アンチテーゼ

 今回は、

 多くの人が見たことのある、

 そして誰も見たことのない話です。

 まずは暗い洞窟で真っ白いドラゴンが目を空けます。

 暗がりですけど竜の体は光ってます。

 そして森の場面に変わります。

 大昔か、もしくは遥か未来ね、

 魔法学校っていうのがあったんですよ。

 そこで色んな人が集まって魔法とか勉強するんですね。

 適当に……森の中に校舎があると思うんですが、

 それでいいと。フワフワの設定の中で、

「ここがあらゆる種族と魔法が集まるという、

 魔法学校アルマンダル・グリモワルかぁ!」

 主人公は、タクヤ、タッくんといって、

 普通の学校から転校してきた、

 あまり才能のない男子です。

 制服はブレザーと赤茶のズボンで、

 女子の場合は赤茶のスカートです。

 キーンコーン、チャイムの音がしました。

「わわっ、これじゃ遅刻だ」

 向こうから女の子が走ってきます。

 ぶつかってしまいました。

「イタタ」

 二人ともこけました。

「あ、あなたが転校生ね!」

「う、うん……。ぱ、パンツ見えてる」

 光りを反射する布で黒のようでした。

 あー良かった。そしたら、

「きゃーっ! バカ!

 もうっ。いいから付いてきなさいっ」

 主人公とヒロインは顔を赤くしてます。

「私はララ・ミュー・シャリエール」

「た、タクヤ……」

「タクヤね、よろしくっ」

「うん」

 タッくんとララ。

 やはり少年をターゲットとした美少女の意味っていうのは、

 読者が、こりゃもう絶対モテない、僕は無理じゃないかなっていうのを、

 そうじゃないんだ、こういうこともあるんだっていうことをやってくれる。

 という事はね、オシャレな美少女です。

 胸とお尻はそれなりに大きくて、髪が長くて。

 そしてほんっとうに優しい。主人公に特に。

 庭園もある広い校庭を通って、

 でっかい校舎に入るんです。綺麗な校舎の中にね。

「ここがあなたのクラスよ! 私のクラスでもあるわ」

「おぉ」

「キミが転校生か? よろしくな。俺はコッポ・ドーン」

 転校生が来るぞっていう事は説明されてたんですね。

 お友達キャラです。コッポ・ドーンは。

 2秒で思いついたような名前じゃないですか、

 集中した状態で40秒くらいかかってます。

 ポジティブに、いろいろ見たことがあるので、

 たった40秒で出たと考えまして。

 さて先生が来る前に、

 クラスメイト達はちょっと話をしています。

 誰なんでしょうか、

「おーっと、転校生か。

 どれだけのものかと思えば、

 さえないヤツ」

「ハハハ!」と取り巻き。

「な、何だよ……」

 さえない。

 最初の方はそういう設定なんです。

「そんな様子じゃクラスで一番の才能を持った、

 このガニエル・グランには敵いっこないさ」美少年。

 こいつがライバルですよ。余計なことをしてくるんです。

 じゃあ睨んでしまいたいと、

 ついそう思いたくなるんです。タッくんも。

「くっ」

 負けないぞ、とね。しかし、

「どきなよ」

 単なる魔法初心者だから簡単にどかせられちゃう。

 でも勝ち負けを競うのは下らない事だし、

 新しいクラスメイトですから、

 ちょっと寄った方が良いのかな、

 喧嘩をするのは違うのかなと思うタッくん。

「うう……」

 そもそも人と話すのが苦手、言葉が出てこない。

 怒ってる人が相手だったら余計にね。

 立ち話してた所から、どきなよ、

 で自分の席に着こうとしていたガニエルが、

 少し戻ってきて、他のクラスメイトもいる中で言います。

「そうだ、今ここで新しい魔法の実験台にしてやろうか?

 火炎魔法のなぁ!」手から火。ぼー。

「や、やめろ」

 そりゃそうです。

 ララが言います。

「やめなさい! 私が相手になるわ」

 言った内容よりも優しい口調です。

 ヒロインはそういう役目がある。

 タッくんは大体、何をするのも苦手です。

 自分の価値もまだ考えないから、

 こうやって誰かに助けてもらうなんて夢にも思わない。

 人を助けたりなんて憧れるけども、とても出来ない。

 ララとガニエルがしばらく睨み合います。腰の引けたタッくんです。

 ガラッと、日本の校舎と変わらないような何の感動もないドアを開けて、

 先生が入ってきます。

「こら~、何やってるお前ら~」

「チッ、命拾いしたな。

 転校生、お前を燃やすのは今度だ。覚えていろよ……」

 火を消しました。

 先生が来たらやめて命拾い。軽いもんです。それでいいのか。

 先生も忙しいので問題発生後にしか対応しません。

 みんな何事もなく着席。聴いてたよねーっ。シュールギャグです。

「じゃあ転校生のタクヤ君、こっちへ来て、

 黒板に名前を書いて」

 黒板があります。

 カッカッ、書く音。

「シコウ・タクヤです。よろしく」

「ハイみんな拍手」

 パチパチ。

 ララと、誰だ、即友達のコッポは笑顔で、

 ガニエル君と取り巻きはタッくんを睨んでいます。

 他のクラスメイトたちも拍手してくれています。

 今のアニメだとここで一話の半分。

 目新しいことは話の最後まで起こりません。

 そして次は諸方面に配慮した女子更衣室のシーン。

 女の子はクラスの半分、13人が着替えているんですが、

 一切下着の写らない、数多くの作品の似た場面にさえ勝てない着替えが終わって、

 これは最初でサービスが済んでいると思った作り手の判断という設定です。

 興味が浅い人にはどれも同じに見えますが場面の意味が薄いことが分かりますね。

 分かりますね。それで着替えたララがタッくんとコッポの所へ来ます。

 みんな体操着。

「おまたせ。次の授業は魔法体育マジフィケーションね」

「マジフィ……何?」

「走り回りながら魔法を出して、

 実戦でも魔法を使えるようにする授業だぜ」

 こういう少しおかしな設定がまあ、あるんですよ。

 どうかなぁと、判断を揺らして来るくらいの。それはいいんです、

 多分、横文字のムードだけで大分マシになっていると思うんですが、

 魔法体育(まほうたいいく)のままだと、

 さらにメチャクチャ効率の悪い授業の名前です。

 話が進行してるだけ。出てくるたびに、

 格好良くないんじゃないかな、とマイナス評価が起こって、

 ダサくなっていくわけですから。読み手の心の中の評価が。

 作品の中で連呼されるものはですね、何回も響きます。

 マジカルフィジカル、何々……ですよ。(英語は分かりません)

 だから《マジフィケーション》と。

 これでもダサいって? やっぱりね。確かにね、

 今回やってることは単なるジョギングです。

 途中に魔法を放る。ポーン、と。

「《マジフィケーション》はじめ~っ!」

『ハーイ』

 ふと気を抜いたら、行くのをやめちゃおうか、というほど、

 タッくんも走る気が無い。一応授業だから3人で走ります。

「雨が一滴も降らなーい。俺はカタツムリ」

「良い天気じゃない。ほら早く、気持ちいいわよ!」

「元気だなー。タクヤ、俺達も行こうぜ!」

 適当に男女が一緒に走ります。

 途中にある、

 立て看板のような器具に魔法を出します。

「見てろタクヤ。

 サンダーライン!

 どーだ俺様の雷魔法はっ」

 友達が教えてくれるのでタッくんも、

「確かこうやって、ファイヤーアーグ!」

 ちょっとは使えるんです。

 小さい火炎球が手から出て行って、

 器具がぼうぼうと燃える火を受け止めます。

「フン! その程度かァ」

「お、お前は。何の用だっ」 

 ライバル、ガニエル君です。

 さっきですよ。さっき紹介言ったんですから、

 そりゃ来ます。用も何も、何の説明もいらないですよ。

 ただし走る授業のはずなのに、

 タッくんたちは声をかけられるまで器具の近くで立ち止まっていたかのように居て、

 ガニエルは後ろからゆっくり歩いて現れました。なんか変だなとは誰も思いません。

「こうするんだよ。ファイヤーアーグ!」  

 ゴォーッ、主人公のより二回りは大きい炎が出たんですね。

「何てパワーだっ」

「アクアブリザード!」キラリンピカピカ~。

 ララの魔法です。ガニエルの魔法を消してしまいました。

 別に魔法受け止め器具は大体受け止めるもので、

 消す事はなかったんですが、キャラクター関係の表現です。

「さっきの決着をつけたいみたいだな?」

 ガニエルが話のエスコートをしてくれます。

「あなたがそのつもりならね!」

 ララも乗りました。

「俺が勝てばその唇を頂く」

「っ……」

「なっ、何を言ってるんだー……」

 何か知らんけど、とにかくやめてくれと思うタッくん。

 主人公が少し空想するようなことを、

 ライバルはもう先に出来るか、やろうとするんです。

 争いのタネ、つまり話のタネを作ってくれる。

 ところがそこでまた邪魔が入る、

 空の色が暗くなります。

 昔この世界ネオファンタジアを作る手伝いをしたという、

 白いドラゴンがぴゅーっと飛んでくるんですよ。

 ぱたぱた、ズシーン、校庭に着地すると。

「うわああ」

「キャアーッ」

 2階建ての建物が落ちてきたみたいにズーン。

 衝撃がみんなに。

 こけてる人も居ます。

 だいたい及び腰、

 これでどうなっちゃうの、と。

 タッくんもこけてて、

 そんな主人公たちの真ん前に来たわけです。

「な、な……っ?」

 ところが大きな口で噛んだりせずに、

 翼を広げて胴体の白いウロコを見せびらかします。

 それでこう言うわけです。

「やってきます……」

「な、何が?」

「魔物たちと契約のテスタメントです。

 人間たちは歴史の中で、

 たくさんの魔物を倒してきました。

 けれど大きな間違いをおかしているのです。

 これ以上そうさせないため、契約の子が今日ここに来るのです」

「契約の子っ? お、お前の事か」

「いいえ、契約の子とは、

 魔法を極める宿命を持った者のことです。

 タクヤという人間にそれを伝えるため、

 私は今日ここへ来ました」

 と言うんですね。

 タクヤという人間なんて言って、

 もう誰がタッくんが分かってるわけ。

 タッくんはこけたままで、

「ぼ、僕……?」

 人間たちが魔物を倒してたけど間違ってた、

 っていうのは理由を思いついてないので何とも言えません。

 ウソかも知らんし。間違いかも知らんし。

 何とも言えません。とにかく、

 この白いドラゴンは、タッくんを導いていくんです。

 良い竜と悪い竜が居ます。足とかも大きい。

 ふくらはぎが直ぐむくむんじゃないですかね。

 タッくんが契約のリラックスマッサージという魔法で、

 大きくなるか小さくさせるかして、グイグイもんであげるんでしょう。

 寝る前にしっかり丁寧にもめば、よくつる方でも足はつりません。

 竜から魔法の才能を得て、いっぱい魔法を覚えながら、

 マッサージの魔法で白いドラゴンの足をもんで、

 モンスターを追い払う話になるに違いないと思いました。

 テンプレート作品をイメージ。

 こういうのばっかだな、

 という点に反論したいもんです。

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