第13話 鋼太朗side
「えーと『神在市 連続殺人』…っと」
午前の授業が終わって昼休み。鋼太朗は購買で買った昼食のコロッケパンと特製厚焼き玉子サンドを持ち込み、学園の視聴覚室で例の事件を検索していた。視聴覚室は保健室同様に三つ存在し一つはPC専用、昼休みと放課後のみ学園生徒のPC使用閲覧が許可されている。当然年齢制限サイトは学園の特製セキュリティツールによってブロッキング済。
「…流石。私立学園のパソコンは、色々セキュリティキツいな」
噂ではその強固なブロッキングツールを掻い潜ってまで、いかがわしい年齢制限サイトを閲覧しようとした不届きな生徒もいたらしいと聞いた。当然その不埒な行為を働いた生徒は校則違反者となり、宝條学園の校則違反者として厳しい罰が下される。宝條は服装などの基本校則が比較的ゆるい分、校則違反した時の罰がかなり厳しいと聞く。ちなみに違反を侵した生徒は、学園生徒間ではある意味で不名誉な称号である『勇者』認定され、今もどこかで噂になってるとか。
元々パソコンを弄るのは苦手である鋼太朗。不馴れなマウス操作でネットブラウザを開き、ニュースサイトやまとめサイトなどを隈なく検索していくが、どうにもめぼしい情報は得られない。
「やっぱ載ってねーか…」
今から図書室へ行ければ良いが、さっきまで昼食のパンを食べながらやっていたと同時に、視聴覚室と違い宝條の図書室は、一部重要書物も在るからの理由で飲食物持ち込み禁止だし、今行こうとしてももうすぐ午後の授業もあるしで時間もない。
下手すれば鋼太朗自身も校則違反で勇者認定されてしまう。何より転入早々校則違反を侵して、勇者の仲間入りをする事だけは避けたい。幸い今日はバイトも休みなので調べる時間に余裕はある。
「仕方ねぇ。放課後にもう一度調べるか」
ネットの閲覧履歴を全て消去し、ブラウザを閉じた後PCをシャットアウト。一先ず視聴覚室を後にした。
―放課後・視聴覚室。
「あっ、四堂先輩!」
昼休みでの情報収集再開の為、再び鋼太朗が視聴覚室に入ると其処には先客が居た。以前探偵部の副部長をしていると言っていた篠崎勇羅と、彼の隣にいる金髪碧眼の男子生徒…制服は勇羅と同じ一年生だがやたら大人びている。
「えっと…篠崎。だったな」
「あっ、先輩俺の事覚えててくれたんですね。こっちはー」
「一年の榊原麗二(さかきばら れいじ)…。です」
「麗二相変わらずだなー。進学しても人付き合い苦手なの変わってないんだから」
頬を膨らませながら麗二にぶーをたれる勇羅、なんと言う凸凹コンビ。高校生にしてはかなり小柄な勇羅に対し、三年の鋼太朗より身長が高いと思われる榊原とか言う一年生。
麗二は最低限の自己紹介が済んだ後、顔を逸らす辺り人付き合いが苦手なのは本当の様だ。
「視聴覚室で何やるんですか?」
「ちょっと調べ物」
「じゃあウチの部に相談してみません?」
「いや。個人的な事だから遠慮しとく」
連続殺人事件や自分が手伝いをしてた研究所の事を調べているのだ。泪が部長を務めている探偵部とは言え、個人的な問題に足を踏み込ませる訳にはいかない。
「厄介事に片足突っ込むのだけは止めとけ」
「あんたに言われなくても俺がさせませんよ」
彼が人付き合い苦手そうなのは仕方ないとして、この麗二とか言った男子生徒とは何となく気があわない。直感的にだが鋼太朗はそう感じた。
「ちょ、ちょっと麗二…」
「大体お前が余計なトラブルに片足突っ込み過ぎなんだ」
「つーか、副部長が部長のストレス溜めさせてどうすんだよ」
遠回しに部長を務めてる泪の事を出したら、流石の勇羅も黙ってしまった。やはり彼も泪に対して迷惑を掛けている自覚はあったようだ。
「うぐ、その通りですぅ…」
「そもそもお前は、肉とか菓子とか偏食が多いんだ。だからいつまで経ってもチビのまんまなんだぞ」
「それは今の話から全然関係ないだろ!? 後チビ言うな!! 毎日牛乳飲めばいつかデカくなる!!」
こいつ見た目に反してなかなか説教臭い、友人の扱いに苦労してるが対処にも馴れてる所を見ると勇羅との付き合いも長い様だ。そして勇羅は身長を伸ばすのに、どれだけ牛乳を信仰してるんだろう。
麗二への印象が内心変わりはじめている鋼太朗を無視して、漫才を始めた二人を他所に、鋼太朗は今この場所に用事はないと感じ視聴覚室を後にした。
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