第17話 ドキドキ体重計
雨はやんで、巨大な猫の神様も遠くへ行ってしまった。
私の晩ご飯は、残り物をぶち込んだおうどんなのだ。
コイツには冷凍の唐揚げをチンして、口の中へ放り込んだ。
「海のサメがなんでカミナリを怖がるのよ? そもそも海の中まで落ちないでしょ? まぁ今日のアンタは空飛んでたけどさ……」
「ネ、ネェチャン……クッチャクッチャ……こ、これにはなぁ……ブ、ブラックホールよりも、ふ、深ぁ~いわけが」
大きく出たな。マリアナ海溝の次はブラックホールかよ。
てかまだアゴが震えているため、言葉が途切れ途切れだ。
『ケ○の穴に手ぇ突っ込んで、奥歯ガタガタ言わせたろか!』
って、こういう状態なのかな?
そもそも、サメって奥歯あったっけ?
……イカンイカン。食事中になんてことを考えているんだ私。
こりゃ相当コイツに染……毒されたな。
「アレは……映画でおなじみ、背びれを出して日向ぼっこしていた時やったわ」
「そこにカミナリが落ちたの?」
「いきなりオチを言わんといてヤァ~。ネェチャンと映画いく彼氏は苦労する……そもそもいないから別にいいか」
うっさい!
「幸いにも体がしびれただけで命に別状はなかったんやが、どうもそれ以来、あの音を聞くと体がビビってまってなぁ」
まさかそのショックで言葉を話せたり、空を飛べたり、あまつさえ超能力を……。
まさかね。
「拒否反応ってなんていうたかなぁ~? たしか動物の名前を取って……
《うましか》?」
「うん、それで合ってるよ」
「ネェチャンナイスボケやで! んじゃこっちも遠慮なく一人ツッコミさせてもらうでぇ~」
『《トラウマ》とちゃうんかい!』
『知ってたら最初からいわんかい!』
『むしろ
『ちょっと待てやぁ! 関西人なら『アホウドリ』ちゃうんかい!』
「はぁ~《ジェットストリーム一人ツッコミ四連発》、バッチリ決まったわぁ~。久々にスカッとしたでぇ~」
「ハイハイお疲れ様」
カミナリ様がいなくなったら急に元気になって。
まぁいいか。
シャワーはさっき浴びたからと、コイツはバラエティーが終わるとそそくさと木箱のベッドに横たわった。
久しぶりに入る、一人だけのお風呂。
ここからは、乙女のシークレットタイム。
別に”ごにょごにょ”するわけじゃないけどね。
体を拭き、バスタオルを巻いたまま、とある文明の機器へ足を、そして体すべてを預けた。
”ピピッ!”
「……やっぱり、増えている」
思わず天を仰いでしまった。
「ほうほう、これはこれは……」
……はっ!? 慌てて視線を落とす。
「ちょっとあんたぁ! なに体重計のぞいているのよ!」
「昼間あんな目にあったやさかい、聞き慣れない音を聞いたら、こっちも気が気でないんやで」
くっ! ドアを閉めていなかった私の不覚。
「アンタから見てもやっぱり……そう思う?」
恐る恐る聞いてみた。
「……ネェチャン、ワイは確かにスケベやがな、おなごに対して言ってはいけないことの分別はついているつもりやで」
「……あ、ありがとう」
体重計のぞくのは……まぁいいか。猫や犬に見られたと思えば。
でもこの言葉って、暗に肯定しているような?
「芸人もマグロも、脂がのったのが一番
私は芸人でも、ましてやマグロでもないけど。
不感症の女性をマグロって言うけど、むしろ干物女の方が……。
イカンイカン! 自分を
コイツはこれで、慰めているつもりなのかな?
ふぅ、なんか今日は、お互いの弱みを見せ合った気がするなぁ。
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