始発まで
私は暗くなってきたら家に帰りたい性質なので、終電を逃すまで外に居るとこいうことは滅多にないのだが、それでも何回かは経験している。元々、遅くまで飲む予定で、飲んだ後に知り合いの家に泊まる手筈だった、というのは含めない。あくまでも、自分の意志に反して終電を逃したものに限る。
そうすると、四回か五回ぐらいだろうか。大抵はネットカフェに泊まる。この時間帯のネットカフェはちょっとした拷問である。そこら中から鼾が聞こえるのは、まあ、我慢するとしても、隣の部屋から嬌声が聞こえてきたときには流石に閉口した。今思えば、貴重な体験の一つだったと言えるが、体は痛むし、精神はささくれるしで、その時は本当に辛かった。
ただ一度だけ、野宿をしたことがある。とは言っても、道端に段ボールを敷いて寝るような大袈裟なことではなく、上野かどこかの椅子で始発まで寝てたというだけの話だ。知り合いが一緒にいたから出来たことである。一人だったらビジネスホテルかネットカフェを借りるし、今なら何人で居ようが、やはりホテルに泊まると思う。そもそも、そんな時間まで外に出ないのだが。
そういえば、知り合いと二人、ホテルに泊まったこともあった。その日は神奈川に住む別の知り合いをあてにしていたのだが、連絡が取れず、仕方なく夜を通して歩いていたのだが、どこかしらかのタイミングで同行者が音をあげ、タクシー代を持つからホテルに泊まらないかと言うので、了承した次第である。そうして泊まったホテルは、何というか贅沢の極みであった。いや、特別に高いホテルに泊まったわけではないのだが、屋根がある、風呂がある、布団があるということは、素晴らしいことだと、その時に初めて知った。だが、そんな素敵なホテルを後にして、帰った自宅はもっと素晴らしいものであった。やはり人間、帰れるときには帰った方が良いみたいである。
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