第42話 瑠奈side



「えと···説明、いいかな」


宝條学園生活初めての学期末試験が終わり、直後に勇羅から試験明けの息抜きと称して、いつもの面々で近所の神社でやっている夜店へ行く事になった。


神社には毎年かなりの数の屋台が並んでいると聞き、神在の夜店に行くのを琳も楽しみにしていたようだった。更に勇羅は探偵部の雪彦と万里、鋼太朗や京香にも声を掛けたのか実に賑やかなメンツ。


琳や芽衣子達に泪も誘わないのかと聞かれたが、朝の一件もあって全く話しかける気に慣れなかった。

泪を誘わない件には鋼太朗も同意したので更に疑われたが、別の時間帯で雪彦や京香達に声を掛けた勇羅の方も泪には断られたと言うので、結局泪を誘う件は無かった事にした。


神社の広場での待ち合わせ場所には既に勇羅達の他に、誰かが連れて来たのかあのルシオラも居た。


「る···ルシオラさん。どうしてここに?」

「瑠奈の名前出したら、あっさりついてきてくれたよ」


大胆な行動をしかつ何の悪気も悪意もない無邪気な笑顔を見せる勇羅に、瑠奈は時折恐怖を感じる。

例の件で和真さん達の説教を受けても、全然懲りていないのかなと本気で思ってしまう。


「ルシオラさん、日本の夜店行くの初めてなんだって」

「つか。俺らと因縁のある奴を堂々と連れ込むお前の方が凄いし、いろんな意味で怖いよ」


鋼太朗が呆れた顔をしながら勇羅に突っ込む。鋼太朗も少なからずルシオラと面識があるし、泪やルシオラ程ではないものの、異能力者がどのような立場にいるのかも理解している筈だ。


「私はどうすれば?」

「とりあえず瑠奈と一緒に、屋台の店回って見ると良いですよ。今日は店いっぱいあって楽しいですよー。焼きもろこしとかー、わたあめとかたこ焼きとか焼きそばとか唐揚げとかカレーライスとかー」

「食いもんばっかじゃねーか!」


勇羅のすぐ隣にいる麗二の勢いあるツッコミを他所に、ルシオラの案内役に自分を指名され目を丸くする瑠奈。


「私?」

「ルシオラさんと一番親しいの瑠奈だし」

「瑠奈一人に任せて大丈夫か? 何人か一緒に付いてった方が···」


瑠奈にルシオラを任せようとする勇羅に鋼太朗は心配する。鋼太朗の心配は当然だ。

更に彼は泪から瑠奈がどういう状況になっているのかを聞かされ、ある程度事情を把握しており、ルシオラが異能力者集団の人間だと言う事も知っている。


「大丈夫だよ、問題ないっしょ。ルシオラさん瑠奈の事凄く気になってるみたいだしさ」

「えっ?」


更に突拍子な発言をされ慌てる。助けを求めようとも、芽衣子と琳はごめんと言う表情で手を合わせている。

鋼太朗と麗二、京香はこめかみを押さえるものの、テンションの上がった勇羅は止められないのを分かっているのか傍観を決めたようだ。雪彦と万里も瑠奈とルシオラの関係に興味深々でまるでアテにならない。


「この裏切り者共っ! ちょっとは助け船出してくれたって!」

「じゃあ、二時間後またここで~」

「それまでは自由行動ね」


慌てながら周りに反論する瑠奈の訴えも空しく響き、勇羅達は早速夜店を楽しむべく散り散りに解散していった。


「勇羅の奴ー···」

「君も大変だな」


ルシオラと二人その場に残され、二人になる元凶となった勇羅に愚痴を垂れる瑠奈。とはいえどうやって彼を案内すればいいのだろうか。



「···と、とりあえずお店見ながら歩きましょうか。任されたからには色々案内します」

「分かった」



瑠奈はルシオラと並ぶように歩き出す。ここはやはり現物を見てもらった方が分かりやすいと思い、神社の屋台を見て回る事にした。


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