第10話 瑠奈side
「結局手掛かりゼロかぁ···」
あれから二日後。
瑠奈は学園の図書室にある超常現象や現代社会に関連する本と言う本を調べるだけ調べたが、結局有益な情報は何一つ得られず。
更には異能力の本を探す為に神在市だけでなく、自分が行ける範囲の町の本屋を回れるだけ回った。
二日間の間に図書室で本を探している途中、同じく何かの調べ物をしていた勇羅と会い色々感付かれそうになったが、なんとかはぐらかした。
中学の時からもそうだったが勇羅はとにかく感が鋭い。身内や知り合いが何かやっていたらすぐに首を突っ込みたがる。
今回ばかりは探偵部の面々に首を突っ込ませる訳に行かない、勇羅自身も慕う泪個人に関する事なのだ。突っ込まれたら前回のように余計ややこしい事態になりかねない。
「また鋼太朗に頼むしかないかな···」
あれ以来鋼太朗とは全く接触していない。
鋼太朗からはあの話に関しては泪に感付かれないよう、出来るだけ自然にしていた方が良いと言われたからだ。
下手すれば自分の特異な異能力の事を話さなければいけない。
だが探偵部と比較的無関係かつ、泪の周りに最も近い鋼太朗ならば色々協力してくれるだろう。
「···っ」
「!?」
走りかけた瑠奈の前に突然人の影が現れ、避けようとして思わず後ろへとよろめきかける。
「わわっ」
「大丈夫か?」
「いいえ、こっちこそすみません···あ」
ぶつかりそうになった目の前の青年は見た事があった。
昨日泪と一緒に買い物をしている途中、トラブルではぐれてしまい泪を捜していた時に会った人物だ。
「あの時の···」
「そうだな。前に会ったな」
そう言えば自分が異能力者だと言う事が何故か青年にバレていた。
瑠奈自身異能力者である事は、普段から隠して過ごしている筈なのに。
力そのものを制御する自体はきちんと出来ているが、この青年はいとも簡単に自分が能力者だと言う事を見抜いてしまった。
ただ、青年自身も異能力者だと言う事を前に話していたが···。
「随分走り回ってた見たいだが···また人探しか?」
じっくり良く見ると青年は凄く綺麗な顔をしている。
日に当たるとキラキラと光る青みを含んだ白い髪に、背も高く無駄な肉がない引き締まった体格。
しかし瑠奈を見る青年の表情は全く変わらない、と言うかどうにも読み取れない。
「い、いいえ。今日は調べ物です」
「何を調べる気だったんだ」
正直言って調べたい事は沢山ある。泪の事、サイキッカーの事、自分達異能力者の立場の事。
同じ異能力者とは言え、目の前のたった二回しか面識のない青年においそれと簡単に話しても良いのだろうか。
「言えないのなら無理にとは言わない」
「···ごめんなさい」
やはり言わない方が良いだろう、この人は自分達の揉め事には無関係なのだし。
「一つ聞くが、あの後彼と会えたか?」
「あ、はい。おかげ様で」
前に自分が泪を探していた時の事を覚えていた様だった。
泪と会った後は二人で当たり障りない会話をしながら何事もなく別れたが。
「そうか、会えたんだな」
お互い単純に受け答えするだけの当たり障りない会話。
この青年と話をしていると、何となく昨日の泪と二人で話している気分だった。
「引き留めてすまなかった。私も個人的に興味のあるものには深入りし過ぎる性分みたいでね」
「とんでもないですよ。誰だって興味のある事はとことん追いかけたいもんですよ」
「なるほど···そうかもしれないな。また機会があれば何処かで会おう」
白髪の青年は瑠奈にそう告げると早々と去って行った。
瑠奈は青年の後ろ姿を黙って見つめている。初めて会った時もそうだったが、自分と会話していても眉一つ動かさないし、やっぱり考えが読み取れない人だ。
「いけない。名前聞くの忘れた···?」
ふと青年が去って行った場所に何かが落ちてある。
さっき自分とぶつかりそうになった時に落としたのだろうか。
「あの人何か落として行った···って·········嘘」
落ちていたのは身分を証明する物と思われる何かのIDカード。
そのカードは···。
『ファントム総統IDNo.00000 ルシオラ=コシュマール』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます