第三章 エロエロ女子会

第6話 いよいよ女子会

 シュモクザメの歓迎会という女子会の日が決まったとたん、なぜか私が慌ただしくなった。


 コイツが

「色男たる者、身だしなみが大事」

だとほざいたから、適当に寸法計って、わざわざリサイクルショップの子供服コーナーへ行ってきた。


 ……何やっているんだ? 私。


(タキシードは長袖だから胸びれが……おっ! 黒のベストか。これならいいんじゃね)

と、とりあえず買ってきたのだ。

 うん! 今、全世界で、サメの為に子供用ベストを買う女は、私しかいないと断言できる!


 むろんレジでは”甥っ子にあげようかと……オーラ”を漂わせたのはいうまでもない。

 間違っても息子じゃないぞ! でもサメだけど。


 帰ったら早速試着……すぐさま背びれの部分をぶった切った!

 いや、フカヒレにして売るのではなく、ベストの背中部分だよ。


 ボタンホール? 知ったことか! 第一ミシンがない! 

 手縫い? ……私は女子を捨てたのだ! ハッハッハ! ……開き直り。


 そして当日! 珍しくコイツが慌てふためいている。

「なあネェチャン。ネクタイ曲がってないか? 服にホコリがついていないか?」

 ちなみにネクタイは、黒の蝶ネクタイ。

 百均で売っている、ゴムで首につけるヤツだ。


 礼装? 知ったことか! そもそも私はサメの礼装を知らないのだ。


「あ、あと香水や。もう一回かけて~な~」 

「あ~はいはい。これで何回目よ~」 

「おっと! 鏡、鏡」

 私の姿見へ向かってふわふわ浮かぶコイツ。


 なんかむかつく~。同窓会へ行く夫みたいだわ~。

 ん? 私、今何か言ったかしら?


 テーブルという名の折りたたみちゃぶ台の上には、一応ポテチやコーラのペット。紙コップに紙皿。

 あとの食べ物は三人が持ってくる。


 何を持ってくるのだろう? いきなり闇鍋とか始めなければいいが……。

 一応、コイツが食べられそうなものを持ってくるとは聞いていたが、下手したら私の部屋がお魚屋さんの軒先に変貌へんぼうするかも。


 あと、私を含め、みんな未成年だからお酒はなし。

 二十歳になっても飲まないってみんな言ってたなぁ~。私はどうしよう?


 コイツはどうなんだろう? って前に聞いてみたら、珍しく神妙な顔をして


「……ネェチャン。酒はな、人生を狂わせるんや。あれは魔性の水なんやで~」


 と、なんか遠い目をして、一人語り始めた。

 おい! 一体どんな人生、いや、サメ生を歩んで……泳いできたんだよ~。  


”ピンポ~ン!”


「き、きたぁ!」

「なに驚いているのよ? はぁ~い! 待ってて、鍵開けるから」


”ガッチャ!”


「お~す! おっじゃっましや~す!」

「失礼します。本日はお招き下さり、ありがとうございます」

「おい、来てやったぞ。ありがたく思え」

 ワイルド系、おしとやか系、不思議ちゃん系が、それぞれ挨拶する。いつもの光景だ。


 私はすぐさま三人の衣服をチェックする!

 ワイルドは黒いシャツにジーンズ。

 なるほど、勝負下着を透けさせる度胸はなかったか。


 おしとやかは小豆あずき色のフリル付き、ふっくらワンピース。

 ん? ミニスカじゃない? さすがに気が変わったかな?


 んで、不思議は……。

 レースクイーンやイベントコンパニオンみたいな極彩色の衣装を着ている。逆にこちらがミニだけど、アンダー(?)は履いているみたいだ。


「その衣装は……コスプレ?」

「そう、ヴァーチャルアイドル。『虹音クミ』ちゃん。さすがにコスプレ会場以外で七色のヴィッグを付ける勇気はなかった……でも持ってきた」


「いや、その衣装でここまで来る勇気を褒めて遣わそう」

「ははぁ~。ありがたきしあわせ~」

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