14-6 慟哭、0G直下のベル
「僕をぶったのも許せないけど、スフィンストに僕を拉致してどうするつもりなのかな!」
「そりゃ、メインプレイヤーがいなきゃ動かせねぇんだよ。分かってるだろぉ!?」
「メインプレイヤー……そうか、そういうことだね」
――スフィンストのコクピットにて。手足を拘束されていたシャルに対し、ビトロはプレイヤーとして強要を課した。彼がイージータイプのスフィンスト思う通りに動かそうとも、メインプレイヤーへ登録されたプレイヤーの認証が必要となる。その為に自分が彼に拉致されたのだと薄々察していた所、
「早くしろ! 手始めにこいつでも始末しちまおうかなぁ!」
「……分かってるよ!」
シャルに考える時間は与えられていなかった。プレイヤーとしての自分に巻き込まれる形で才人まで拉致されてしまっていたのだから。彼は気を喪ったまま無造作に寝転んでいる状況であり、シャルと違いおまけと見なされていたからか、ほったかされた状況であり、ホルスターの銃を常に抜き出せる様子からして、いつでも手にかける事が出来る容易い存在として扱われていた。
実際当の本人が気を失ったまま目を覚ます気配もない――自分と違って呑気で羨ましいと内心思いつつも、彼の身の危機にも変える事が出来ないと首を縦に振り、
「ほどかないと動かせないから!」
「しゃあねぇなぁ……認証したら一歩も動くんじゃ……」
「ぼ、僕を動かすのは……だ、誰で」
プレイヤーとして初期認証を行うにはコントローラーでの操縦が必要となる。シャルにそのようにせがまれた事もあり、渋々ビトロが固く両手首を結んだロープを解きつつあった。その折にイチの様子に異変が生じつつあった。うなされ続けていた彼が本来の自我を蘇らせようとしつつあった所、
「なんだよ! 俺のコントロールに置いたってぇのによ!!」
「だ、誰ですか……僕のプレイヤーじゃ……」
(まだ完璧に操られてない……だったら)
)
「黙って俺の言う事聞いてりゃいいのに……おわっ!」
ビトロによってイチは、自分の支配下へとマインドコントロールの処置が施されていた。その筈だったが、彼が支配下から脱する事が予想以上に速い。正気を取り戻しつつある原因がビトロには思い当たらず、首をかしげながら苛立ちを募らせる。
ただ、シャルとしてはまだイチがバグロイヤーの手先に堕ちていないのではとの憶測を生じさせつつあった。頭をもたげる自分の一手を彼へ知らせることなく、徐々にほどけつつある両手首のロープに視線を集中させていた所、
「おめぇが言う事従わねぇと、俺が困るってぇのに……おわっ!」
「才人っち……でぇぇい!」
イチが万が一正気を取り戻せば、逆に自分が不利に追い込まれてしまう――渋々ながらビトロが再度彼にマインドコントロールをかけようと持ち場を離れた瞬間だった。彼の元へあがろうとした途中足元にノーマークの人物が寝返りを打つよう横転していく事で、逆にビトロを躓かせていた。
シャルが驚きながら示す通り、才人が無意識のまま起こした行動が事態を一転させようとしていた。彼女がすかさず解きかかったロープを両手に力を込めて引きちぎる。プレイヤースーツ時に倍増される身体能力にかけ、力ずくでとった行動だが、
「おい、大人しくしねぇとなぁ……!?」
「こういう事になるんだよね!」
ロープを引きちぎる音から思わずビトロが振り向いた瞬間、シャルはすかさず彼の胸元をめがけてポリスターを放つ。その途端に、すぐさまビトロの姿がスフィンストから消え失せており、
「んにゃゃ……ここは一体……」
「ありがと、才人っち! すぐ返してあげるから……」
「あれ、何かシャルちゃんに似てるような……ここって何かロボットのコクピットとかなら……」
ポリスターを駆使して、スフィンストからビトロを追い出した。これによって自分たちの身の危険は去ったとして、すぐさま彼をスフィンストのコクピットから逃がさなければならなかった。それと別に彼が意識を取り戻している事がまた別のアクシデントを誘発させようともしていたが、
「……って! 僕の事がばれたとかならまたややこしいし!)
『シャルちゃん! 大丈夫!?』
「ベル! 来てくれたのは助かるけど、ちょっと待ってて!」
才人に正体がばれる危機も迫っていた時に、スフィンストの前方に新たなハードウェーザーが電装された――エメラルドグリーンのハードウェーザーとなればボックストの他ならない。人質になっている自分たちを救出せんと現れた事は渡りに船であり、
「そうだ、さっきやっぱりシャルちゃんって……」
「悪いけどベル、転送するから! 直ぐに大人しくさせて!!」
才人の意識が覚醒しようとする後、シャルは彼にめがけてポリスターを狙い撃ち、ボックストのコクピットに向けて転送させた。すぐさま彼がハードウェーザーのコクピット間を転移すると、
「あら、何か場所が違う気がするけど、もしかしてハードウェーザーの……ぐふっ」
「手加減はしたが……許してくれ」
その後、才人は目が覚める直前にジャレコフの手でまた失神させられた。昏睡状態の彼を担ぎ上げ、内蔵された緊急救命用のカプセルに彼の体をそっと仰向けにさせて、ロックをかける。彼として相当な手加減をしたとの事だが、やはり電装マシン戦隊と関係ない民間人へ、機密保持の為に当身を浴びせた事に、罪悪感で微かに表情がゆがむ。
「な、何で僕が電装して……バグロイヤーともう……」
「やっぱり……僕はシャル! シャルロット・カードリッジだよ!!」
「シャ、シャルさん……僕のプレイヤーですか……」
才人を避難させたと共に、イチの様子が徐々に変わりつつあった。ビトロの支配下から逃れつつあり、シャルが自分のプレイヤーであることを認識していた。この様子から彼を救い出せる可能性はあると見出したものの、
「で、でも同じ地球人、地球人なら……うああぁっ!!」
「落ち着いてイチ! お姉ちゃんが待ってるんだから!」
「お、お姉……姉さんがなんで……あぁぁぁっ!」
かといってイチが完全に支配下から脱した状況ではない。彼の脳裏に植え付けられた別の感情が本来の自我と摩擦を起こしつつあり、激しい頭痛にあえいでいる様子からスフィンストを制御できる様子ではなかった。
シャルとしてポリスターに目をやると、ビトロと才人を転移させた為にバッテリーが残り僅かしかない為、一人分を転移させる事が出来ない。少し考えた後にイチの元へと回り、彼の代わりに胸部ハッチのロックを外す。
「ベル! スフィンストは無理みたいだから、ハッチの方開けてくれない!?」
「私なら何とか! 二人とも余裕あるから!」
「なら頼むよ! ちょっと僕も準備するから!!」
ボックストが密接しつつ、左腕と両足のメテオ・アンカーでスフィンストの体を固定させつつ、右手は胸部ハッチへと手をかける。
ベルがポリスターで彼女を転移させる為には、双方を遮る障害物を取り除かなければならない。その為にコクピットの胸部ハッチを無重力の宇宙空間だろうとも開く必要が生じていた。
「ベル、くれぐれも無理だけは……今の時点で君は大分無理をしている」
「やっぱジャレ君には分かってたんだ。こうも上手く動いているのが嘘みたいだしね」
無重力の宇宙に直接我が身を晒す必要性――プレイヤースーツが簡易的な宇宙服としての役割を果たすとしても、コクピットから放り出される事を阻止する為、ベルは展開された命綱のワイヤーをベルトに連結させ、両足のブーツを強固に固定する為、足場に内蔵された電磁石コイルを展開させる。
パートナーが決死行に及んでいる様子に対し、ジャレコフは無理を懸念して声をかける。今までの殆どがサブプレイヤーによってボックストが動かされていた事もあっての事だが、今のボックストはベルの手で難なく動かされている。最も当の本人が義手でのコントローラー捌きでは操縦をトレースしきれておらず、何らかの力で自分自身が思い描くよう動かされているのだと察していた。
「アンドリューさんや玲君に助けられてばっかで、シャルちゃんにも……私たちだけで電装する事も許されてないけど」
「……だから、これだけは君の手で果たしたいつもりか」
「シンヤさんが手引きしてくれたお陰もあるしね」
ゲンブに身を置いていた彼女らニュージーランド代表だが、シンヤの手引きによって、ボックストの電装は成し遂げられた。それと別に彼らが余所者だけでなく、サブプレイヤーが不在の場合、義手のベルに操縦でハンデを課してしまう為、誰かの補助がなければ電装も許されていない――ジャレコフが知ってしまった秘密として、むしろ彼女だけではワイズナー現象を発生させて、ボックストが動かされる。それが身の危険に及ぶ。だからこそ彼女に自重を促し続けていたが、
「へへへ、もしかして私、すごい嫌な子かも。シャルちゃん達が頑張っているのが嬉しい筈なのに……」
「ベル、準備できたよ! 3つ数えたら直ぐ開けて!」
「うん! シャルちゃんから先に送るからね!!」
先輩でもあり、姉代わりでもあるように、シャルや玲也の成長を見守っていく立場の筈だと分かっていた。その筈なのに一人のプレイヤーとして現状に甘んじる事を良しとしない。そのようなプライドを捨てきれない様子を自虐していた所、シャルからの準備が整った報せが届いた。この言葉を受けて直ぐ、本来の任務を果たそうと気持ちを切り替えていき、
「待ってて、シャルちゃん……直ぐに助けるから!」
「……ベル、前だ!!」
「……えっ!?」
2機が互いにコクピットを開閉し、ベルがシャルとイチの姿を捕捉した瞬間だった――無重力の脅威への備えを整えていたものの、バグロイヤーの攻撃に対してハッチを解放した状態はあまりにも無防備な状態と言えた。
ポリスターをシャル目掛けて火を噴かせたと共に、コクピットの内部目掛けて巨大な爪は殴り込むように突入をしかけた。その直後にシャルが転移された時は既にベルの姿がコクピットには見当たらず、
「危ない!」
自分たちの頭上から、深碧の機体が砲撃を繰り出していった。咄嗟にジャレコフがハッチを閉じ、どうにかコクピット内部そのものへの被害を最小限に食い止める。その代償にセーフ・シャッターが下ろされる損傷を受けたが、
「……なんてことだ」
「ね、ねぇ、ベルは!? ベルどこ行ったの!?」
転送されたばかりのシャルには、まだこの状況を理解する事が出来なかった。ジャレコフは一瞬にして最悪の事態に追い込まれたと言わんばかりの表情を作ってしまい、ただ深碧の機体を見つめる事しかできなかった。
相手はボックストを相手にせず、サブアームからのクローを操っていく。片方はベルを保持したままで、もう片方はスフィンストへと突入した後に、イチが掴まれた状態でハードウェーザーから取り除かれていった。彼がバグロイヤーとして有用な存在故、直ぐにバグアッパーへと彼の身柄は預けられ戦域から離脱していった。
『俺を宇宙に追い出すとかとんでもねぇことやりやがって……ぶっ殺してぇと思ったんだけどなぁ!!』
「……ビトロ! やはりビトロだな!?」
「ほぉ、その声はジャレじゃねぇか! 会いたかったぜぇ?」
シャルの手によってスフィンストから追い出されたビトロだったものの、彼はテレポート能力を備えたハドロイドでもあった。その為に今度は自分がハドロイドとして、イリーガストを電装させ、クロー・シーカーを放ったのだが、
『おい、何敵味方でなれ合ってるんだよ!?』
『まぁ、ちょっとくらい良いだろ? 地獄極楽一緒だったしよぉ!』
プレイヤーとして乗り込んでいるアルファとして、かつての同僚となるビトロとジャレコフの関係を快く思わず苦言する。自分たちの関係に水を注すなとビトロが触れるものの、
『お前に、こういう女は似合わねぇからさぁ! 俺が片づけてやるぜぇ?』
「う、うぅあぁ……ああああぅ!!」
イチと違って、ベルは価値がないとビトロは見なした。厳密にいえばその場で始末するのではなく、まるでジャレコフ達の目の前で嬲り殺しにせんと、緩やかにクロー・シーカーのマニュピレーターに力を入れつつあった。プレイヤースーツが簡易的な宇宙服なれど、ハードウェーザーの力を前に生身で耐え切れるはずはない。ベルが苦痛にあえぐ叫びが響き渡ると、
「ベル、ベル……ねぇ、どうしたらいいの!? ねぇ、ねぇ!?」
「……自分は何もできないのか、このまま見ていろと!」
イリーガストがデモニカ・ブラスターを突き付けてボックストを黙らせていたが、ベルが不在との時点で誰の手にもボックストを動かせる状況ではない。胸部装甲が破損している関係で電次元ジャンプも封じられており、万事休すに追い込まれようとしていた。思わずコントローラーを捨ててシャルが泣きついているものの、ジャレコフもただ何もできない現状に歯ぎしりを抑えきれない。
「ジャ、ジャレ君……ダメ、ダメだよ……」
『どうだ、俺もお前も結局死ぬか生きるかのギリギリじゃなきゃなぁ! 一人でぬるま湯につかってるなよぉ!!』
ベルに対し、マニュピレーターが彼女の体を握りつぶそうと徐々に力を入れており、エネルギーフィールドを緩やかに生成させる事で熱も帯びている。彼女をじわじわと追い込んでいく様子は、ジャレコフを苦悶に追い込む事は言うまでもない。にもかかわらず、或いはそれゆえかビトロはほくそ笑む様子が止まらないのだが、
『いい加減に早く殺れ! プレイヤーさえ死ねばハードウェーザーでもな!!』
『まぁまぁ、今のアルファさんは少しでも総司令としての格が必要だと思いましてなぁ』
『……何を言いたい!』
『お偉いさんはなりゃあいいもんじゃないってことですよ。焦るあまり逆に俺に嘗められてはいけませんよってねぇ」
アルファは二番隊の隊長もとい、前線部隊において実質トップとなったにも関わらず、彼が前線へと踏み出ている。そんな彼の焦りをビトロは見透かしているようで、上官に該当する彼に対しても減らず口を叩く。実際アルファは少し冷静さを欠いているのか反論する様子が少し苦しい。
『ジャレ、大人しく投降するなら、こいつの命は助けてやってもなぁ!』
「ジャレ君ダメぇ! 前みたいに戻らないで……!!」
――ビトロの勧告は、死に際に追い込まれるベルの心に火をともす結果となった。血に塗れた過去に戻ることは、今の自分を否定する事だと強く叫ぶと共に、クローに捕われようとも手放す事なかったコントローラーが反応を示しており、
『うおっ!』
「……な、何!? 勝手に動いてるけど!?」
「呼ばれている……自分は今導かれているなら、ベル!?」
一人でに動くボックストへ、半信半疑ながらジャレコフが制御に入ると共に、メテオ・レールガンがクロー・シーカーの基部をめがけて炸裂していった。この攻撃と共にクローが締め付ける力が抜けてベルが奇跡的にボックストの元目掛けて投げ出される。さらにボックストもまた彼女の元へ向かいつつあった。この未知なる力を今は二人とも信じる事しかなかったが、
『……俺より女が大事かぁジャレ!!』
『だからとっとと殺ればなぁ!!』
「あっ……!!」
「ベル!!」
シャルとジャレコフが言葉を喪う――自分に同調しようとしない事へいら立つビトロへしびれを切らせるように、アルファがデリトロス・リボルバーを放った。胸部から炸裂する弾丸は目の前の彼女を蜂の巣にする。遂に公開処刑が行われた時、
『てめぇぇぇぇぇっ!!』
イリーガストの背後へ急接近すると共に、足裏の万力を射出すると共に強烈な回し蹴りが見舞った。グレーテスト・バイスで彼の首を豪快に刎ねた漆黒のハードウェーザーは――イーテスト他ならなかった。
『ベルに、ベルに何をしたお前はぁぁぁぁぁっ!!』
『血祭りだ! てめぇを血祭りにしても気が済まないくらいだがなぁ!!』
『ひっ……!!』
イリーガストがベルを始末する事に関心を寄せていた故に、イーテストの猛攻を一方的に受けるものの、既に手遅れであった状況を覆す事は出来ない。アンドリューだけでなく、リタもまるで喉が張り裂けるような叫びをあげており、勢いづいてバックパックからのクロス・ベールを二刀流で胸部目掛けて突き刺していく。自分の左右に銀色の刃だけでなく、赤い閃光がコクピットを焼き切っていく様子を前に、アルファは一転して委縮した状態であり、
『俺は、あの女を殺した! これが手柄になるのによ!!』
『わ、悪いけど俺は一足お先だぜぇ! まだ死ねねぇからよっ!!』
『待て、二番隊の俺を、トップの俺を見捨てるな!!』
この状況ながらアルファは緊急脱出用のハッチへ急いでいたものの、ビトロは自分自身をテレポートさせて即座に戦域からの離脱を図る。無論ビトロがアルファを立てるよう忠節など存在しておらず、我先に逃げる彼へアルファが叫ぶところ、
『豆鉄砲で止めれるかぁ!? 止められるかだぁ!!』
『グレーテスト・マグナム、バッド・ラック!!』
『や、やめろぉぉぉぉっっ!!』
デリトロス・リボルバーで最後の抵抗をイリーガストが続けていたものの、今のイーテストの勢いを止める事は無理に等しい。両手にグレーテスト・マグナムを手にしてコクピットめがけ同時に撃ち込んだと共に、グレーテスト・バイスで豪快に蹴飛ばしたイリーガストが粉々に砕け散って炎をあげた。
『この馬鹿野郎! あの世で何度も殺されちまえ! 何度も蜂の巣になって、苦しんで気が狂えー!!』
『シャルもジャレも無事か! それとな……』
リタがひたすらイリーガストへ向けて、憎むことも恨むことも自分たちからすれば足りないくらいだと憤怒の声をただ上げ続けている。アンドリューが辛うじて理性を保ちつつボックストの二人を案じて振り向くやいなや、
『なんで、なんでベルが……ねぇ、どうしてベルがこんなことになっちゃったの!?』
『……あの力を信じた自分が馬鹿だったのか、いや』
「……」
既に動くことがないボックストの両手には、同じく二度と動く事のない彼女の体が横たわっていた。シャルは直視する事をも出来ず蹲って何度もパネルを拳で叩き続けていた。アンドリューやリタですら凄惨すぎる今の彼女を前に震えずにはいられなかったが、ジャレコフはただ沈着した様子で、彼女を直視し続けていた――既にその顔に生気も覇気も消えうせていたようだが、
『……すまねぇ、本当にすまねぇ』
『あたいらが間に合わなったばかりになー……』
「僕がベルに余計な気を遣ったから! 僕と才人っちが捕まってなかったら……!!」
「……違う!」
イーテストの到着が間に合わなかった為か、シャルと才人がイチにつかまった為か――この犠牲の原因が自分たちにあると3人が主張していた中で、ジャレコフは声を張り上げて彼らの責任問題ではないと否定した。ここにきて彼の体が震えだし、顔をあげるが、
「……自分はやはり救われるべきではなかった。それどころかベルまで引き込んだのは自分が存在した為だ!!」
目じりに涙をためながら、ジャレコフはひたすらに吼えた――血に塗れた過去から救済される事は夢物語であると。その夢を果たす為には責任を自ら取らなければならなかったと……
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
次回予告
「ベルさんは自分のせいで死んだ――ジャレコフさんはバグロイヤーへ亡命してまで自分で責任を取る事を選んだ。かつての仲間だったビトロと刺し違え、イチを救い出すことが自分の出来る責任の取り方だとの事だが……やめてくれ、ジャレコフさん! 俺は止めたかったが、ベルさんとの思い出が潰えたジャレコフさんを俺が止める資格はあるのか! 次回、ハードウェーザー「愛!それは儚く切なく」にブレスト・マトリクサー・ゴー!」
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