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一年半前も今も、人々が片手に持ち歩く物は変わっていない。バージョンや形状のみが変わり続け、それでも情報の塊を持ち歩くことに変わりはなかった。きっかけは些細な行動。僕がとあるアプリケーションを携帯端末にダウンロードしたことだった。起動と同時に、目の前が真っ暗になり、そうかと思えばすぐに視界が戻る。だから家に帰るまで、自分の身に何が起こっていたかに気づかなかったのだ。普通通りの夕方を過ごし、一日を終えようとした時にやっと気づいた。気づいたと言っても、自分からではない。声だ。声が語りかけてきたのだ。音として僕の耳から入ってきた声ではなく、頭に直接入り込んでくる声だった。声を聞いたというよりは、感じた、知覚した、認識した。そう表現するのがふさわしいか。声を感じたと同時に体温が僅かに上がった気がした。すると、窓の施錠がひとりでに解かれ、勝手に開いた。他でもない僕が「窓を開けよう」と考えたからだった。
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