その三

「置いてきぼりなんてひどい!」


 ふしぎなばしょをリーンとガイルがたんけんしていると、ほっぺをふくらませたルナがやってきて二人に言いました。


「ルナはこわがって近づかないだろ」


 ガイルが言います。たしかにルナは前にきのこ森にリーンといっしょになってガイルをさがしに行ったとき、森のふかくに行くことができませんでした。


 しかしきのこ森のふかくの先にあるというこのふしぎなばしょにルナはこうしてやって来ました。リーンがうれしそうに言いました。


「もうこわくないんだね! じゃあみんなでたんけんだ!」


 いがみ合うルナとガイルの間に立って、二人の手を両手にそれぞれつないだリーンはまん面の笑顔。そんなリーンを見たルナとガイルもいつの間にか笑顔になっていました。


 そして三人はふしぎなこのばしょをすみずみまで見て行くことにしました。


 大きな木にくっついた家の一つに入ると、中には家具がきれいにのこされていて、けれどだれもいません。べつの家ではガイルが食べものを見つけました。かじつのようでしたが、しおれていてかちかちです。けれどだめになったにおいはしていないので、お腹の空いていたガイルはそれを一口。


「あまい、おいしい!」


 ぼくもわたしもと、リーンとルナもそのかじつのようなものを手にとると食べました。たしかにはじめはかたいのですが、しばらくかんでみると少しずつやわらかくなり、ふつうのかじつよりもそれは甘くておいしかったのです。


 リーンとルナがそれを食べている間にも、ガイルは家の中をたんけんして行きます。土の色をした石のようなものがあり、ふたがしてあるのでそれを取ってみると中にはまたどろのようなものがつまっていました。なんだろうとガイルがそれをのぞきこんでみると、つんとしたにおいがしてガイルはおどろきとびあがります。


「これはお肉だ。でもあんまりおいしくないね」


 べつのばしょではリーンがよく風の通るところにぶら下がっていた木の皮のようなものを見つけました。少しへんなにおいがしましたが、いやなにおいではなかったので、これも食べものかなと思い、思い切ったリーンがそれを食べてみるとふしぎなことに口にお肉の味が広がって行きます。ただしんせんでやわらかいお肉が好きなリーンはそれをいまいちお気にめさなかったようす。


「かわったものがいっぱいね。でもおもしろい!」


 ぎゃくにルナはかちかちのお肉が気に入ったようでした。ルナのとがった歯はかたいお肉もなんなく食べることができるのです。リーンはかわいたかじつを、ルナはかちかちのお肉をそれぞれほおばりながら、そのどちらもをほおばったガイルはべつのばしょにたんけんに行こうと言います。リーンもルナも、すっかりこのばしょが気に入ったので、もっと好きになりたいとガイルにさんせいしました。


 そしてガイルが指さしたのは、家がいっぱいあるこのばしょから少しはなれたばしょにある、くるくると回っている羽根のようなものでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る