体力の自信はありません

「はぁ〜……。体力テストかよ……」

「うむ。現役の学生でしかもトップの成績と言うならば学力はする必要もなかろう。時間もないしお主を信じる」

「じゃあ最初っから試験なしにしろよな」

聞こえるように言ったけどシカトか。いやまあそりゃあいきなりきたやつをはい採用なんてやってたらメンツも立たないか。それに僕にはここしかないんだ。当てがあるわけじゃないんだからもちろん全力でいく。たとえこの100メートル走に魔法を使ってでも!

「はっや……」

驚いたか、少女よ。いくら大気中のエーテルが少なくても自分の強化くらいなら余裕でできる。ぶっちゃけチートみたいなもんだけど受からなきゃ話にならない。エーテルを自分のマナに変換するのに時間がかかるだけだ。多少は無茶もできる。

「ちょ、ちょっとワタル。速すぎるよこれ。100メートル9秒ってオリンピック金メダル目指せるよ。教師やめなよ」

「いやだ。そんな目立ちたくないし」

流石にこの時代で目立ってしまうのは良くない。一応世界記録とかに基づいた資料も後世には残ってるし、オリンピックの記録なんてのももちろんある。

「僕は教師になるって決めたから。教員試験も実は近かったし。ほら、僕って優秀だから飛び級してたんだよね」

「ほへ〜。すごいんだね」

この子は時々とてつもなくバカに見えるな。可愛いけど。

「徒競走は速いようじゃがほかはどうかの?」

「まあ見ててくださいよ。すぐ終わりますから」

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「こんなもんでどうです?文句ないでしょ」

「ううむ……」

室内に帰って来た僕たちは、テーブルに試験の成績を並べて面接もどきをしていた。全部この時代のトップクラスの成績を叩き出してやったんだ。もう文句はないだろう。というかこれ以上はマナが持ちません。

「よし、いいじゃろう!この成績なら皆も納得するじゃろうて」

捨てる神あれば拾う神あり……神様はまだ僕のことを見捨てちゃいなかった!これで食いっぱぐれなくて済むし、当面の目処が立ちそうだ。あとは住むところだな。

「体力テストで分かったと思うがお主は臨時の体育教師の補佐ということで入ってもらうからの。それと--」

「あの、それよりも住むところとかありますかね……?寮とか」

「む、ああ。あるにはあるがこの短時間で用意するのは流石に無理じゃな。1週間はわしのところで面倒を見てやろう」

助かった……。これで基本はクリアだ。現代に来てまだ1日もたってないのにすごい疲れたぞ。僕は善行を積んで来たはずなのになんだってこんなことになるんだ。

「さあさ疲れたでしょう。今日はお風呂に入ってご飯食べてゆっくりしなさいな」

「ありがとう、おばあちゃん」

「馴れ馴れしいぞっ!わしの家内に向かって!」

「いいんですよ、おじいさん」

ですってよおじいさん。チエおばあちゃんは安らぐなぁ。なんか僕のおばあちゃんにどことなくにてるんだよな。昔からおばあちゃんとよく遊んでたから懐かしい気分になって来た。

「兎に角!お主のことを教員たちにも説明して、そして生徒たちにも紹介しなけりゃならんのじゃ。資料の準備もある。わしより頭の固いやつも当然学校にはおるからの。覚悟しておくのじゃ」

「もちろん。やるからには真摯にやります」

まずは未来人だってのがバレないこと。そして生活しつつ未来へ帰る手段を探ること。幸い少しのエーテルはあるんだ。焦らずじっくりやるさ。

「お風呂できましたよー」

遠くからおばあちゃんの声が聞こえる。今日はもうゆっくりしたいよ。

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