その五
動き出したドラゴンの化石はルナを吸いこんでしまいました。そしてそれだけにとどまらず、これからリーンもガイルも吸いこんでやろうと光のうずはぐるぐると回りつづけていました。
「うう、わあ!」
だんだんと強くなる吸いこみにリーンはりょう手を地面にめいっぱいつき立ててこらえていましたが、リーンの白い翼があおられてしまい、とうとうリーンの体が地面からはなれてしまいます。
リーンの体はちゅうにまい上って、とぶこともできずにうずへと吸い込まれて行きます。
たいへんだ! ガイルはとっさにとびだして、吸い込まれる力をりようしてはやくとびます。吸い込まれる方に向かってとんだガイルはすぐにリーンへとおいつくと、リーンのりょう手をつかまえます。
地面にりょう足をつけて、しっぽといっしょにガイルはリーンが吸い込まれないようにふんばりました。
「がんばれ、リーン! おれさまがついてるぞ!」
ですが、そんな二人をあざ笑うように、化石のドラゴンの吸い込みはより強くなりました。ずるずるとガイルのりょう足は引きずられてうずの方へと進んでしまいます。
このままでは二人ともうずに吸い込まれてしまうでしょう。するとガイルはもういちどきあいを入れてふんばると、思い切りリーンをうしろへと放り投げたのです。
翼を広げて、吸い込みからリーンをかばって、ガイルがかわりに吸い込まれて行きます。
ガイルが吸い込みにつかまったことで、リーンは吸い込まれずにすみ、地面をごろごろと転がって行きます。土ぼこりでリーンのまっ白な翼はどろだらけです。
けれどそんなことを今は気にしている場合ではありません。ガイルがたいへんだ!
リーンはいそいで顔を上げてガイルをさがしました。ですが、見つけたのは今まさにルナのように宝石に変わって行くガイルの姿でした。
「ガイル!」
「リーン、にげろ!」
せめてそれだけ、ガイルはリーンにそう言うと、ついに宝石に姿を変えてしまいました。赤い宝石です。
ガイルだったその赤い宝石はうずに吸い込まれて消えてしまい、ついにリーンの番がやって来たかと思われました。ですが、どういうことでしょう。化石のドラゴンは口をとざし、光のうずを飲み込んでしまったではありませんか。
リーンは一人、この場に取りのこされてしまいました。今までずっといっしょだったガイルもルナも、今はどこにもいません。
目の前には口をとじたドラゴンの化石がしずかにリーンを見下ろしています。じわりとリーンの目になみだがにじんで、光の当たり方で七色に色を変えるリーンのひとみがゆれました。
その場にひざと手をついたままうなだれるリーンの顔から地面へぽたりとひとつぶのなみだが落ちました。するととつぜんリーンのせなかの翼が大きくなり、広がったのです。まっ白なリーンの翼は七色の光をはなち、しずかだったドラゴンの化石がおぞましい声でさけびます。
ガイルとルナに会いたい。リーンはその時、そうねがっていました。
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