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今の話はまだいい。とにかく、授業中もそういう妄想に駆られ続け、その中で僕はヒーローになったり、逆にヒーローから助けられるモブになったり、あるいはテロリストに殺されたりもした。様々な僕が活躍し、様々な僕がその妄想の中で生き延びたり命を落としたりした。「命を落とす」なんて、簡単に言うことではないのかもしれないけれど、それはあくまで僕の妄想の中での出来事だ。頭の中において、皆の生殺与奪は確実に僕が握っていたのだ。具体的な話、それが一月二一日までの出来事。一月二二日から、その妄想が全部崩れ落ちる。妄想が妄想でなくなってしまう恐れが生じた。端的に言えば、僕は脅されたのだ。自分自身が戦う意志を見せなければ、クラスメイトに危機が迫ると。何気ない僕の行動が、僕自身を社会的かつ生物的な生命危機に陥れた。そんな罪悪感から、危機を回避するべく、僕は泣く泣く戦いに身を投じたのだ。目的も相手も、何もわからないまま。

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