第1話

「ねえ、新しい上司と早速寝たって、本当?」

 出社するなり、いきなり囲まれて訊かれた。

 回し蹴り。

 全員に回避された。

「おお、あっぶな」

「これは寝たな、確実に」

「ねえどうなの、実際どうなのよ」

 もう面倒になってきた。帰りたい。

「ええ寝ましたよ。何もしてないですけどね」

 一瞬の沈黙。

「え、うそ、添い寝だけ?」

「まじで?」

 ようやくセクハラ上司がいなくなったのに、今度は同僚がセクハラ魔と化している。

「病院の、ベッド。いいですか、病院の、ベッド」

 静寂。

「えっ」

「病院て」

「普通じゃねぇぞおい」

 そして騒ぎはじめる。

 彼等には、負傷という二文字を、この身をもって叩き込みたい。

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