第4話

『なんだ?』坊主頭のボスが、銃口と共に俺を睨んだ。

『さっきからトイレに行きたくて仕方がなかったんだ。悪いがちょっと便所迄行かせてくれないか?』

坊主頭は苦い顔をして、GIコルトのロン毛男に、

『おい、連れて行ってやれ』と、合図をした。ロン毛は舌打ちをして、コルトを振り、俺に廊下に出ろと合図をする。

 俺は両手を挙げたまま廊下に出た。

 鍵の字なりに曲がった廊下をしばらく歩くと、とっつきに便所がある。

『どっちだ?』

『小の方』

 俺が言うと、奴は俺の背中に張り付くように拳銃を突き付け、

『いいか、おかしな真似をしやがったら、ただじゃおかねえからな』

 凄んでみせているようだが、どうもあまり迫力がない。 

 これでよく強盗なんか出来たものだ。

 俺は正方形の便所の、一番出口に近い小便器の前に立った。

『おい、済まんがちょっとこれを見てくれ』

 浴衣の前を捲って、用をたすふりをした時、俺は後ろにいる奴に声をかけた。

『なんだよ?』面倒くさそうな声で首を伸ばす。

 次の瞬間、俺は拳銃を持っている奴の右腕を脇に挟み、間髪を入れず左の肘の一撃を奴の鳩尾に食らわせる。

 思った以上にあっけなかった。

『ぐっ』という声をあげて、そのまま前のめりに倒れた。

 俺は奴の腕からコルトをもぎ取り、マガジンを外してみる。

 弾は装弾数ぎりぎりの7発、俺は遊底を引いて薬室に弾を入れた。

それから、気を失ってしまったロン毛を裏返し、ベルトにはさんだブルドックを取った。

こっちはレンコンに6発、俺は二丁の拳銃を手に入れると、奴をそのままにして裸足になり、廊下をつま先立ちして足音をさせぬように廊下を歩いた。

大広間の、ちょうど人質達が固まって集められている襖に手をかけ、少しだけ開いた。

一塊にされた人質の、一番近くに『真理』がいた。

俺の顔に一番最初に気づいたのも彼女だった。

『あの、ちょっとよろしいかしら?私もお手洗いに・・・・』

『駄目だ!前の奴が戻ってきてからだ!』坊主頭が叫ぶ。

(今だ!)俺は思い切り襖を開き、座敷に躍り込み、コルトを立て続けに連射した。

 一発は坊主頭の肩を、一発は腰を打ち抜いた。

『や、野郎!』

 今度はチビがショットガンを構える。

 俺は帯の間に挟んでいたブルドッグを、彼女に向かって投げた。

 ドンピシャのタイミングだった。

 鮮やかに彼女は片手でキャッチすると、間髪をいれず、続けて3連射した。

 チビはショットガンを放り出し、後ろにすっ飛ばされるように倒れる。

 俺は二人に近づいて確かめてみた。

『大丈夫、二人とも息はある。早く誰か警察に連絡を!』

 

 



 



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