第27話 瑠奈side
「おはようございます」
翌日いつものように泪が家まで瑠奈を迎えに来た。昨日の鋼太朗との話し合いと、先日の一件もあったので色々言いづらい。何より瑠奈の身を案じて護衛を受けてくれている泪が、よりにも自分の護衛を依頼した茉莉本人を疑っているのが堪える。
「昨日、鋼太朗と何を話してたんですか?」
「あっ」
勇羅以上に勘が鋭い泪の事だ、やはり鋼太朗のと何の話をしたのかも疑われている。
鋼太朗とは単純に泪の事で話し合っていたのに、何かを疑われても仕方がない。
「···まだ、茉莉姉の事疑ってる?」
泪から返って来た答えは、瑠奈の予想していたものとは異なったものだった。
「いえ······真宮先生が信頼出来る人なのは頭では理解しています。
あの時先生が動いてくれなかったら、もう少しで瑠奈達もユウ君達も先輩達も危なかった」
あの時とは東皇寺学園を廃校にまで追いやり複数の生徒をも巻き込んだ、異能力者狩り騒動の事だ。
騒動の首謀者達に自分達が目を付けられた、と聞いた時はビックリした。
茉莉が知り合いと言う人物に連絡を取らなければ、勇羅達だけでなく自分達も危険に巻き込まれていたかもしれない。
「先生が瑠奈の為に動いてくれてるのだって、本当に瑠奈の事を家族として心配してくれてる···」
「うん···」
やはり瑠奈の身内を疑った自分の事を責めている。
鋼太朗の言う通り、泪は周りにとってマイナスになる事は、何でも一人で背負っては抱え込んでしまう。
そしてその抱え事を泪から言う事は決してない。こちらから泪を追いかけなければ何も変わらない。
「でっ、でもね! 茉莉姉って女としてはダメダメだよっ!
保健室に目を付けたガタイの良い男子連れ込んで、教頭先生や学園長に説教されるし、友達とお酒飲んで色んな店ハシゴして回りながら酔って帰ってくるし、休日前の朝帰りなんて当たり前でそれからー···」
泪は何も悪くない!と瑠奈は必死で泪をフォローするが、逆にそれは普段から堂々と、学園で将来の良い男漁りに勤しんでいる茉莉への愚痴、と言った妙な方向へシフトしてしまっている。
「······っく、くくっ、くくくくっ···っ」
突然泪が腹を抱え初めている、瑠奈は話を止めて泪を覗きこむと笑いを堪えていた。普段滅多に見る事などない泪の奇っ怪な行動に、瑠奈は目を丸くする。
「お、おかしい話だった?」
「ご···ごめん···なさい、っ」
自分は自己嫌悪に陥る泪を慰めようと、当たり障りのない話をしただけなのに、その泪が自分にしか見せない顔をしている事に、無意識に嬉しさがこみ上げて来るのを感じた。
「······あのね、今日の放課後時間ある?」
瑠奈は僅かに沈黙した後、言葉を続ける。
その自分に見せてくれる感情に対しこみ上げる嬉しさは、今だけは抑えなければいけない。
今日鋼太朗が京香と話し合い、和真とコンタクトを取れる様にしてくれる。今を逃せば時間の猶予はない。
「ええ、少しなら」
「和真さんと···昔の、初めて会った時の事で話し合ってほしい」
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