第四章 ヘロヘロ? あかすり

第10話 アカアカアカ・スリスリスリ

 歓迎会という名の女子会は終わったが、なぜか後日、”二次会”をやらされる羽目になった。

 私ではない、コイツがだ。


「なし崩しにこんなことになったけど大丈夫? あんまり無理すると、のぼせるだけじゃ済まなくなるわよ」

 私はドリンク剤のふたを開けると、コイツの口に流し込んだ。


「(グビグビ!)大丈夫やでネェチャン! この前はぎょうさん世話になったからなぁ! それに、せっかくの美女達からの”ご指名”や! この体がすりきれるまでご奉仕させてもらいまっせぇ!」

 ヲイ! なんであの三人には”美女”って言うんだよ!


「アンタに言われてドリンク剤一式、ネット通販で買ったけどさぁ……これ、サメが飲んでも大丈夫なの?」

「ええで! これってウミヘビエキスやろ! ワイはサメやからな、海のモンなら大抵のものは大丈夫や!」


「でも、マムシやスッポンもあるよ?」

「マムシやスッポンも、ウミヘビやウミガメと思えば大丈夫やで!」

 まぁフライドチキンやビーフジャーキーとか海にはないものをバリバリ食べているから、それに比べたらまだましなのかな?


「おおお! 効いてきたでぇ~! 今ならホオジロの野郎とタイマン張っても余裕で勝ちそうやぁ~!」

 その前に身長差? いや、体長差を何とかしなさい。向こうはアンタの十倍はあるんだぞ。


”ピ~ンポ~ン!”

「きたきたきたぁ~!」

「はぁ~い!」

 飛び出た両眼を血走りながら叫ぶコイツ。

 その声に背中に押されながら、私は玄関へと足を運ぶ。

 ”ガチャッ!”っとドアを開けると

「おっす! おっじゃましっや~す!」

「こんばんわ。本日はご相伴にあずからせて頂きます」

「おい、来てやったぞ。さぁ、存分にもてなしてもらおうか」


 先日、コイツの歓迎会に出席した、ワイルド、おしとやか、不思議が、それぞれ手にビーチバッグを持ちながら家に入ってきた。

 ダイニング兼自室のワンルームに集まった四人と一匹。

 開口一番、私が念を押す。


「本当にいいの? この前のエロエロ格好じゃなく、100%エロ、R18ものだよ? いくら水着を着るからって最後には脱ぐ羽目になるから、ポロリもモロ出しもあるんだよ?」

 そう、すべてはこの三人の需要と、コイツの供給が一致した結果なのだ。


 ― ※ ―


 時はさかのぼる。

 歓迎会が終わった、ある夕食の時。


「ネェチャン」

「ん~なに?」

「この前、ワシの為にもてなしてくれてありがとな」

 不意打ち来た。

 ちょっと照れるけど、おくびに出すとつけ上がるからあくまで冷静に……。

「ん~。別に~。そもそも友達の方から話を振ってきたからね~」

「ま、そんなことだろうとおもっとったわ」


 前言撤回!


「でもな、ネェチャンのビキニ姿は惚れ直したで」

 シュモクザメ! 女心をもてあそぶ、恐ろしいサメ

「ハイハイありがとさん」

「まぁネェチャンにはこれぐらいで……あの”美女”お三方にも何かお礼をしたいんやが~なにがええんやろか~?」


 再度、前言撤回!!


「ん~。なんだろう~? そもそもアンタはサメだし~人間相手のお礼か~思いつかないな~。いて言えばフライドチキンやローストビーフにビーフジャーキーのお返しとして、アンタが海に潜ってクロマグロをってくるとかしないとね~」

「ネェチャン……鬼やな。”水族館に忍び込んで盗ってこい!”と言ってるようなもんだで~」


「そういえば市内に水族館があったね。ここに引っ越していつかは行こう行こうと思ってたけどバイト忙しかったから……。場所調べようか?」

「ネェチャン……年頃のおなごが一人水族館に行くのは……せめて男と……」


”ゴンッ!” 


 結局、SNSでお三方に聞いてみることにした。

 ”美女”を抜いたのは特に意味はない。ないんだぞ。


《コイツがこの前のお礼がしたいって。なにがいい?》

《垢すり!》

《垢すりをご所望致しますわ》

《垢すりで我に奉仕しろ》

 早っ!


「どうする?」

 一応聞いてみた。

「やったるでぇ~! 三人まとめてかかってこいヤァ~!」


 ― ※―


「とりあえず誰からやる? コイツの顔を見ればわかるけど、もう準備万端だから」

 鼻息を荒くしているコイツを指さす私。……サメに鼻の穴ってあったっけ?

 いざとなると、ちょっともじもじしながらなかなか名乗り出ない。


 のちにコイツが述懐する。

『あの時のお三方は、まるで筆おろししてもらう時の……』

 言い終わらないうちに、私がゲンコツをお見舞いしたのは言うまでもない。 


「よ、よし。私が行く!」

 意を決して立ち上がったのは、この前のエロエロお着替え同様、ワイルドからだった。


「な、なにかその……気をつけることはないかな?」

「特にないよ。背中とお尻を空けて寝っ転がるだけ。風呂場は狭いけど、一応あたしもそばにいて準備は手伝うからね」

「そ、そうか、なら安心か……」

「でも”ヤる”時は泡が飛び散るから、私は外に出るよ」

「って、お~~い!」


「そんなに心配せんでも大丈夫やで! ワイが優しく手ほどきしてやるから」

 コイツがニヤケながら胸びれをフリフリしている。

 その顔を好意的にとらえたのか

「そ、そうかい。まぁダチの言うことだからな。い、痛くしたら承知しねぇぞ!」


「あ、そうだ? お風呂どうする? 一応沸かしてあるから入ってもいいよ」

「さ、さすがにそこまでは……」

「そう……ヤッた後、お風呂入るの気持ちいいよ」

「な、何かそれ……別の意味に聞こえねぇか?」


 ……そうかな?

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