何年ですか

んー、頭がぼーっとするな。一体何をしてたんだったか……。はっきりしないな、全然頭が働かない。もう一眠りするか……。

「おーい」

あと五分。あと五分でいいんだ。その時間寝させてくれれば、次起きるときにはきっとこの頭脳が何もかも解決してくれるから……五分だけ……。

「おーいってば。そこ道端で寝てるおにーさん」

道端で寝てるだと?それに、よく聞いたら妹の声でも無いな。なんかだんだん意識がはっきりして来たような。

「……んん。まぶしい……。背中が痛い……」

「まあこんな道路のど真ん中に寝てたら身体中バッキバキだよね。それより、こんなところでなにしてるのおにーさん」

「いや僕は……」

そうだ。僕は自分で完成させた魔法を使って過去に飛んで来たんだった。ということはここは過去……?

「お嬢さん、つかぬ事を聞くけど、今は西暦でいうと何年?」

「え、なに?記憶喪失?今は2018年だけど」

「やはりっ!!僕は天才だったか!!」

神は僕に贈り物をしてくれた!もちろんこの天才的な頭脳をね!流石にここまでうまく行くとは思ってなかったけど、過去に戻れたのならもう間違いはない。あの魔法は成功だった。世界初の大偉業をついに成し遂げたんだ!

「あ、あの…」

「ああ、ごめん。その格好は制服というやつだな?わざわざ起こしてくれてありがとう。では、用事があるのでこれで」

「え、ちょっと……」

あまり2018年の人間と関わり合いになると、後の歴史でどんなことになるかわからないからな。さっさと逃げるが吉だ。それに僕がここに来たのは原初の魔法を確認するためだ。

「この2018年に最初の魔法反応があるはずだ。くぅ〜……魔法使いの"起源"に遭遇できるなんて、歴史上僕だけだろうなぁ〜」

まずはどこで反応があったのか確認しないと。確か魔法地図を持って来てたはず。胸ポケットじゃない……内ポケットでもない……ああかさばるな、このローブは。

「あったあった。んん……魔法の地図〜」

…………。1人でなにやってんだ。さっさと確認して機嫌を見たら帰ろう。そして自慢してやるんだ、あのアホ妹にな!

「って、あれ?地図が反応しない。確かに2018年のはずだし、ニホンだよなここは。さっきの女の子もニホン語で話してたし」

常日頃から起源の位置にはマーキングしてたはずだけど。どうしてマナが反応しない……あっ!?

「ちょっとまて!もしかして2018年のニホンには魔力の元が無いんじゃ……」

ヤバイヤバイ。もし魔力の元であるエーテルが空気中にないんだったら地図は反応しないぞ!?それに自分で使うちょっとした魔法ならいざ知らず、さっきみたいな時空を超えるなんて魔法は使えない。非常にマズイ。

「いやいや、どうこう言ってても始まらない。まずは試して見ないと……」

これで帰れなかったら、僕はこの時代で生きていくのか……。いや信じるんだ。僕は天才なんだぞ。きっと

「こんな道端で陣を作って人目についたらマズイ気もするけど、そんなことは言ってられない!気合いをこめろ!僕はできる子!!」


-------------


「人生って儚いな。こんなことで僕は露頭に迷うんだ。せっかくの大魔法もこんな時代じゃ何の役にも立たない……」

結果から言って陣の発動は無理だった。うんともすんとも言わない陣なんかただのお絵かきだ。これからどうしよう。お金も無いし、もちろん知り合いなんかいないし。人生一気にハードモードだよ……。

「あ」

なんだい。この絶賛ホームレス天才魔法使いの背中を見て笑う人間がいるのかい。人間ってのは醜いねぇ。

「朝の変なおにーさん。こんなところでどうしたの」

「……君は今朝の。学校は終わったのか?」

「うん。今日はお昼までだったから。で、なにしてるの?」

「フッ。世界の闇……というやつかな。たった今僕はホームレスになったのさ。一文なしのプー太郎さ」

「フーン。朝見た時からそんな感じだったけど。服もボロだし、道端で寝てるし」

一理ある。ただこれは我が家に代々伝わる由緒正しいローブなんだ。説明したところでわからないだろうから説明はしないけど。

「君から見たらそうかもな……」

「ねえ。いくとこないならさ、ウチに遊びにこない?」

「はっ?」

「だから、ウチに来ないかって。あたしのおウチ」

こ、これはナンパか……?いやでもこんなボロボロのローブを着た天才魔法使いをナンパするやつなんかいるか?いやさ生きてきて18年、そういうこともあるか!

「つつつつつ、つまりお泊まり会?」

「まあ行くとこないなら泊まってもいいけど」

この子そこそこ可愛いし、黒い髪のロングなんか僕的には非常に大和撫子というか、言い伝えから聞くニホンの古き良き--

「くる?」

「いきます!!!!」


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