28-4 ロクマスト奮闘! 深海軍団を食い止めろ!!
『碌に戦いもしないなら、いい加減戻ってこい! ワシが買ってでもだ!!』
『で、ですが父上……余がもう一度戻って何に、何になりますか!!』
――時は少しさかのぼる。プレイヤーとしての務めを放棄し、部屋に閉じこもり続けているロディを見かねるように、父ロナンからは連れ戻さんと催促が入る。これもエジプト代表ハードウェーザーとして、ロクマストが初戦で無様な姿を晒して汚名を返上する事もない。それだけに現エジプト大統領となる父ロナン・ゼブラとして、自分の政権へ支障が生じると想定して呼び戻そうとしているのだが、
『貴様が帰ってきたら、ワシが鍛えなおしてやる! フレークが出来るなら貴様にくらい出来る筈だろ!!』
『また父上は余を辱めるつもりですか!? ラーツ兄さんやロット兄さんにも比べられる事はもう!!』
『だから、貴様にチャンスをやったのだ! プレイヤーとして至らないのは誰のせいだ!!』
『それは……』
長兄のラーツは既に政界入りしており、次兄のロットは総合商社のエリートとして働いている。その二人の兄だけでなく、フレークという双子の弟も院への進学が決まっているのである。エリートぞろいの家族に板挟みになっているかのように、ロディの心境は葛藤を深く抱え込んでいた。
『とにかくだ!キエフの一件でハードウェーザーの評判も落ちているんだ! ゼブラの家の人間が恥を上塗りしてからでは遅い!!』
『で、ですが! ハードウェーザーがなければバグロイヤーに勝てる事は……』
ウクライナでの一件から、世間に対してハードウェーザーの悪評が上がりつつある。イギリス代表のようにエジプト代表がやらかしたら、自分の政権の存続すら危ういとの理由から、父はプレイヤーの自分を電装マシン戦隊から買い戻すとの事である。ロディとして、ハードウェーザーの存在がバグロイヤーへ対抗するには必要だと主張したものの、
『ケニアのサンディストがいるではないか! わしが上手く買収すれば済む!!』
『ま、待ってください! それはラグレーやヒロさんが困る事で……』
貴様が他所の代表を心配出来る立場か! 切るぞ!!』
ケニア代表のサンディストを、ロナンはアフリカ大陸の代表として、いわばアフリカの象徴として担ぎ上げる事を目論んでいた。一歩踏み込んだ内情としては、プレイヤーとして腕が立つ面を利用して、万が一不祥事を起こしたならばケニア代表として責任を押し付ける事が出来る為である。一方的に自分の要求を息子に告げて彼は電話を切るが、
『余が、余に力があれば、プレイヤーとしての腕があったならば……兄上やフレーク、そして父上も……』
自分はエリートとして兄二人だけでなく、双子の弟フレークに及ばない。それが故に父からの期待に応えられない事も、兄弟の間で肩身が狭い思いを強いられてきた。
その鬱屈とした境遇から解き放たれる術としてプレイヤーの道に賭けたロディだが、プレイヤーとしての腕が至らないのが現実である。自分の道を閉ざさんとする父にも面と向かって、自分を押し通せない現状に辟易としていた所、個室の扉が突如開き、
『だ、誰だ!? 勝手に戸を開けるなど』
『ごめんなさい、アグリカさんに一応許可を取ったのですが……』
『アグリカが許可を……貴殿は確か』
『そんなに硬くならなくても……って、やらかした後に言っても駄目だよね』
自分の個室を開いた人物はアトラス――丁度彼がドラグーンへ訪れた最後の日の出来事であり、彼を前にロディは少し申し訳なさげに直視する事が出来ないでいた。これもまたキエフの一件が大きく絡んでいるからだとアトラス自身も既に察し、苦しい笑いを浮かべていた所、
『い、いや貴殿だけの責任ではないとは分かっている。クレスローの弟が、そのだな……』
『そう言ってもらったら助かるのかな、クレスローがどう受け止めるかですけど』
『それはだな……とにかく貴殿のせいではないのは確かだろう! ならば貴殿は堂々と胸を張ってだな……』
『確かに出来る事なら僕もそうしたいですけどね……』
すぐさまロディはアトラスの責任ではないと必死に擁護する。セルの事をクレスローがどう捉えていたかでフォローになるかどうかと、アトラスは少し答えを暈していたものの、彼なりに気遣おうとする配慮はされていた。その気遣いを少し有難く思うものの、微かに憂いた表情を見せ、
『や、やはり貴殿はプレイヤーとして再起するまでは、まだ……』
『もう電装マシン戦隊からも除名……追放ですね』
『追放……どういう事だ!? 責任がアトラスにあると押し付けてか!?』
『そうなるのかもですね……否定できない僕も少し悔しいですね』
キエフでの暴走事件の当事者として、世界の諸国へと陳謝する意味合いもありイギリス政府はアトラスの身柄を拘束しようとしていた。政府が暴挙をしでかしているのだとロディが憤怒するものの、アトラスはどうにもならない事かもしれないと諦めの色が顔に出ている。
『それなら余が引き渡された方がどれほど……貴殿より価値がないであろう余が!』
『ロディさんこそ、僕を擁護しているのでしたら自分を卑下しないでくださいよ』
『ど、同情ならいらんぞ! 余がプレイヤーとしてどれだけ無様で、惨めかぐらい、貴殿なら分かる筈だろう!!』
『生きて還ってこれただけでも立派な事ですよ!』
アトラスを庇い立てようとするロディだが、彼の行動の裏には自分が何の価値もない存在と思い込んでいた故もあった。今度はアトラスの激励に耳を傾けようとしない彼だが、生還した事は誇れるのだと強く一喝されて多少怯んだ後に、
『あの時ソラも一緒だったと思いますけど……彼は還ってきませんでしたよ』
『そ、それはそうだが……あの時、ソラは確か』
ロディがプレイヤーとしての至らなさを初陣で露呈させる事となったものの、オランダ代表のソラもまた同じ結果になったともいえる。ただ生死の明暗を分けた遠因をロディが辿っていると、
『ソラは戦闘を放棄した結果ですよ……ロディさんは諦めず踏みとどまったじゃないですか!』
『あ、諦めず……いや、余はあの時無我夢中で、意地を張っていただけだが』
『英雄としての条件は、生存本能の強さ……そういうじゃないすか』
「貴殿にそういわれるとは……」
ロディ曰く、今以上に意地を張っていた故あの時も後には退けない信念で動いていた。その信念で動いたが為、無様な結果を晒した事となるが――例え失態をさらけ出そうとも、生き延びた事が彼には再起する術が残されていると示していた。
『それにこの間まで意地を張ってたんです。僕だって……』
『アトラスが……貴殿のレスリストは狙撃に長けているからその』
『本当矛盾してますよね。それでも目立とうとあの時までは……』
一方アトラスも、かつて自分が目立とうと躍起になっていた過去を触れる。イギリス政府からの重圧を前にして、狙撃による後方での支援に回るレスリストで無理を押して派手に戦い続けた。それがチームワークを乱す一因になっていようとも、
『それが間違っていると教えられて目が覚めました。ベルさんにですね……』
『ベル……確かニュージーランド代表の』
『立派な人でした。逆境を物ともせず、日向に日陰に戦ってまして』
ロディからすれば直接の面識がないが、アトラスからすれば自分のプレイヤーとしての在り方を示した人物でもあった――片腕を失うハンデを乗り越えて彼女は最後まで必死に戦った。周囲に翻弄されることなく、自分の信念を最後まで貫いた。彼女自身義手でのハンデで思うように成果を上げられない葛藤を抱えつつも、戦いが自分一人だけで挑むものではないとわかって動いていた。
『華やかに目立とうとする事より、生き抜いて戦い抜く事の方が大事……そうなんですよね』
『そうなんです……貴殿が余に聞かれてもだな』
『ごめんなさい……本当、僕ももう一度生きてたら、生きるチャンスがあったら……駄目ですよね、僕が一応先輩ですのに』
『……』
アトラスが首を上げながら、自然と涙の粒を地面へ零しつつあった。思わずロディが黙ってしまった事は彼がキエフの一件から、張本人として極刑が下される、自分がイギリス代表として切り捨てられようとする恐怖へ直面していたのだ。思わずかける言葉もないロディだったが、
『でも僕は後悔してないです、プレイヤーとして、イギリス代表としての道を選んだ事を』
『さ、先ほどまで貴殿が震えていたではないか、それでも……』
『そうだ。アグリカさんから聞きました。ロディさんには二人の兄と双子の弟が』
『……急にその話をしてくるか。あまり耳にしたくないが』
今度はアトラスから自分の身内の事情を尋ねられる。今丁度耳にしたくもない話だった故、苦み走った表情へ変わるものの、
『戦いを生き延びたロディさんが考えるのも、みみっちい話です。たとえどんなにかっこ悪くても生きて戦い抜いたら勝ちです』
『余が勝つ……余は力も腕もないのだぞ?』
『だから言ったじゃないですか、ソラと違って生存本能が強いんですから』
アトラスからしてもソラが自業自得の末路を迎えた人物であると辛辣だが、同時にロディには生き延びたがゆえにプレイヤーとしての可能性は潰えていないのだと激励をかわし、
「もし僕に万が一の事があったら、立ち上がってくれないですか……僕より長生きしそうですし」
「左様か……って貴殿は何を言っている、縁起が悪いではないか!」
「ごめんなさい……いや、もし汚名返上の機会があればね、その時は、その時こそ……」
「そうだ、余はまだ貴殿がここで終わるとは思わないぞ! 余が言えたことではないが……」
――ふとあの時、アトラスが自分に後を託そうとしていたのではとの気がした。アトラスとして自分を激励しつつも、不本意な死が近づこうとしている恐怖と戦っていたのかもしれない。だから汚名返上となる任務へと彼は全てを賭けて飛び立った。それで二度と舞い戻る事がなくとも、
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「何をぼっとしてるんだ! 来るぞ!!」
「……わかっておる!!』
アイリッシュ海へとアタリストが身を潜め、ロクマストは退いていく彼女を守らんとする盾として後方を固める。だが既に自分たちをめがけて数々の弾頭が放たれていたのである。
腕を潰されて戦闘能力を失いつつあるアタリストは、海中に身をひそめて天空軍団の攻撃から逃れていたが――胸部が中破した状況で被弾でもすれば機体が水圧に圧し負ける恐れがある。その為にも繰り出される弾丸はロクマストが受け止めなければならなかった。両腕からのリーンフォース・フンドーで弾頭をはじき返すなり、貫くなりして迎撃を続けており、
「ったく、このまま彼奴らを逃がせばトンズラできるのによ」
「体がなまっていたから丁度良い。バグロイドの雑魚が良い肩慣らしになるわ……!」
アイリッシュ海へと迎え撃ったのは天空軍団だけではなかった。丸みを帯びた群青色の機体が迫りつつあるが――深海軍団の主力となる量産型である。潜水服のように誇大化した上半身に対し、下半身に設けられた無限軌道とスクリューで、水中を縦横無尽に駆け巡っていた。
『ロディはん、ほんまかめへんか!? 無理したらあきまへんで!!』
「無茶をしていた貴殿が言えた事か! しかしこうもチョコマカとされるとだな……」
「確かに腕が使えないもんなー……攻撃は最大の防御だってのにさ」
「それも分かっている! このままではじり貧な事も……」
バグダイバーがロクマストより小柄であった傍ら、水中での機動力は上回ってもいた。立て続けに撃ちだされていく魚雷を迎え撃つ事で背一杯の様子に、ロディの苛立ちが募りつつある。必死であると共に集中力が失われようとしていくパートナーをアグリカが目にすれば、
「あいつら、チマチマ攻撃してきてるんだけど……何でだと思う?」
「い、今話しかけるでない! 気が散る事ぐらい見れば分かるだろう!!」
「何で近づいてこないかだ! あんなにデカイ爪があるのにさ!!」
「あ、あの爪でか……確かに立派な物だが、あれで余が敗れるとでも」
「そうだよ、そういうことだよ!」
魚雷を落としていく事に全神経を集中させていたロディだったものの、アグリカは上手く相手の穴を気づかせた――バグダイバーが小柄である分、堅牢な装甲を誇るロクマストに白兵戦では分が悪いのである。パートナーが多少余裕を取り戻した事へ、彼女が安心を覚えると、
「レールガンをぶっ放してやれ! よく狙えだけど、外れても構わねぇ!!」
「どうも矛盾しているようだが……なるがままだ!!」
『何……あっ!!』
アグリカの言うままに、リーンフォース・レールガンが火を噴いた――彼女が引導を渡す一撃とは限らないと捉えていたが、それは威嚇の意味合いがあっての行動だ。発砲した直後にロクマストの体が背を向けると共に、ドリルが備えられた尾でバグダイバーを振り払った。
先端のドリルが獲物を抉る事が出来ず、霞めようとも尾に1機が引っかかる様に直撃した手ごたえはあった。薙ぎ払われたバグダイバーが後方からのレールガンを浴びせられ、
「そうか、すばしっこい輩だろうとハッタリを利かせばだな」
「まぁ、ハッタリも実が伴えば違ってくるからよ!」
「なら、メーザー・サイクロンも同じ術で使えば……」
1機を仕留めた事でロディは攻撃を最大の防御として転用する術を見出したようであった。ただレールガンを使う事は既に手を読まれていると見たのだろう。メーザー・サイクロンを展開する為、頭部を含む胴体を前方へと倒し、射出口となるワニの口を前方へ向けた瞬間だった。
『アクエリ・ナッター……直ぐに退きなさい』
『はっ、キャミイ様……』
『こうはしたくないですが……やむを得ないですね』
キャミィという後方で深海軍団を指揮する者に従い、バグダイバーがアクエリ・ナッターを発動させた。まるで捨て鉢のように彼らがロクマスト目掛けて突撃を仕掛けるものの――彼らは上半身をパージする形で質量弾をぶちかます戦法に出たのであった。
「面白い、余と同じハッタリで勝負に出るなら……!?」
アクエリ・ナッターを迎え撃たんと、メーザー・サイクロンを展開させた瞬間であった。至近距離まで迫ったナッターが立て続けに爆発を引き起こす、後方のバグロイドからのレールガンによって、ナッターが射抜く事で、堅牢なロクマストの装甲を砕こうとする術であり、
「ど、どうにか直撃は防いだが……うあっ!!」
以前もメーザー・サイクロンの射出口を狙われた前例があったからか、咄嗟に射出口を頭上へと展開する形で直撃だけは免れた。ロディとして機転を利かせたといえるが――相手はまたその一枚上手を行くかのように、今度は急速に間合いを詰める。さらに前方へと位置する胸部目掛けて両腕を突き出した瞬間に、閃光をロクマストへと滅多打ちにしていく。瞬時にセーフシャッターが展開するものの、コクピットへ小さいながらも爆発が巻き起こり、ロディの体が後方へと吹き飛ばされる。
「お、おい……しっかりしろ!」
『だ、誰がくたばるか! このくらいの怪我などどうという事は……ぐっ!』
「とにかく、こっちにこい! あたしもフォローする!!」
爆発によって生じた破片は、ロディの左肩へと突き刺さっていたが――全身を叩きつけられようとも、左肩を痛めようともコントローラーを手放してはいなかった。その気骨ある姿勢へと思わずアグリカの声は弾む。自分の隣へと彼を引き込みながら、炎上する個所目掛けて、凝固剤を噴きつける事で被害を最小限に抑え、体勢を立て直さんとする。目の前のバグロイドがちょうど間合いを取っていた事にも救われたともいえる。
『データにない機体だけど……リボルバーをここまで使うなんてね』
ロクマストを追い込んだバグロイドこそ、深海軍団のキャミィが駆るワンオフタイプ。六角形状の甲羅を模した重装甲ながら、内蔵されたスクリューにより俊敏な機動性も誇るバグテテュスとの名を持つ。
装甲から展開された両腕はマニュピレーターの代わりに、ビームガトリング砲そのものとなり、水中でその威力を発揮する為にロクマストへ銃口を突き付けた状態で発砲せざるを得なかった。その為に、ロクマストの胸部を破損させたものの、両腕のデリトロス・ガトリングは使い物にならなかった。キャミィとして予想より手こずった事が不服そうだったものの、
『まぁいいや。アタリストの方をやっつけた方が後々有利だしね』
『ま、待て……余をやり過ごせると思ったか!!』
『……データにない雑魚のくせに!!』
キャミィとして、自分のデータにはないロクマストより、アタリストを仕留める方が戦況を有利に傾かせる事が出来ると見た。その為バグテテュスは素通りしていくが、ロディがそれを許すつもりはなかった。自分のプライドに関わる事もあるが、前方に守るべき相手が存在する故である。両腕からのリーンフォース・フンドーを展開することで、どうにかバグテテュスの動きを封じ込めており、
『ロディはん、これ以上無理したらあかん! ウチの為に命賭けんでもええんや!!』
「おいおい、あんたが勝手に出てきたってのに」
「……どのみち貴殿は勝手に出たのでは。余も貴殿の事を言えんが……ぐっ!」
窮地に立たされてもなお、ロクマストはアタリストを逃がさんとした。バグテテュスを何としても足止めさせていたが、彼の甲羅からはミサイルの雨が降り注いでいく。
レールガンを炸裂させて反撃に出るものの、二発被弾しようともびくともする気配はない。それどころか両手がふさがった状態でミサイルを撃ち落とせる間もなく、砲身が破壊されてしまい、
『あぁそうだ思い出した。確かインド洋で撃墜したとかだったような……』
「それはエンゲストであって余ではない! 余はここでくたばる事はないわ!!」
『だったら、私がケリをつけてあげるよ。アタリストの方上手く相手しといて?』
『はっ……今のアタリストでしたら問題ないですが……』
キャミィがロクマストの事を思い出したが、彼女からすればエンゲストと同等、すなわち取るに足らない存在と言わんばかりの態度だった。そしてアクエリ・ナッターによる質量弾を放った後にバグダイバーは戦線から退いていた筈だが――1機だけ控えさせていた。自分に代わってアタリストへと向かわせた。量産型の1機ながら彼女は手負いのアタリストなら互角に渡り合えると言いたげだが、
『……フィンファイヤーを使う事は出来ます。ですがここでは相打ちが良い所です』
『少しでも時間稼げたら上出来なんか……かまへん!』
逃れるアタリストを他所に、1機のバグダイバーが追撃を仕掛ける。本来なら簡単に手を捻る事の出来る相手の筈だが、水中ではビーム兵器を駆使する事が出来ず、パンチャーが設けられたペルナス・シーカーは既にロストしている。
フィンファイヤーが先端からのビームを放つ事で攻撃を仕掛ける――それが故に水中では囮として使う事が関の山でもある。それでも繰り出したミサイル目掛けて、フィンファイヤーを展開させる。弾道の軌道を阻害する事により、魚雷を岩壁や海底に着弾させ不発に終わらせようとしていたのだ。
「す、少しでもこやつを引き込むことさえできれば……うぐっ!」
「大丈夫か! 傷が痛むなら代わってやるぞ!!」
「これは余だけの戦ではない、そうだろうアトラス!!」
「お前……おい、なんだこれは」
そして、バグテテュスからのミサイルの雨に晒されようともロクマストは踏みとどまり続けた。もしフンドーで引き込むことが出来れば、起死回生になり得る。ロディとしてはこの状況を打破するため、既にいないアトラスの姿を脳裏に浮かべ念じるのであった。
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