第12話 うちの子はそんなことをする子ではありません。
長女が小学3年生の時の出来事でした。
長女は従順で優しく成長もゆっくりしていていましたので、その時期は特にトラブルもなく過ごしていました。
いつも公園で、ほぼ同じメンバーで遊んでいる女の子の集団がありました。
長女は一人で遊ぶのが好きで誘われない限りは、公園のブランコにのって一人でいたそうです。
ところが、リーダーシップをとるのが好きなクラスメートAちゃんがよく誘ってくれて、断る娘の気持ちに構わず鬼ごっこや缶蹴り、かくれんぼなどの遊びをしなくてはならなかったのでAちゃんが嫌いになってしまいました。
Aちゃんは自分が皆の中心にいないと気がすまないお子さんで、よく子ども同士でトラブルが起きていたそうですが、大人しい長女はトラブルとは無縁でした。
我が儘なAちゃんでしたが、小学3年生くらいでは、従順な子も多くAちゃんに従い遊んでいたようです。
ある日、Aちゃんの我が儘についていけなくなった頭の良いBちゃんが皆に提案したのです。
「Aちゃんのこと嫌だから遊ぶのも喋るのやめよう!みんなも口きいちゃだめよ。」
そのことをみんなは、Aちゃんに皆の気持ちを理解させるための正しいことだ(推測ですが)、と考え実行し、Aちゃんは公園で女子グループから無視されました。
この事件は、直ぐに担任の先生の耳に入り参観日の後の懇談会で保護者たちに知らされました。
私はこの懇談会には仕事で出ていなかったので後からママ友に聞きました。
事前にAちゃんとBちゃんの母親には知らされてあったのだろうと思います。
担任の先生が公園で起きたイジメについて話されました。
ほとんどの保護者は、事実を我が子から聞いておりAちゃんの母親とBちゃんの母親が一体どのように対処されるのか興味津々でした。
Aちゃんの母親は、自分の子どもが我が儘でみんなに嫌われていることを知っていて、これからどのように言って聞かせようか悩んでいるというようなことを話されたようです。
ところが、Bちゃんの母親はきっぱりとこう言ったそうです。
「うちの子は、他の子をイジメたりする子ではありません。だから、本人に『イジメはしていないとお母さんは信じている』と伝えました。」と。
この言葉に、みんな唖然となったそうです。
皆が口々に、事実は事実として認めたらどうか、それは他の子が嘘を言っているということか、など言ったそうですが、Bちゃんの母親は、
「いいえ、うちの子はイジメをする子ではありません。私は信じています。家に帰ったら、この懇談会での話をしてお母さんはみんなの前で『うちの子はイジメをする子ではない』ときっぱりと言ってきたことを伝えます。」
と言い続けたそうです。
結局、時間がきて懇談会はそのまま終わりになったそうです。
Bちゃんはピタリと無視をやめ、堂々とAちゃんに意見を言い、上手に距離を取りながら小学校生活を過ごしていたようです。
一方のAちゃんは、小学校でも中学校になっても我が儘なままでずっとトラブルを起こしていました。
Aちゃんは中学になると、うちの子をイジメました。
その時Aちゃんの母親は、
「本当にすみませんでした。また、うちの子がイジメたら言ってください。絶対に教えてください。お願いします。」と言いました。
子育ての何が決定的に違ったのか、その時わかりました。
Aちゃんはお母さんに疑われて生活しているということなのです。
お母さんは我が子がまたイジメをすると思っているのでイジメたら教えて欲しいのです。
大切なのは、信じられる愛情だとBちゃんのお母さんは知っていたのでしょうね。
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