どちらでも無い日

その一

 暑い日がすぎて、川であそぶばかりの毎日がすぎました。


 今は暑くもなければ寒くもない、どちらでも無い日です。


 リーンが一番好きな日です。


 お日さまが顔を出せば、巣に差し込んでくる光でぞんぶんにぽかぽか日なたぼっこができるからです。


 こんな日は木の葉がいっぱいにしきつめられた自分の巣で、ゆったりと翼のお手入れ。


 ほかのドラゴンとは少し変わったリーンの翼はまっ白な羽毛につつまれているのでお手入れが大変でした。


 まっ白なので汚れは目立ち、すぐに虫がついたり、かゆくなったりしてしまうのです。


 すわって、リーンは自分の手で翼に生えた羽毛をかき分け、虫を取ったり、なでて汚れをきれいにして行きます。


 けれどどうしてもつけ根のところのおそうじは苦手でした。手が届かないし、目で見えないからです。


 困ったな。


 今日はおそうじを手伝ってくれる小鳥たちがいません。


 困ったリーンはひとまずお日さまで翼をあたためていると、お日さまの方から声が聞こえました。


「あそびにきたよ!」


 やって来たのはルナでした。


「ちょうど良かった」


 リーンは翼を広げながらあそびにやって来たルナに翼のお手入れを手伝ってもらおうと思い、伝えました。


 やわらかい巣の上におりたルナは、リーンのおねがいを良いよとこころよく引き受けました。


 ありがとうとルナにお礼を言ったリーンは、ルナに背中を見せると、きれいにしてほしいところを教えました。


 リーンもルナも、二人はこうしてすごす時間をとくべつに感じていました。ガイルとの三人ですごす時間とは少しちがいます。


 けれどそのとくべつが何なのか、二人は知りません。


 どちらにしても楽しいことに変わりはないので、リーンもルナも気にしませんでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る