丁章 註

24.-1 ルネ・デカルト。レナトゥス・カルテシウス。あるいはレナトゥス・デス・カルテス。16-17世紀のフランス王国の哲学者。方法的懐疑を考案し、それによって形而上学の難問に回答を与えようとした。主著に「第一哲学に関する諸省察」「方法序説」

24.-2 エデン。あるいはエデンの園。アブラハムの宗教における楽園。ユダヤ教の聖書(キリスト教の旧約聖書)の冒頭、創世記に記述がある。これらの宗教では人間は神に造られたものということになっているが、その最初の造られた人間ははじめこのエデンの園に住んでいたという。

24.-3 イヴ。アブラハムの宗教においてはじめエデンの園に住んでいたとされる最初の女性。最初ではないという話もあるらしいが、一般には人間の女性のうち、最初のひとりとみなされているようだ。

24.-4 アダム。アブラハムの宗教においてはじめエデンの園に住んでいたとされる最初の男性。神によってイヴより先に造られたとされるので、これらの宗教における最初の人間と言ってもいいかもしれない。

29.-1 ヒューム。デイヴィッド・ヒューム。デヴィッド。あるいはデーヴィッド。18世紀のスコットランドの哲学者。本人は哲学者らしくいろいろなことを論じてはいるのだが、ヒュームといえば懐疑論というほどに、認識の限界による知の限界に関する考え方が有名になってしまった。主著に「人間本性論」(人性論)。

30.-1 イオセブ・ジュガシヴィリ。イオセブ・ベサリオニス・ゼ・ジュガシヴィリ。あるいはヨシフ・ヴィッサリオノヴィッチ・スターリン。19-20世紀・ジョージア(グルジア)出身のソヴィエト社会主義共和国連邦の政治活動家・政治家。たぶん説明不要なので省略。

30.-2 クィース・クストーディエト・イプソス・クストーデス。Quis custodiet ipsos custodes? 後述するデキムス・ユーニウス・ユウェナーリスという詩人の作という。「誰が見張りを見張るのか」とも。大雑把に言うと、「妻の貞節が信じられないならば、妻を拘束し檻に繋げ」という現代的にはとんでもないお話について、しかしそこまでしたところで見張りに立てた者がどうして信用できようか(妻が見張りを籠絡し不義を働くことがないとどうして言い切れようか)という話。疑い始めればきりがない。

30.-3 デキムス・ユーニウス・ユウェナーリス。1-2世紀の帝政ローマの詩人。後世になって作品がいろいろ誤用されてしまっているちょっとかわいそうな人。先述の「誰が見張りを見張るのか」も権力の監視みたいな文脈で使用されることがしばしばあるし、「(富や地位、才能や容姿の端麗さなどではなく)強健な肉体と(恐怖や怒り、欲望などに打ち勝つ)強健な精神をこそ願え」という話は「健全な肉体にこそ健全な精神は宿る」という文脈で使用されることが多いように思う。

30.-4 アポローン。ヘラス(古代ギリシア)の太陽神。デルポイ(現デルフィ)に神殿があり、そこに仕える神官は訪れる人々に神託を授けていたという。ちなみにデルフィは現在遺跡とそれに隣接する小さな街となっているが、なかなかの絶景。

30.-5 ハーデース。あるいはハデス。ヘラス(古代ギリシア)の使者の国の神。主神ゼウスの兄。

30.-6 ヘルもヘヴンも……ヴァルハラも。いずれもいろいろな宗教における天国や地獄など、良きにつけ悪しきにつけ死後の世界の名称。

30.-7 カルマ。業とも。行為と、それによって帰ってくるものと。細かいことを言うとバラモン教、ヒンドゥー教、仏教、ジャイナ教などで異なるそうだが、詳しくは知らない。

31.-1 アイピーエス細胞。iPS細胞。人工多能性幹細胞。iPSとはinduced pluripotent stem (cell)の略。胚性幹細胞(ES細胞)研究を基礎として樹立された体細胞由来の幹細胞。ちなみに幹細胞とは、自己複製能と多分化能とを併せ持つ細胞で、分かりやすく言えばそれぞれの体組織にあって働く細胞を供給する源となる細胞。それぞれの組織中の幹細胞は基本的にその組織を構成する細胞にしか分化できないが、ES細胞やiPS細胞は理論上あらゆる体組織への分化が可能という特徴を持つ。この細胞の樹立によって再生医学への道が開けたばかりでなく、生体を模した実験環境を作ることが容易になり、また癌幹細胞(癌組織における幹細胞)のありかたに一つの示唆をも与えることとなった。

31.-2 オルガノイド。臓器のようなもの、という名の通り、実験室において臓器の最小構造を再現したもの。一個の幹細胞から一個のオルガノイドを作れるので幹細胞の研究に向いている。また、臓器を構成する基本単位では何が起こっているかを観察しやすい。

31.-3 キューブラー・ロス。エリザベス・キューブラー・ロス。20-21世紀のスイス連邦の医師。アメリカ合衆国で精神科医として死に面した患者の診療に携わり、死の受容に関するひとつのモデルを提唱した。それがキューブラー・ロスのモデル。このモデルは五つの段階からなり、はじめに拒絶(否認)に始まり、次いで怒り、それから取引、さらに抑鬱と続き、最後に受容に至る。つまり、はじめは自分の死が近いことを信じられない。次いで、なぜ自分が死なねばならないのかと憤る。その後、例えば善行を積めば死なずに済むのではないかと思ったり、神などに縋ったりする。それらを経て死が避け得ぬものを認識するに至って絶望に打ちひしがれた後、最後に受容して平静に至る。これはすべての患者がこの通りになるという法則ではないが、多数の症例によって裏打ちされたひとつの傾向ではある。

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