その四

 四まいの大きな羽根は風を受けて回っています。どういうものなのかリーンたちは知りません。


 羽根がついているのは家とはちがう作りのとても大きなたてもの。中にガイルとルナが入って行きましたが、ほこりっぽく、あるのは手ぜまでがらんとした部屋と、二階のこなっぽい部屋。さらに上に行くと木で作られた輪っかやぼうなどが動き回っているうるさい部屋しかありません。食べものもおもちゃも無いので、二人はつまらなそうに出てきます。


 けれど、リーンはちがいました。


「二人とも! こっちに来て! どうぶつがいっぱいいるよ。みんなでっかくておいしそうだよ!」


 つまらない気分からうってかわって、目をかがやかせてほっぺを赤くしたルナとガイルはリーンのところへと向かいます。


 金色のカーペットのような麦畑をとびこえ、やがてリーンのすがたが見えてきました。ふしぎなばしょの家とも、風車小屋とも形のちがうたてもののところにリーンはいます。


 リーンは二人を見つけると大きく手をふりながら、片手にはまるまると太った白い鳥が抱きしめられていました。ニワトリのようです。


 どうやらここはけい舎のよう。中にもいっぱいニワトリがいて、たまごもあるとリーンが二人に教えると、さっそくルナとガイルはけい舎の中に入って行き、ニワトリを追いかけ回します。


 ガイルはリーンのニワトリよりも大きなニワトリをつかまえ、ルナは両手にたまごを持って出てきました。思わぬごちそうに三人はごまんえつ。寒い日にこんなごちそうはめったに手に入りませんからとうぜんです。


「これだけじゃないよ! 向こうにはもっと大きなどうぶつがいるんだ」


 これいじょう何がいるんだと、幸せそうなガイルがそれはもうとろけそうな表情でリーンにそこのことをたずねます。さっそくたまごを食べているルナも同じでした。


 リーンは二人をあんないします。とばなくても草の生えていない地面が続いているので、まようことはありません。かけ足で行くと目的のばしょはすぐでした。


「すごいわ! お肉のどうぶつじゃない!」


 お肉が大好物のルナが思わずさけびます。そこにはけい舎よりももっと大きなたてものがあり、青々した草の上にはツノを生やした大きなどうぶつが数頭います。牛でした。


 牛たちはリーンたちを見てもにげるそぶりを見せません。つかまえほうだいだとルナのかんげきがとびます。ふつうならドラゴンを見た牛はにげてしまうはずだからです。


 ここはあたたかくて食べものもたくさん。今が寒い日であることを忘れてしまうそうなくらいです。


 けれど、リーンとガイルはここを楽しみながらも、どうしてもはじめておとずれた気がしないことにもやもやがつのって行きます。


 うーん、うーんとリーンとガイルはそのことを考えてみましたが、牛をつかまえようとしてそのおしりにかみついたままふり回されるルナに気づいて助けに行ったことですっかり考えることを止めてしまうのでした。

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