11-5 遂に出た! 憎しみ捨てたコンバージョン!!

『ゼルガ総司令の読み通りなら、ドラグーンのハードウェーザーは既に空、左舷にも損傷を既に与えているなら無駄には出来ん!!』


 ゼルガからの通信を受けた上で、オール・フォートレスを任されたメガージは総攻撃の姿勢を示す――リキャストがイーテストを引き寄せているだけでなく、電装した直後にドラグーンの左舷へ強烈な一撃を浴びせた事で既に準備は整っていた。これも電次元ソニックを二丁連結させると共に、出力と射程を向上させたロングライフルモードによる砲撃が効果を出していたともいえる。


『メローナ、間合いを詰めていけば我々が勝つ』

『やはり図体が大きいですから、損傷を避ける事は難しいですね……』

『あくまで撃沈ではなく、どれだけ揺さぶれるか……補給の目途も立たないとなればな』


 ただ、現在のバグロイヤーが電装マシン戦隊をに勝利する事は容易ではない――ドラグーンを撃沈させる事も現実味があるか怪しいとメガージも既に把握していた。

補給の目途が立たない状況にて、3隻のフォートレスを釘付けにせんと可能な限りの兵力を動員して、三方で相手を釘付けにする必要がある。そしてそれだけでは単なる消耗戦になりかねないからこそ、


『ゼルガ総司令はその為に、私たちにその機を与えてくれた……我々もそうでもしなければ先はない! ナナ、シスカぬかるな!!』

『ベリーもパインも分かってるわね! 無茶かもしれないけど、無謀な事だけはしないでね!!』


 電装マシン戦隊の中心として君臨するドラグーンに集中攻撃を加える――戦闘能力を喪失させるまでに追い込まなければ、電装マシン戦隊を威嚇する事も出来ない。その為にリキャストがイーテストをおびき寄せ、ドラグーンを攻め込む隙を作ってもいた。自分たちもまた同じ覚悟を決める必要があると、両舷のキリン・レールガンとキリン・ランチャーを展開してドラグーン目掛けて攻めかかる。彼に追随するフルーティー2機に向けて、ミカも檄を飛ばしていた。


「だめです! 左舷の出力、何とかなりませんか!」

「35%が限界です!ビームが……!!」

「ロメロ君は、左舷のチェーンソーを展開するんだ! 思いっきりな!!」

「了解じゃん!」


 ドラグーンもまたレールガンを放ちつつ、弾幕を張って攻防の構えで応戦する。ただ艦の火力としてオール・フォートレスに分がある他、電次元ソニックによる被弾で左舷の出力が上がり切らない問題とも直面していた。

 咄嗟にエスニックは左翼のワイバーン・チェンソーだけを展開させる事を利用して、半ば強引に艦の軸を右へと寄せて回避運動を取る――直撃は免れたが、左翼として展開したチェーンソーの翼への被弾は免れなかった。


「きゃあぁぁぁっ……,」

「なんじゃ! ラディ君が見つけてもいないんじゃぞ!?」

「2機、エネルギー反応を確認……そんな!?」


 反撃に転じようとした所、予測しない方向からドラグーンへと銃弾がさく裂する。ブレーンの言動からして瞬時に懐へ入り込むのはハードウェーザーでなければ不可能に近いとの事であり、エルは直前まで記録されていた分布データを目にしながら分析していたのだが、


『さすがゼルガ様。こうゼット・ミラージュを使われるとはね』

『そーゆーこと! 今のうちにドラグーンを叩かないとね!!』

『ちょっとベリー! 深追いは危険だよ!!』


 ドラグーンへ肉薄するように攻撃を畳みかけるのはフルーティー2機――パインとベリーがゼルガを称賛するが、リキャストは事前にミラージュ・シーカーで隕石のダミーを生成しており、そのダミーを隠れ蓑にして気づかれる事なく接近していたのである。

 パイン機が甲板めがけてトゥインクル・バズーカで遠方からダメージを与えていく。しかしベリー機がフローラ・シュナイダーを取り出し、艦首へと接近しつつあった。パインの制止もあまり効果がないのだが、振り下ろすシュナイダーに別方向から力が加わり、


「ちょ、ちょっと待って! 聞いてないのに!?」

『貴様らに堕とされてたまるか……!!』


 単身で艦を護衛するスパイ・シーズ――ラディが鬼気迫る様子でローカライ・クローを展開してベリー機を怯ませていった。口ではパッション隊の子供に後れを取らないと主張するラディだが、オールからの砲撃に晒されている状況であり、トム、ルリーをこちらの戦域に回さなければ不利と見なしていた。


「アンドリューもがきっちょもやべぇかー」

「僕は戦えるんだから! ねぇお願いだから玲也君を助けてよ!!」


 アラート・ルームにてリタ、シャル、ウィンの3人が待機していた。リタはインターバルが完了していない為出ようにも出られない状況であったが、シャルとウィンの事情は異なる。それぞれが窮地に追いやられていく中で、今立ち上がれる可能性が残されているのだとシャルがウィンに出撃を促しているものの、


「けれども、私には……」

「まだ、そんな事にこだわってるの!?」

「そ、そんな事だと!? そなたに何が……」


 踏ん切りがつかないウィンだが、彼女の葛藤に納得できる状況はではない。シャルが思わず“そんな事”と呼んでしまえば、ウィンもまた彼女の呈した苦言を受け入れるだけの心の余裕はなかった。


「だってそうじゃん!! もし玲也君が……ううん、みんな死んじゃったら、僕はウィンを恨むよ!!」

「そ、そなたに恨まれようとも私は構わん! ポーの仇を討つことが出来ればだな!!」

「誰かのためにみんなを蹴落として、見殺しにしていいの!? ポーちゃんの好きなお姉ちゃんってそうだったの……!?」


 ウィンは仇を討てれば誰に恨まれようが構わない姿勢だったが、一途さゆえに視野の狭さを、物事を俯瞰してみる事が出来ない余裕を露呈させている。そのようなウィンの態度へ、シャルも思わず恨むと口にしながらも涙をポロポロと目元から流し続けていた。今の自分をポーが喜ぶかとの言葉に迷いがあるだけでなく、一緒に今戦ってほしいと頼む彼女の泣き顔を直視する事が彼女にはできなかった。


「確かがきっちょが、カウンター・ジャベリンを持たせたんだよなー。ポー達の事を忘れない為って奴だなー」

「ポーを忘れない為……ですか」

「がきっちょも、ニアにもポーがいる筈なんだよなー。ポーと一緒に戦ってる所あるんだぞー」


 少しわざとらしく、リタはカウンター・ジャベリンが実装されるまでの一件を口にする。ハドロイドとして志願したとしても、本来ニアとポーが親友同士で肩を並べていたかもしれない。親友として望んでいた想いの為、手にかけてしまった過ちを忘れない戒めの為――ポーとカウンター・ジャベリンに向けられた想いが、玲也とニアの結束を強めているのだと


「私がバグロイヤーの手に堕ちなければこんな事には……ポーが死ぬことも!」


 ポーが死に至った遠因が、アステルに自分たちの体が奪われていた為。特に自分の体を取り戻そうとして、妹が道を踏み外したのだと気づいた時、ウィンは自分自身もまた加害者だと直面した様子もあった。


「おいおい、あれはお前が悔やんでも仕方ないぞー……これからをどうするかだろー?」

「許せないのはバグロイヤーだよ! ポーちゃんもウィンにあんなことしたんだから……!!」

「……そのバグロイヤーからポーを守るため、私は戦いに出たはずだが」


 ただ、自分たちが眠りについている間バグロイヤーの手に堕ちた事は彼女の落ち度でもなく、不幸な事態によるものだった。それを分かっている身としてリタは、ウィンの過去を否定する事はなかった。それよりもその先をどうすべきかを説かれた時、


「僕だって玲也君の力に今ならないとだし、ここで玲也君を救えなかったらパパやママンに合わせる顔がないんだから!!」

「……!」

「とシャルが言ってるけどなー、どうなんだー?」

「私はそなたと戦う事は別に……ただ玲也の事はな……ああっ、もう!!」


 亡き両親によって培われた腕を、正義のために、玲也の為に使う一途な想いがシャルにはある――この想いを果たすにはウィンがともに立ち上がることが必要であると、リタから背中を押された時、愛憎に自分の胸の内をが渦巻きながらも、彼女の心の中で何か吹っ切れようとしている様子もあった。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「このエネルギーを利用してバグアッパーを蹴散らせればだが……」

「けど一度で片づけるなら、よほどタイミングが合わなきゃ」

「その通りだ。八方ふさがりはまだ早い筈だが」


 パテルス・イレーザーを噴きつけられ続けた挙句、ブレストの身体は蝋で塗り固められた様子だった。そのまま大気圏の引力に惹かれようとしており、断熱圧縮を引き起こしつつあった状況だ。

 この時点で一応ブレストのエネルギーはまだ残されているのがせめてもの救いである。パテルス・イレーザーによる凝固物を取り除く唯一の術がゼット・バーストを発動させる事であり、その勢いで突撃を仕掛ける戦法を玲也は想定していた。ただ、ガミアンが彼の最期を見届けるかのように、バグアッパーやバグストールの編隊を留まらせていた事が足かせでもあった。


「……玲也、何か凄いエネルギーが来てる!」

「この様子は……まさか!」

『ヴィータスト・マトリクサー・ゴー……ってね! 玲也君!!』


 万事休すはまだ早いと玲也は見なしていたが、天は彼を見放す選択をしていなかった。桃色の光がフレームを形成していく。月白の素体の下に頭部のバイザーや、バックパックのポータル・シーカーを始めとする追加装甲が施される――ハードウェーザー・ヴィータストと名乗る彼女の声は、玲也たちが常に聞いている彼女の声だ。


『待ってて! 直ぐ助けに行くからって、危ない!』

『目障りな奴め……片づけないと先はないと思うが!』

『わかってるよ! スパイラル・チェイサーで行くよ!!』


 ヴィータストが電装された地点に、バグアッパーやバグストールが迫りつつあった。ウィンから早々に仕留める事を勧められると、シャルもまた同じ考えである。ポータル・シーカーの両側から突き出た半円状のミサイルポッドから次々と弾頭を浴びせて応戦していく。


『ほぉ……これがスパイラル・チェイサーか』

『へへ、ボックストの時に思いついたからね』


 この弾幕で相手を牽制した後にすかさず右腕に収納されたワイヤーカッター“ハイドラ・ゾワール”を打ち出した。先端の刃によってワイヤーの軌道が撃ちだしたミサイルの間をかいくぐり、全体を電磁波でコーティングされたハイドラ・ゾワールが鋭い切れ味で、バターのようにバグアッパーを切り裂いていった。

 シャル曰くスパイラル・チェイサーと称するコンボであり、6連ミサイルポッドで相手を牽制し、動きを封じた隙をついてハイドラ・ゾワールをかいくぐらせて相手を切断する術の事を射す。ボックストを運用する中で、メテオ・アンカーとペレシュートのコンボを駆使していた事によって思いついたとの事であり、


『おっと! 逃げても無駄だからね!!』


 運よくハイドラ・ゾワールからまぬがれたバグトールの姿をシャルは見逃さなかった。戦域から速やかに離脱しようとする相手に向けて、突き出した左手首が折れ曲がると共に、展開された砲身“エレクトロ・キャノン”からビームが湾曲したような軌道を描いて直撃させた。


「すまないシャル、それに……ウィンさんも!?」

『わ、私は別にだな……き、貴様が私以外の討たれる事が嫌なだけだ!』

「それより今からゼット・バーストを使う! その上でコンバージョンを決行するぞ!!」

『まさかそれをぶっつけで……って言いたいけど、それしかないかもね!』


 結局シャルとともに電装してしまった事に対し、ウィンは仕方なく出たように玲也へはまだ辛く当たっていた。最も一応助けに来てくれただけでもありがたいと、玲也は今の状況でみなしていた。そしてこの状況で打破する術として、ゼット・バーストからコンバージョンに転じる事――ブレストとヴィータストを合体させる事であった。ニアがアペンディーシステムでヴィータストそのもののデータをインストールさせている中、ウィンもまたマニュアルに目を通しており、


「俺が抜けだした途端に直ぐシンクロナイゼーション! そのままコンバージョンに行くぞ!」

『オッケー! ウィン、僕たちの方が操縦大変だから頼むよ!』

『分かっている、一応頭に叩き込んでやった……コンバージョンの事もな』

「ゼット・バースト発動したから! シャルも準備しといて!!」


 玲也がL1、L2、R1、R2の同時押しの入力をした直後、左右のスティックも親指で力強く押し込む――ゼット・バーストが発動し、ブレストの目が赤く光りだすとともに全身にエネルギーがみなぎっていった。

 そして、熱量が沸き上がると共にブレストの身体を拘束するパテルス・イレーザーに亀裂が幾多も入り、拘束から抜け出す機会が訪れた。勢いづいたブレストの身体が解き放たれた時、彼の両足にヴィータストが突入せんとしており、


『シンクロナイゼーション行くよ!』

「分かった……よし! 上手くいった!!」


 スタートとセレクトを同時押しする事で発動する、シンクロナイゼーションコマンド――双方の同期認証が完了して、小型モニターに2機の機体のフレームが映されたと共にブレストのコクピットへと、シャルとウィンの姿が転移した。ブレストの制御下にヴィータストが置かれた瞬間であった。


「ポータル・シーカーはウイング・シーカーに重ねて、そしてボトムはお尻に突けるよ!!」


 ――玲也とシャルが小型モニターに表示された2機に対応したコマンドを入力しつつ、タッチパネルでヴィータストのパーツをブレストへの結合先を指定していく。

 シャルの操縦に合わせて、頭部が収納されたポータル・シーカーがパージされ、下半身のボトムパーツも追随するように、ブレストの背面へと連結されていった。ポータル・シーカーのサブアームが進展すると共に、ウイング・シーカーへ上乗りされるように連結された後、


「そして、トップパーツを両足に入れれば!」

「これでフィニッシュだからあとはしっかり……!」


 上半身として残されたトップパーツは左右に分割され、ブレストの踵から接続口が展開される。この接続口をめがけてヴィータストの両腕から収納されていき、分割された上半身の部位が下駄を履くようにとしてブレストに両足へ装着される。


「ブレスト・ブースター……コンバージョン完了だ!!」

「かっこよく決めたいけど、そういう時間もないから行くよ!!」


 トップパーツのハードポイントに接続されていた二丁のエレクトロ・バズーカがブレストの両ひざへと接続された後、新たな両足裏からから履帯が展開された時――コンバージョン・コンプリートとのメッセージが小型モニターに表示された。

 玲也達のサポートを目的にシャルが組んだハードウェーザーとなるヴィータストだが、ブレストとは彼の能力を拡張させる目的で合体させる運用を想定していた。ブレスト・ブースターはウイング・シーカーだけでなく、ボトムパーツが増設ブースターとしての役目を果たし、一気に大気圏の引力から自らを振り払っていった。


「凄いじゃんシャル! こうも楽々と動けるなんて!!」

「そうだよニアちゃん。ブースターだけあってスピードに重点置いてるからね!」

「ブレストのエネルギーが既に空のようだが……ヴィータストも余裕はあまりないぞ!」

「大丈夫だって、僕は玲也君と互角の腕だから信じてよ!」


 左右の4か所からブースターが展開されるとともに、ブレストの姿勢が起き上がるだけでなく大気圏の引力から振り切る。シンクロナイゼーションでヴィータストがエネルギーを消費した事もあり、実質3割ほどのエネルギーしか残されていない、その為早くドラグーンへ引き返す必要があったが、その先にバグロックに追随するように戦線から離脱するバグアッパーの姿を捉えた。


『ブ、ブ、ブレストだと!? あの状況からどうやって!!』

『バグレラでは勝てません、ガミアン隊長!』

『だったら早く逃げろ! お、お前たちは俺のために死ねぇ!!』

「折角だからちょっと決めちゃっていいかな!」


 勝利を確信していたガミアンからすれば寝耳に水――完全に虚を突かれた状況である。やはり保身の為。部下のバグアッパーとバグトールへ捨て駒になれと命じる。捨て鉢な様子で突っ込むバグロイドを前にして、シャルは少し自信ありげに笑みを玲也達に浮かべると


「必殺烈風サンダーキーック!!」

「何……!?」


 このシャルの叫びと共に、ブレストの右足――厳密にはヴィータストの胴体が変形した右足に電撃が及ぶ、ボトムの両足の位置を調整すると共に、スラスターとしての役割を果たしつつ、ブレストが急をつけた動きとともに豪快な回し蹴りを浴びせていった。電撃に覆われた右足による蹴りは、さく裂したバグアッパーを一瞬で散らせた事は言うまでもないが、


「へへっ、合体させたら新しい技があるってお約束だからね!」

「――あんた、さっきエネルギーがあまりないって言ってなかったっけ?」

「あとその技は変えてくれ、どうも調子が出ない……!」


 ヴィータストのハイドラ・ゾワールとエレクトロ・キャノンのエネルギーを転用し、ヴィータストの胴体から構成される両足に電磁波を伴わせて相手を蹴りつける――それが、必殺烈風サンダーキックと呼ばれる技を指す。ニアからそのセンスを突っ込まれているのと別に、玲也は両ひざに連結されたエレクトロ・バズーカをもう1機のバグアッパー目掛けて発砲する。


「素早いが小回りは今一つ……バズーカで補うのも一つの手か」


 直線的なスピードでブレスト・ブースターは瞬発力を活かすことが出来る。しかしヴィータストとコンバージョンした分重量が増加している。ボトムパーツを増設ブースター兼スラスターとして運用する事がサンダーキックを駆使する事も含め、ブレストの運動性を補っているともいえるが、小回りを求められる動きは不得意だと玲也は察していた。

 とはいえ本来白兵戦を重点に置いたブレストが、ヴィータストの武装を転用して砲撃戦に対応する術は有用だとも、新たな運用方法も新たに脳裏に思い浮かびつつある。そしてそれと別に


「貴様、先ほどから何をぶつぶつとだな……」

「こちらの話です、それよりこれが俺の戦いですよ!!」


 自分の独り言を怪しむウィンに対し、玲也は自分の戦いを示しに動いた。すかさずカウンター・メイスを取り出し、バグトールの基点目掛けて、右足から取り出したカウンター・メイスを射出して突き刺す。モーグローを展開させて超音波による高熱攻撃をしでかす前に、柄を真っ先に深くめり込ませて引導を渡す。


『く、来るな……! 早く逃げさせろ!!』

『そ、そんなことできる訳ないですよ! 追いつかれます!!』


 後は逃れるバグロックだけである。一転して狼狽するガミアンは、シューティング・レネードを退き際に投げつけるものの、ブレストが投げつけたサザンクロス・ダガーが瞬時に焼き払っていく。そしてブーメランのように弧を描いた軌道で戻って来るや否や、すぐにカウンター・メイスの柄へ接続させることで――カウンター・ジャベリンの完成だ。


「これがあのポーと同じ……」

「俺にこれを使う資格があるかはまだ分かりませんが、このジャベリンにポーだけでなくみんなの想いがあります! だから!!」

『やめろ、いややめてください! 俺は所詮偵察隊で、二番隊ではぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

「サザンクロス・フィニッシュ……!!」


 かくしてカウンター・ジャベリンを十文字にバグロックを斬りつける――部下に対しても横暴を振るうガミアンが、偵察隊という低い立場を利用して命乞いを試みるも無駄であったのは言うまでもない。バグレラが後ろでどう砕け散ろうとも興味などないと、ブレストはドラグーンへと再度急ぐ。


「……玲也その、あのだな」

「ウィンさん、ちょっと今から全速力を出すつもりです。できれば後で」

「……貴様の腕はそれなりに立つということだ! それだけだ!!」


 一瞬玲也に対して、ウィンがしおらしくなる姿勢だったが、彼に今その余裕がない様子だと指摘され、思わず彼女が顔を横に背けて相変わらず強気な態度をとる。そんな様子を傍らに、ニアとシャルはタイミングが悪い事を少し苦笑していた。


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