
《よっしゃぁ! あと一人! できれば『ゴレイロ (Goleiro)』だ!》
まだ足りないのか……。ん?
《ごれいろ?》
《サッカーで言うゴールキーパーのことさ。やることは同じだよ》
ふぅ~ん、呼び名が違うんだ。
《ねぇ、ゴールキーパー、ごれいろって、別にボールを手でキャッチしなくてもいいんでしょ?》
《うん、手や足でボールを弾き飛ばしてもいいよ。要はゴールの中にボールを入れなければいいんだ。もしかしてアテがある?》
《ん~これから頼んでみるけど。本人が言うには隕石を宇宙の果てまで蹴飛ばせる力があるみたい》
《はああああああ??》
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