第11話 霊能者の祖父の寿命
霊能力のあった祖父は、戦争中の東京大空襲や原爆の投下を予言していたと言っていました。
それらは予知夢だったそうで、隣人に伝えたそうです。
というのは、隣人の子どもが遠い地で戦争に巻き込まれ死んでしまうことを予言していたので、自宅から出ないようにと何度も伝え、そのたびに笑われたとのことでした。
笑われても説得し続けたのに、自宅から子どもを遠い地へ出掛けさせてしまったので、こう伝えたそうです。
「子どもの髪の毛を少し切って自宅に送ってもらうとまた会えるかもしれない。」と。
そして、原爆が投下され隣人の子どもは行方不明になりました。
隣人は髪の毛も送ってもらわなかったので、ご遺体も見つからなかったのだ、と祖父は悲しそうに言っていました。
そんな祖父は、自分の寿命について
「92歳まで生かしてもらえると神様が教えてくださった。」と言っていました。
祖父はベジタリアンで食にこだわりがあり、とても痩せていました。
主食はパンの耳でパン屋に行き、ただでもらってくるのでした。
パンの耳はちぎってお椀に入れ、白湯を注ぎ、贅沢をするときには蜂蜜をひとさじ入れて、ふやかして食べていました。
「こおばしくてとても美味しいなあ。みんな、ただでこんなに美味しものを食べずにいるとは。」と言っていました。
しかし、良い食生活とは言えません。
90歳を前にして栄養失調による仮死状態になり痴呆の症状がでました。
ヨボヨボと歩けはするし、出かけても帰ってくるし、話しかけても応えるのですが、お風呂から出てシャツの袖に一生懸命、足を入れて頑張って着ようとしていたり、家の中をグルグルと歩き回ったりと不思議な行動が見られたのです。
そんなに動けるのに、仮死状態とは驚きました。
医者から栄養があるものを食べさせるように言われて魚や野菜を食べさせたところ、みるみるうちに回復しました。
祖父は、しばらくすると言いました。
「わしは、偉い行いをしたから神様から寿命を4年ほど延ばしてやると言われたのじゃ。やあ、ありがたい。」
祖父はとても弱ったまま、医者にかかりながら生活していましたが、92歳くらいで入院してしまいました。
延命治療をされながら神様に言われた通り4年ほど長く生きることが出来ました。
結構、神様からの言葉を自分にとって都合の良いように解釈をしていたのだなぁと思いました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます