33-6 父よ! 猛獣将軍は戦火に消えて
「嘘だろ……バトルホークだろ!?」
――ブレストとバグアーサーの勝負はなおも続いていた。だが両手首のハードポイントにデリトロス・ベールを装着させ、拳のように振るうバグアーサーの攻撃を前に、バトルホーク・ウェートの刃は爛れ、零れ落ちていった。巨大な質量で相手をたたき割る用途をもつバトルホークを才人は楯として駆使していたが、ベールを前には歯が立たず、
「あのねぇ! こうも近くからビームは無理でしょ!!」
「だから質量には質量、実体には実体だ! 左手は離せ!!」
「なるほどパチね……シーカーは感づかれない所に飛ばすパチよ!」
ニアが思わずあきれてしまっていたものの、玲也はベールのビーム刃を相手にして立ちまわっているから起こる事態であると説いて策を授ける。コンパチが彼の言葉の意味を把握して、イチへ立ち回りについてアドバイスしたのちに、
『こう一本調子とは思いたく……』
「バトルホーク・秘剣隠しなんだよ!!」
ハインツがブレストの実力を見定めようとした直前、ブレストが大きく左へ旋回するとともに、バトルホークの刃を質量弾としてたたきつける術に出た。咄嗟に左手のベールでハインツが受け止めるものの、質量の差から実体刃でもある峰で受け止めきることはできなかった。剣先がひしゃげるとともに、
「その隙に行くぞ! 右もつぶすからな!!」
「その為のドリルチャージだからね、玲也ちゃん!!」
さらに姿勢を少し低くしながら、ブレストが左手を勢いよく振るった。左手首の先に装着されたボタン・シーカーがドリルとしてうなりをあげて、ベールに接触するや一点から打ち砕かんと激しい火花を上げていく。脅威となる両腕の剣をブレストが潰したに見えたが、
『それでこそ、バグロイヤーを苦しめただけの存在……だが!』
ハインツは動揺を見せることなく、胸部に仕込まれたデリトロス・リボルバーでハチの巣にせんと掃射していく。至近距離で弾丸を浴びながらもブレストは多少よろけた程度に見えたが、
「ダメ!電次元フレアーが潰されちゃってる!!」
「あの時、切り札を潰すため……何!?」
とっさにブレストが左手のジャベリンを突き立て、間合いを取った直後バグアーサーが狙ったのはブレストの腹であり、電次元フレアーを潰しにかかっていた事を玲也は気づかされた。だが休む間もなく目の前の標的から電撃がさく裂。左手に握られたジャベリンの柄が粉々に砕け散っており、ただバグアーサーが自分目掛けて二本の指を突き付けており、
『これが秘拳サンダーボルト……あとはお前たちを倒すまでだ!』
ハインツが豪語する通り、バグアーサーの切り札が電撃を帯びた両手の拳によるサンダーボルトでもあった。右手で二本指をブレスト目掛けて突き立てていた先ほどの攻撃は、電撃を標的目掛けてさく裂させるサンダーピースでもあり、
「こ、この野郎こっちに来るなって!」
『笑止!』
サンダーボルトの威力に多少怖気づく才人は、そのまま右手に装着したボタン・シーカーをロケットパンチの要領で撃ちだすものの――真っ向から迫るドリル目掛けてバグアーサーは拳を振るって応えた。サンダーブローがボタン・シーカーの先端から対象を粉々に砕いていたのだ。
「そんな、シーカーがこんな簡単に」
「それも真っ向から粉々にしたとなれば……ただ者ではないな!!」
「なに敵を褒めてって……あれ、何か急に足取りが重くなってるんだけど!!」
バグアーサーの拳を前に、玲也は相手が尋常ではないと認識していたが、才人には余裕がなかったのか彼の口ぶりもどこか悠長なものへと聞こえた。それだからか間合いを取ろうと、一度ブレストを後退させようとしたが――操縦時の違和感に気づいたようで、
「ニアちゃん、ちゃんと制御できてるのこれ!?」
「何馬鹿なこと言ってるのよ! こう処理はできてるんだけど!!」
「もしかしたら、相手が干渉しているかもですニアさん! 変なエネルギー反応が」
「……あのバグロイドからパチね!」
実際ブレストが何者かに引き寄せられていく形で、自分から間合いを詰めていっている事にイチとコンパチが憶測する。実際バグアーサーが両手を広げてブレスト目掛けてとあるエネルギー波を照射し続けており、
『そしてサンダーハンドで引き寄せるまで……逃げられると思わないことだな』
実際バグアーサーがブレストを引きずり込もうとしていた――両手からのサンダーハンドが相手の破壊より、相手の動作を封じる力へ重点を置いた技。そのまま間合いを詰めてサンダーブローをぶちかますことが、ハインツが脳裏で描くタクティクスであり、
『サンダーブローで引導を渡す! それだけ……』
『スペリオルスカイ・セパレートだよ!!』
その時、バグアーサーの後方から巨大な質量弾が打ち出されていた。まるで特攻するかのように自分と同等のサイズのブースターがぶちかまさている事態――多少の動揺をハインツは見せていながらも、とっさにサンダーピースをさく裂させる。ジャベリンと圧倒的に質量で異なることもあり、そのものを破壊するまでには至らず、かろうじて着弾の軌道をそらすことが限界。ただブースターを打ち出した上空では漆黒の機体が映されており、
「ちょっと、その技ってブースターの奴なんだけど」
「でもシャルちゃんの声がしても、そもそもブレストがここにいる……だよね?」
「いや、あのハードウェーザーはもしかしたらだけど……!!」
スペリオルスカイ・セパレートとは、ニアが触れる通りブレスト・ブースターの技でもあり、スペリオルスカイ・ストレートの派生ともいえる技であった。ゼット・バーストを発動させてブレストそのもので突撃するストレートに対し、コンバージョンで変形したヴィータストのブースターそのものを射出する技である。才人が突っ込む通り、既にブレストがブルへコンバージョンしている関係上、あり得ない技でもあり
『そうだね! 半分正解といったところなんだけど』
『わりぃな、ずいぶんと待たせちまってな!!』
「アンドリューさん!? やっぱりそうだと思いましたけど!!」
「い、いつの間に戻ってきたの!? そんなの聞いてないんだけど!!」
シャルに続いてアンドリューが名乗りを上げたことで、イーテストが自分の目の前に存在している事を玲也たちは認識した。最もインフィニティとして手を加えられただけでなく、両足とバックパックにヴィータストがコンバージョンした状態。いわばイーテスト・ブースターとしてブレストとほぼ同等の姿も披露していた。スペリオルスカイ・セパレートの謎は一応解けたことになるが、
『なんだ~あたいらが戻ってきて嫌なのか~?』
『まぁ、細かい話は後でちゃんとすっから……手伝ってやろうじゃんかよ!!』
いつの間に復帰した事を突っ込まれつつも、イーテストは真っ先にバグアーサー目掛けて急降下を開始する。両手から展開したソルブレダーを振るって相手を切りつけようとするものの――振るわれたサンダーブローはイーテストの刃を返り討ちにするように粉砕しており、
『って言ってる傍から早々……』
『おいおい、そこで弱気になってどうするんだよ』
『あいにく、エレクトリック・スマッシュが本命だからね!!』
多少ウィンが怖気るものの、アンドリューからすれば軽く相手の力量を図るための攻めともいえた。サンダーブローの威力を把握したのち、その場で海老反りするように回転しながらエレクトリック・スマッシュによる足技で攻める方針へ切り替えていった。バグアーサーとの拳を互角に渡りあっており、
『ブレストではないが……多少は骨のあると見た』
『たりめぇだー、誰に口きいてるんだ~?』
『生憎、そいつの師匠が俺だから! 骨がねぇとか言わせてたまるかよ!』
『相手に不足なしか……面白い!』
アンドリューの力量をハインツも見定めた様子でもあり、どこか口元を微笑ませながらイーテストの勝負へと応じる。この戦いでブレストが蚊帳の外に追いやられているようだが、
「アンドリューさんがチャンスを作っている! ファイティング・ホールドだ!!」
「お、おぅ! 何か背中から攻めるってちょっと気が引けるけど」
『バーロー! サシやタイマンで戦ってるんじゃねぇ! 遠慮なくやっちまえ!!』
「勿論ですよ! 勝負に情けはないですからね!!」
イーテストとの戦いにより、バグアーサーが背後まで注意が行き届いていない状況がチャンスともいえた。アンドリューからの承認を得ていた事もあったが、ブレストの背中に設けられたスフィンストの腕からハリケーン・ウェーブが掃射されようとした時――2機の間を挟むようにして、電次元ジャンプで1機が電装され、
『後ろから狙われています! 父上……!』
『レーブン……なぜお前が! 作戦はどうした!!』
バグキマイラがハリケーン・ウェーブからバグアーサーの楯になろうとして、間へと入り込んだ。ハインツが多少の動揺を見せたことは、本来バグキマイラが遂行する作戦が破綻した意味を察していた事もあるが――実の娘が同じ戦域にいる事で親としての懸念が浮き彫りにされた瞬間でもあった。
『どうしたどうした! てめぇの相手は俺だろ!?』
『ぐあっ……お前はそのまま退けば良いはずだ!』
『猛獣軍団が滅んで私だけ引き返せと! 父上は鋼鉄軍団を率いる使命が……ああっ!!』
実際この瞬間、バグアーサーはイーテストへ付け入る隙を与えてしまった。振り下ろされたバトルホーク・ウェートを振り下ろして、バグアーサーの右腕を切り落としていった。それでもハインツはレーブンの無事を案じようとするも、娘は頑なに考えを曲げることはない。その為にニードリッパ―で自分の体が巻き付けられる結果となり、
「ファイティング・ホールドだ……これで一思いに!!」
『おのれ……こうも背中から不意を突く奴の手にかかるなど!!』
ハリケーン・ウェーブで封じ込めた相手に対し、ニードリッパ―で物理的に相手を拘束する技こそファイティング・ホールド。動きを封じ込めながらバグキマイラへ引導を渡す姿勢をブレストは取ろうとしていた。
ただ半ば詰んだような状況ながらレーブンは、父を背中から討とうとした卑怯者であると玲也たちを罵る。そして最後の抵抗といわんばかりに、尾のデリトロス・ベールを縦一文字にブレストの腹を掻っ切ろうとした所、胸部に刃が行き届けばコクピットの装甲を両断して
「あ、あぶねぇ……シャッターがなかったら今頃」
「手負いの獣は何をするかわからん、一気に倒すだけだ!!」
『レ、レーブン……奴にお前が勝てる筈が!!』
セーフシャッターにより、かろうじてブレストは首の皮一枚つながった――才人が思わず胸をなでおろしていたものの、玲也として早急に始末するほかないと彼女を危険な存在と改めて認識する。一方のハインツはレーブンが確実に殺されるだろうとわかりながらも、既に敵うどころか逃げることも絶望的だと諦観の念を示しだしており、
『そんな…… 私がこのような卑怯者に……』
「カウンター・メイス、弾丸巴投げだ……!!」
『おっと、俺がブレストをここまで鍛え上げたけどなぁ!!』
未だ娘として父に応えられないまま果てる現実をレーブンは受け止められないでいた。だがその現実は非情でもあり、ブレストが自分自身の体をスライディングさせる要領で、バグキマイラへと滑り込ませた後、右膝からのカウンター・メイスの鏃を追い打ちのように相手の腹目掛けて突き刺していった。
さらに右足そのものを打ち付け、巴投げの要領でバグキマイラの全身を宙に飛ばした矢先で、弾丸が彼の体内で爆散しており、
「戦いはやるかやられるか、それだけだ……!!」
『そんな、父上……私は、私は……!!』
覚悟を決めたレーブンはただハインツへの想いを口にしていくものの、玲也は彼女が猛獣将軍としてつまらないプライドや意地へ固執していたに過ぎないと一蹴する。カウンター・メイスを突き刺した個所に向けてアイブレッサーを放射される事に伴い、機体そのものが耐え切れず、爆破四散するとともにレーブンの叫びはかき消され、
『レーブン、よくも娘を……お前たちは!』
娘の最期を目前に、流石のハインツも感情へ身を任せざるを得なくなっていた。だが冷静沈着な姿勢でブレストを圧倒していた鋼鉄将軍としての強さは失われ、目の前のグレーテスト・リボルバーで逆にハチの巣にされながら、地へ尻餅をつくように屈してしまう。目の前のイーテストへ逆に圧倒される結果となり、
『すまんレーブン、それにグナート……私もどうやらここで』
『鋼鉄軍団を私が引き継ぐ事は構わない……ただハインツもいる前提でだ』
『……それは出来ない筈だ。この戦いに敗れるならば、責任を取ると約束した』
ハインツの目の色から闘志が揺らぎかけた時、グナートから死を許しはしないとの通信が入った。謀反の疑いをかけられた者として、鋼鉄将軍としての責任として敗北は死であると彼は認識していた事もあった。その為にグナートへ自分亡き後を託していたものの、
『鋼鉄軍団はあくまで貴方の軍団だ。貴方がいないバグロイヤーに勝利はない』
ただグナートは、ハインツがこの敗戦で責任を取って果てる事を認めようとしない。あくまで鋼鉄軍団を自分たち深海軍団がひそかに匿って、上層部の追及を避ける事が今後の戦局では必要不可欠と捉えていた為だ。
『私もバグポセイドンを出す形で貴方達を匿うことはできる。時間はあまりないだけに兵力だけでも揃えたい』
『……お前も私の後を追うつもりか』
『私がハードウェーザーを仕留めた上で、貴方達の罪を帳消しにしてもらうよう掛け合う、貴方が七大将軍の筆頭であることに変わりはない』
身内の離反により窮地に追い込まれ、その結果ハインツが死を遂げる――そのような卑小な最期をグナートは七大将軍の筆頭になるハインツの最期として、あってはならないと強く説く。
『――それに、貴方が悩んでいると犠牲が増えるだけだ』
グナートは指摘した。ハインツが撤退を決意しない限り、忠勇を誇る鋼鉄軍団の面々が引き下がらないのだと。父親として娘の後を追うとする身勝手さが、鋼鉄軍団を猛獣軍団の二の舞として壊滅へ追い込みかねないとみなした上で、
『各自退け、責任は私が取る!』
娘の爆散を目にした結果、ハインツが震え上がる腕と共に高ぶる感情を落ち着かせようと言い聞かせる。そして撤退をハインツが決意した瞬間、グレーテスト・マグナムで引導を渡さんとするイーテスト目掛けての反撃を開始した。両肩のデリトロス・ランチャーをさく裂させたのちに、左手ですかさずサンダーホールドを発して逆に相手を封じ込め、
『鋼鉄軍団はまだ死なん、将軍として……父として死ねん!!』
『にゃろう、待て……!』
『私は……まだ後を追わん! お前たちを血祭りに上げるまではだ!!』
この敗北を味わったハインツの胸の内は、今までにない以上の憤慨に駆られる事となった。ただその感情と共に冷静な判断を見失わなかった故か、ついに今は負けを認め、娘を手にかけた2機のハードウェーザーへ復讐を成し遂げようとすると近いを立てながら――
『反応が消えたぞー、まぁもうみんないないけどなー』
『あの野郎を取り逃しちまうとは、俺の腕も鈍っちまってたか』
「そんなことありませんよ、アンドリューさんがいたおかげで将軍の一人は……」
『まぁ、お世辞でもそう言ってくれたらちっとは嬉しいけどよ……』
電次元ジャンプでその場からバグアーサーは消えた。また立ちはだかるであろうと彼の気迫から察したアンドリューが、彼を取り逃した事を少し悔しがっており、玲也は彼のおかげで形勢は逆転し、猛獣将軍を討ち取ることができたと述べれば、
『それより、おめぇらがここまでよく戦ってくれたのがな……俺もいなかったのによ』
『アンドリューさん……はい、本当色々ありましたがここまで無事で』
『アンドリューがそう素直に褒めるってなんか珍しい……あいて』
『バーロー、そういきなり縁起の悪い事言ってんじゃねぇよ』
自分以上に玲也たちがプレイヤーとしての腕を確実に上げている――アンドリューは教え子がこうも成長していることを素直に称賛する。ただあまりにもストレートな物言いだったことでシャルからはらしくないと揶揄われており、彼女を軽く小突いていた。そして微かにリタの方へ憂いのような視線も向けていたが、
『アンドリュー君が戻ってきて私も嬉しいけどね……ただ』
『将軍の言う通りですかね。これからが重要ですからね。すぐ戻りますよ』
エスニックがアンドリュー達の帰還を祝福しつつも、彼が帰還した事が新たな局面を意味しているのだとも触れる。すると彼の顔つきも引き締まりドラグーンへの帰還に移るのだった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「するとアンドリューの兄ちゃんが、玲也の兄ちゃんの兄ちゃんで、おいらの兄ちゃんの兄ちゃんの兄ちゃんだっぺか?」
「ちょ、ちょっとその言い方はもう少し、まぁ何か引っかかるが……」
「まぁ合ってらぁ。筋がいいのはデータから感じてたけどよ」
ブリーフィング・ルームにて、アンドリューが玲也たちへこれまでの経緯を簡単に説明する。同時にケニア、エジプト代表の2チームからすれば初対面であると、簡単に自己紹介を兼ねれば、ラグレーは妙にアンドリューへ憧れのような眼差しを送っていた。彼の例えにウィンが多少戸惑っていたものの、当の本人は気にすることもなく柔和な表情で頭をなでており、事前に目を通していたデータからも期待の眼差しを送っており、
「そう仰られますが……先程は恥ずかしながら私めは……」
「そこまで気を落とさないでくださいよ。俺が後でみてやりますから」
「けど、シャルより小さいプレイヤーが出てくるとはなー」
「もう、そこで何僕に例えてるのさ!!」
ただヒロとして、自分がいながらバグアーサーを前に呆気なく敗れ去ったことを少なからず恥じていた。それでもアンドリューは相手が相手だけに生き延びただけで十分と、温かい言葉をかける。ただリタとして最年少のラグレーが最前線で戦っている事へ少し驚きもあった。そこでシャルと関連付けて例えていることが本人は少し不服そうだったが、
「そんでもって、おめぇがエジプト代表で……なんちゅーかよ」
「プレイヤーとして本当大丈夫かって思ったけどなー」
「い、いきなり余を愚弄するとは……貴殿が超一流だとは認めますが」
「おいおい、あたしらの今を知らないから仕方ないだろ? 本当ドヘタだったからよ」
続いてエジプト代表に触れるアンドリューだが、事前のデータが最底辺に近かったため彼に対しては少し辛辣な目を向けている。のっけからこき下ろされてロディは少し歯がゆい様子だったものの、事実ではあるとアグリカは逆にパートナーをなだめており、
「ですが、ロディさんも伸びてきてますよ。伸びしろでは一番ですし」
「おー、がきっちょがそう褒めるかー」
「まぁ才人も最初五十歩百歩だからよ、最初からダメと決めつけちゃいけねぇよな」
「アンドリューさん! そこで俺まで巻き込まないでくださいよ!!」
「けど、確かに事実ではあったパチね」
玲也が流石にロディを庇えば、アンドリューとしても才人のような例がありうるのだと考えを改めた。ただ自分も底辺からスタートだったことが恥ずかしい様子だと才人は突っ込む。最もコンパチが事実を突き付けて黙らせていたが、
「ソラとかいう奴の方がもういねぇからなー、あとでビャッコの双子にも会っておくかー」
「それもそうだが、とりあえず俺が戻ってきたから話すことがあってな」
「話す事……貴殿が玲也に代わってリーダーとなると?」
「ちょっと! 玲也様がリーダーなことが気にくわないですの!?」
アンドリューとして本題に入ろうと話を切り出した途端、ロディは彼がドラグーンのリーダーへ着任するのかと察していた。これにエクスが納得いかないと彼へ当たったところ、
「い、いや余はそのつもりで言った訳では……シーンならともかく」
「そもそもアンドリューさんがいなかったから、玲也がリーダーになったんだろ? そういう意味でリーダーが変わるのも筋なんじゃないかって話だよ」
「まぁ確かにそうだけど、玲也がリーダーのつもりで俺も見てるぜ?」
「そうそう……ってえぇ!?」
アグリカがそのようにとらえた理由も一理あるとみなしつつ、アンドリューは玲也がリーダーとして据え置きに変わりはないとのスタンスで意見する。この話に一番驚いていたのは玲也だったようだが、
「何、おめぇが驚いてんだよ。リーダーとしてしっかりやってたんじゃねぇのかよ」
「そうじゃのぉ、アンドリューがいなくても役目を果たしちょったからのぉ」
「ほぉ、ラルさんが俺がいなくても務まるっていうなら、猶更」
「まぁ、最初は独裁気取りだったけど。今はあたしも異論はないですかね」
玲也が実際リーダーとしてふさわしいか――ラルはアンドリューと互角だと言い放てば彼はプライドを傷つけられるどころか、むしろ誇らしげにとらえていた。アグリカが補足として最初はその域に達していなかったと突っ込みを入れていたのも、過去のほほえましい話として挙げていた様子でもあり、
「まぁ、おめぇをリーダーにするのも俺はオールの方があっからよ」
「オール・フォートレスって、ゼルガがいたはずなんだけど」
「そのゼルガさんが電次元に向かっている事からその代わりで」
「そういうこった。まぁフィールドがなくなった分そこまで手を回さねぇとって事よ……」
あくまでアンドリューはオール・フォートレスのリーダーとして、ゼルガの穴を埋める役回りがあった。彼がこうしてドラグーンへ君臨している事も、バグロイヤーが展開したフィールドが破壊、消滅されたからでもあり、その分大気圏外も視野に入れて戦うことが電装マシン戦隊には求められていたのであり、
「その為にまぁ、おめぇの力も借りることになっけどよ」
「俺の力も……まさか」
ただオール・フォートレスの守りを固めるにあたっても、玲也の力を借りたいとアンドリューは肩を叩いた。彼が訪ねる自分の力の意味を玲也は薄々と察していた視線を彼へと向けていた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
次回予告
「七大将軍との戦いのさ中、ゲノムから救援艦隊が送り込まれた。かくして北極を攻略する手筈が整おうとする中で、深海将軍グナートは鋼鉄軍団と共に一大決戦に挑んだ。俺はクロストで電装するものの、グナートはエクスに対し前線で戦う事を許せない事だと断じる。グナートがこうもエクスに執着するのは何故……俺たちはグナートの正体を知らされるが……。次回、ハードウェーザー「復讐のバグポセイドン」にネクスト・マトリクサー・ゴー!」
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