33-5 迫る猛獣軍団、窮地を救えイーテスト!
『ユーストがやられた……シーンの奴は何やってたんだよ!!』
『それいったら、おたくの妹さんにも責任ある気が……』
『うるせぇなぁ! 気を散らすこと言ってんじゃねぇ!!』
ウィストらを引き付けたのちに、猛獣軍団はドラグーン近辺へと一斉に電装を仕掛けていった。バグファイターを相手に迎撃するサザンクロス・バディだったものの、ユーストが戦闘不能となり帰還せざるを得なくなった様子へ、アランが思わずシーンのせいだと詰る。スパイ・シーズ越しにトムがステファーにも責任があると突っ込んだものの、妹の責任だとの突っ込みに対しては、はぐらかしてもいるようで、
『アランはライトウェーザーだからね。無理はいけないよ!』
『てめぇまで、そういう目で見るのかよ!』
そんなアランと別にヴィータストもまた電装されており、エレクトロ・キャノンでバグファイターを迎え撃つ。ジーロの手によるカスタムだろうと、サザンクロス・バディがライトウェーザーに変わりはないのだとシャルは少し鼻で笑っていたが、当の本人からすれば気が良いはずがない。ヴィータストに負けまいとガーディ・リボルバーを撃ち続け、
『シャル、わざわざほがな言い方はしのうてえぇんじゃないかのぉ?』
『そうそう、アランは顔の方は微妙だけど、結構いい腕してるわ! あたしのお・す・み・つ・き♪』
『そうそう……ってそう褒められて喜ぶかよ!!』
ラルはまだしも、リズのアランへのフォローは別の領域へも踏み込んでいた。思わず気色悪いと声を荒げた。そんなジーボストはビートル形態で地上のバグビーストへと立ちはだかる、機動性でバグビーストへ遅れをとるはずながら、アメンボ・シーカーによる牽制を交えながら、ひるんだ相手にヘラクレス・ホーンからのランチャーを展開させて迎撃に回る。地上と空中から攻める猛獣軍団を相手にしても、ドラグーンへ寄せ付けることはない様子でもあり、
「こうヴィータストもジーボストも活躍してたら、俺が目立たないじゃん!」
「先輩、そう目立つや目立たないの問題ではないですよ。何を……あれ、えーと」
「ユーストの奴と一緒にされたら困るじゃん!」
「あ、はい……そういうことですからあまり気にしないでと」
ドラグーンの砲撃手として、ハードウェーザーに活躍の機会が奪われている事をロメロは少し不服そうであった。そう誰かの活躍や手柄に固執する必要はないとブルートが後輩としてなだめていた所、
「一時はどうなるかと思ったんじゃが、取り越し苦労かのぉ」
「それよりユーストやサンディストだよ。片付いたらアルタイまで……」
「巨大なエネルギー反応を確認してます! 上空……きゃああっ!!」
猛獣軍団の猛攻はドラグーンを窮地へ追い込むものではない――ブレーンが思わず安堵の声を漏らそうとした瞬間に、艦内へ激しい振動が押し寄せて、ブリッジが揺れに襲われた途端、
『まさかバグロイドが甲板に……!!』
『そうだ! この瞬間を狙っていたから!!』
ウィンが指摘した通りバグロイドがドラグーンへと乗りかかり、それもバグキマイラがアルタイから飛び上がり、急降下するとともに甲板へ乗りかかり、両足のスクラッシュを走行へ突き当て、尻尾に設けられたデリトロス・ベールが甲板をバターのように溶かしながら切り刻んでもいて、
『こう僕たちの所を攻めるなんてね!!』
『おっと、これ以上動いたら艦がどうなるか!!』
『人質か……よくも卑怯な真似を!』
バグキマイラがドラグーンの喉元を突くように陣取っていた。ベールによる鋭利な刃だけでなく、口からのカタストロフ・ギガまで火を噴けば艦そのものはひとたまりもない。人質を突き付けられて、思わずバズーカを手にしかけていたヴィータストは動くことができない。ウィンが声を荒げており、
『畜生! とっととコクピットをなぁ!!』
『そうカッカとなったらいかんのぉ。手を出したらおしまいぜよ』
『そりゃそうかもしれないけど、あんたは落ち着きすぎだろ!』
『なんじゃあ、やっこさん、確かこの前見たことがあった奴ぜよ』
『そう、確か猛獣将軍とかのバグロイドで、一人で向かってたあいつよ!』
同じく焦りを生じ始めるアランをよそに、ラルは泰然として構えてもいた。リズからレーブンのバグロイドだと思いだした途端に思わず手を叩き、
『わしらの負けじゃあ! おんしらも潔くおとなしくするんじゃ!!』
『ちょっとラル!? それ本気で』
『本気も何もないぜよ! やるなら一思いにやったらどうかのぉ!?』
『自分からやられに行く……正気か!?』
ラルがとっさに自分たちの敗北だと宣言し、ドラグーンを救える手立てはないとあり得ないことを口にしていた。思わぬ彼の発言にシャルが動揺するだけでなく、対峙するレーブンですら微かに困惑をしており、
『じゃが、こうも無抵抗のわしらを一思いにやるというのが、将軍のやることかのぉ!?』
『何……私のやり方が気に入らないと!!』
『そうよのぉ。姑息な手に頼って将軍とは肩書が泣くよのぉ』
『肩書が泣く……将軍は勝たなければ、勝たなければだな!!』
『そういわれても、おんしの腕が至らなかったからのぉ、まぁやられるわしに関係ないかもしれんがのぉ』
ラルは巧みな話術で、レーブンの戦意を鈍らせていた。なりふり構わないで戦っている彼女ながら、プライドを刺激されることが彼女の判断に迷いを生じさせており、
「こういう時にラル君の肝っ玉には驚かされるね」
「その隙に、ロクマストを送り込んで背後から……その間の時間稼ぎとはのぉ」
「ロクマストの電装完了です! 電次元ジャンプで……待ってください!」
ラルがレーブンのプライドを巧みに刺激しているのも、一寸の時間稼ぎに近いともいえた。しかしバグキマイラをドラグーンから引き離しさえすれば、形成の逆転は容易――エスニックの采配は迅速でもあり、ロクマストが出ようとした瞬間に第三者からの通信が入った事へクリスが気づき、
「こういう時に誰かのぅ!? 今はそれどころじゃないんじゃが!!」
「急かさないでくださいよ! 今コードを照合してますから……」
『わりぃ! 今フィールドをぶっ壊したから戻るところだからよ!!』
「フィールドに戻る……ってその声は!?」
エスニックに急かされながらも、クリスが通信の相手を照合しようとした瞬間、相手から先に自分の帰還を伝える通信が入った。舞い戻ろうとする人物が何者かと彼女が一瞬首をかしげていたものの、
「直ぐに戻ってほしい、少し深刻な事態だからね」
『おー、戻って早々大仕事のようだぞー』
『もうそっちに飛べますから行きますよ、まだ本調子じゃないですしね!!』
クリスにとって代わるよう、エスニックが凱旋した相手へとすかさず通信越しに指示を出した。相手が少し苦労をぼやいていたものの、早々に生じている窮地だろうと嬉々として向かう様子が心強い。今の彼の顔つきは強く希望を確信している様子でもあった。
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『本当に間に合うっての!? 僕が動かないとだけどさ!!』
『確かに最悪の事態を想定しときなさいっていうけど』
『おんしらの師匠なら、おんしらが信じんくてどうすんじゃて』
エスニックからの通信が伝われば、シャルは半信半疑だったものの、ラルもまた希望を確信へと移行させようと強い自信を示しつつあった。目の前のドラグーンが相変わらずバグキマイラに乗り込まれていたままにも関わらず、
『す、少しは抵抗すると思ったが……負けを認めたのか!? 貴様は!!』
『だからさっきからいっちょるじゃろ、つまらない意地でえぇ恰好するおんしは滑稽じゃのぉ』
『そこまで侮辱するなら一思いにやってやる!!』
この静観の姿勢を取る電装マシン戦隊に対し、レーブンは調子を狂わされてように、判断に迷っている――ラルからすれば滑稽に過ぎないと一蹴した途端彼女のプライドは傷つけられ、一思いに尾のベールを突き刺し、
『カタストロフ・ギガで仕留めるまでだ! 猛獣将軍として私は……』
「俺におめぇはやられちまうって訳だな!!」
バグキマイラの口から業火がさく裂しようとした瞬間――目の前で頭部そのものは刎ね飛ばされる結果となった。レーブンの敗北を宣言する漆黒のハードウェーザーは、両手で戦斧を握りしめて一矢報いた。両目からのアイブレッサーで怯むとともに、ドラグーンの甲板で姿勢を制御できず、その場から落下する。早速ヴィータストの方へ振り向いた途端、
『多少姿は変わっているが……まさか』
『イーテストだ、イーテストだからアンドリュー!?』
「バーロー、将軍から聞いたんじゃねぇのかよ、おめぇは」
『そ、そりゃ聞いてたけど! ずっと連絡なかったからピンピンしてるまでとか考えてなくてさ!!』
ゴッドホーク・ウェートを両手にしたイーテスト・インフィニティ――アンドリューのハードウェーザーとして唯一無二の存在でもあった。安否がわからないまま半ばあきらめざるを得なかった彼は、平然とした様子で軽口を叩いており、シャルは現状を把握しきれないでいた様子だが、
「あたいはこうして手も足もあるだろー? 違うか―」
『そうじゃのぉ、流石全米No.1といっちょるだけはあるのぉ』
「まぁ、あんなんで俺はくたばらねぇよ、遅くなっちまったことにゃ謝るけどよ!」
『そのアンドリュー君に、そうそう無理を押し付けて悪いけどね』
逆にラルはアンドリューの無事が当然だと言いたげであり、言われた本人としてもどこかほほえまし気な心境でもある。そんな様子の中でエスニックからバグアーサーを相手に応戦するブレストの事を知らされれば、
「ラルさんはドラグーンの方を、シャルは俺と来い!」
「データの方は送ったからよー、ブレストと同じつもりでいいぞー」
『イーテスト、そうアンドリューは手を加えたんだ!』
『しかし、できる事ならぶっつけ本番になるのは……』
ドラグーンの守りをジーボストへ託しつつ、自分はシャルを連れてブレストの救援へと急ぐよう促す。その際に送られたデータの内容へシャルがまた目を丸くして、ウィンが本番勝負はタブーと釘をさすが、
「確かにシミュレートしたいけど、状況が状況だからなー」
「ジャンプしてきたばかりだし、その上で急ぐとなりゃ……おめぇなら出来らぁ!」
『もう、おだてたって結構危なっかしいんだからね!!』
アンドリューから急を要すると触れられ、自分へ強い自信と信頼を寄せているとなればシャルも起たずにはいられなかった。スタートとセレクトボタンを同時に押すとともに、シンクロナイゼーションが発動しイーテスト、ヴィータスト間での同期認証が完了した途端、ヴィータストのコクピットにシャルとウィンの姿は既になく、
『もうぶっつけ本番とか本当しびれることしちゃうわね~』
『そういっちょるなら、わしらも動かないとのぉ!』
ヘラクレス・ホーンが胸部へと移るとともに、両手と頭部が展開した途端にジーボストは立ち上がった。両手のマニュピレーターに内蔵されたクアンタム・フィンガンを地上のバグビーストへと連射し、ひるんだ相手をその足で力いっぱい踏みつけて粉砕する。バグキマイラがドラグーンから転落した途端、猛獣軍団は統率を失った烏合の衆。ドラグーンからの砲撃へもろくな抵抗手段はないに等しく、
『こ、こうも一方的に……それより!』
ただバグキマイラが頭部を粉砕されながらも、機体自体はかろうじて健在でもあった。よろめく様子で立ち上がりながら、一方的に蹂躙されるバグビーストの様子を網膜に焼きつけざるを得ないが、
『それより、あのハードウェーザーまで来たら父上が! それだけは……!!』
ただ、今のレーブンとして猛獣将軍ではなく、鋼鉄将軍の娘として死力を振り絞ろうとしていた。既に将軍としての力量や器がないと察しながらも静かに飛び上がっていった。
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