第8話 エロエロお着替え 上

 自己紹介(?)が終わると、コイツが期待するような眼差しを、私に何度も向けてくる。

 なんだろう? ……あ~ハイハイわかりましたわかりました。


 さすがに自分から言う勇気はないのか、多少の礼儀を持っているのか。

 ”エロエロ格好を見せてくれ!”に礼儀も何もないけどね。


 ”パンパン!”と、私は幹事よろしく手を叩く。

「え~うたげが始まりましたが、主賓しゅひんの”たっての希望”により、早速、お着替えタイムに入りたいと思いま~す」


「ちょっと! ネェチャン! そんなぁ~、なにやらワシがせかしたような……。お嬢様方、すんまへんなぁ~」

 ぺこぺこ頭を下げながら、思いっきり顔がにやけてやがる。わかりやすいヤツ。


「いきなりかぁ~。よし! ここは友達ダチの為、一肌脱ぐか!」

「「「おおお~」」」

 生着替えか! と思いきや……。


「……ちょっと、脱衣所貸して。さすがにここでは」

「うん、いいよ。玄関の横ね」


 部屋にいるみんなが、期待の眼差しで部屋のドアを見つめていた。

 スケベ心のコイツはともかく、同じ女子として、やはり他の女子の勝負下着は気になるのだ。

   

 やがて、シャツとジーンズで前を隠しながら、ゆっくりと部屋に入ってきた。

「ちょっ! そんなに見るなよ! ……ええい! どうにでもなれぇ~!」

 服を床に落とすと、両手を頭の上に組み、腰をひねってポーズをとる。


「「「「おおおお!」」」」


 さすがスポーツやっているだけある! 腹筋に腰回りが半端ない!

 おっと、下着の方は、ヒョウ柄!


 いや、よく見ると黒とヒョウ柄が半々ぐらいかな?

 むしろヒョウ柄はアクセサリー程度。


「な、なに四人でガン見しているんだよ!」

 おっと、イカンイカン、つい値踏みしてしまった。


「って! あとスマホ禁止! 写真撮ったらスマホぶっ壊すぞ!」

 すぐさまスマホを背中に隠す三人。あら、なんのことかしら?


 おしとやかは両手を合わせて

「素敵ですわ~」


 不思議は親指を立てながら

「うむ、まさに野生! 雌豹のごとし!」


 私は

「や、やばい。食べられそう!」


 そしてコイツはふわふわ浮きながら近づくと

「パーフェクトやで! 褐色の肌とセクシーな腰つきが下着の柄とマッチしているわ。モデルになってもおかしくないで~!」

 私を含め三人は頷きながら同意する。


 スマホを持っていない分、コイツのガン見がむしろ清々すがすがしく思えてくる。


 ワイルドはちょっと照れながら

「そ、そうか。男の声で褒められるのは、悪い気がしないな」

 変なこと言うかと思ってたけど、女の扱いはうまいモンだ。

 おっと、だからといって、私は懐柔された訳じゃないぞ。


「では次は私ですね。はしたないですが、一度やってみたかったので」

 おしとやかは立ち上がると、いきなりワンピースを脱ぎ始める!


「「「「おおおお!」」」」


 もはや部屋の中はどよめきの嵐が吹き荒れているのだ。


「プハッ! いかがでしょうか? シュモクさん」

 ワンピースを脱皮して現れたのは、ミニスカート……ではなかった!


「ボディコンやんけ! さすがやわ~。ワシの好みにどんぴしゃや!」

 コイツが鼻息荒くして、まさしくお立ち台みたくかぶりつくと、浮かびながら脚の周りをぐるぐる回転し始めた。


 ヲイ! 下からのぞくんじゃねぇぞ!


「いろいろな色を勧められたのですが、”まずは”オードソックスに白からで」

 ちょっと待て。”次”があるのか?


「あとなにやらこのような冊子を頂きました。私の家はアルバイト禁止ですので、もしよろしければ皆さんで」


 薄い本。求人誌?

 不思議がピロッとめくると、そっ閉じし、ワイルドに差し出す。


断裁だんさい!」

了解ラジャー!」

 ワイルドはその名の通り、一気に引き裂くと、これ以上ないほど細かくした。

 そして私が差し出したゴミ箱の中へ、紙吹雪のごとく散らせる。


「あらあら、やっぱりいけないお店の冊子でしたのね」 

「いやいや、その前に、”こういうお店”で買うのはもうやめようよ。買い物なら付き合うからね」

「「うんうん」」

 私の提案に二人が同意する。


「それは助かりますわ。一度、お友達同士で服とか下着とか買ってみたかったんですよ~」

 ふぅ~。とりあえず毒牙にかからなかったことをよしとするか。


 ヲイ! そこのサメ! まだ前から後ろからのぞこうとしているのかよ!

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