11

「リューネ」という愛称で親しまれていた彼女に、僕は恋に落ちたかといえば、そうではなかった。いや、恋に落ちる暇が無かった、といったほうが適切なのだろうか。彼女の横には恋人がいて、突然その恋人もろとも消し飛んだのだ。僕自身は現場にいない。【ナレッジ】から脳に直接送られる特殊な電波によって、無作為に選ばれたその場にいる人物の視点を借りる形で、リューネ達の姿を見ていた。彼女たちが瞬く間に消滅するとともに、借りていた視界も暗転したので、僕には何があったのかはわからなかった。それが敵の襲撃だという情報は即座に入ってきた。僕らの戦いに今までなかった「死」という概念がついてくるということが、この時やっとわかった。しかし考えてみれば、僕らが今まで戦ってきた相手は、本気で征服を試みている連中だったわけで、単にそれをずっと忘れていたのかもしれない。ベータテスター達は狼狽し恐怖した。その末に、戦いを放棄し始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る