第二章 お客さん。初めて?

第3話 ざらざらお風呂

 お風呂が沸くまで、早速木箱でコイツの巣を作る。

 とは言っても、でかいゴミ袋で木箱を包んでから、発泡の中の塩水タオルを移動するだけなのだ。


「おお! 広々ベッドやんけ! やったぜネェチャン! ワシ、結構寝相が悪いって言われるンや」

「あんた、眼が張り出しているのに、どう寝相が悪くなるのよ?」


「ナイスツッコミやで! ワシらいいコンビとちゃうか?」

「っとにもう……あ! そういえば! あんたさっき! なんで浮いていたのさ!」


「ああ、そんなことか。今までツッコミがなかったから、ネェチャンも了承済みかと思っとたわ~」

「ツッコミせんと答えんのかい!」


 あかん、だんだん夫婦めおと漫才になってきた。 


「昨日、ワシらはオシッコせんって言うたやろ? でも体の中にアンモニアがまると、ああして浮くンや。体中のヒレを駆使すれば、部屋の中も自由に飛び回れるンやで」


「溜まりすぎるとパンクしないの?」

「そういうときはおならをするンや」


「ちょ! するなら外か、トイレの換気扇に向かってしてよね」

「まだだいじょうぶやで。でもトイレのノブはヒレでは開けにくいンや」


「わかった。トイレのドアは開けっ放し、換気扇もつけっぱなしにしておくわ。どのみちあんたの匂いがこもっちゃうからね」

「気い遣わせてすまんな」 


”ピー! ピー!”


 お風呂湧いた。着替え持って風呂場へ行く。

 コイツもついてくる。ふわふわ浮かびながら。


 まだうまく飛べないのか、壁に何度も激突している。特に目の辺りを。

 そこまでして見たいんかい!


 脱衣所に入る。コイツも入る。すぐさま、ガン見する。

「ちょ! ネェチャン!」

 尾びれをつかんんで、先に風呂場に放り込んでドア閉める。


『お~い、どうせ真っ裸マッパになるんやろ~。なに恥ずかしがっているンや~』

「うるさいわね! 服を脱ぐのと裸は別なのよ!」


 タオルで前を隠して風呂場入る。あれ? 最後に前を隠して入ったのはいつだろう?

 ヤバイ、いつの間にか女捨ててたぁ!?


「親しき仲にもってやつやな。恥じらいもなく真っ裸で入ってきたら、どうしようかと思ったわ」

 くそっ! 何か負けた気がする! 


 とりあえずぬるめのお湯をシャワーから出して、コイツにかける。


「どう!」

「はぁ~、生き返るわ~。俗世間のあかがよく落ちるわ」

「アンタ、なにもせずテレビ見ながら浮いてただけでしょう!」

「ネェチャン、ナイスツッコミや!」


「はぁ~、こっちが疲れるわよ。石けんで洗う?」

「変なモン入ってなければ大丈夫やで」

「このボディーソープ、一応、天然成分だから……うわ、スポンジの柔らかい方だとボロボロになりそう」

「おう! ワシに触れると怪我するでぇ~」


「んじゃ、こっちの固い方で……どう?」

「ええで、もう少し強くしてもいい位や」


「なんなら、タワシか軽石買ってこようかしら?」

「泡たたんやろ? 堅めのスポンジでええで」


「もういっそ、あんた用のを買ってくるわね」

「歯ブラシならぬ、風呂場に専用のスポンジが二個か。なにやらよからぬ関係やなぁ」


「いいかげんにしなさい!」


”ゴン!”


「いてっ!」

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