談話5:シラユキの性格形成

 ふーっと、竜は娘たちに当たらないようにため息をついた。

 直撃はしなかったものの、余波で娘とヒスイの髪が少し揺れた。


「ヒスイはそこで顕現したのか」

「はい。とっても寒かったです」


 そのときのことを思い出したようで、ヒスイは両腕で自身を抱きしめた。


「しかし、シラユキか……。下手に私が近づけば溶けて消えかねなかったから、ことさら気を使ってな。クロガネも私の真似をしてシラユキに接していてな。結果的に甘やかすことになってしまったか。近しい血族を、みなお前に取られたと思い違いをしたのだろう」

「そうではないかと、私も思いました」

「私が子をすことはもうないだろうが、若者に接するときは気をつけるとしよう」


 竜は娘とヒスイを見る。

 娘はいつもどおり平静だったが、


「お、お手やわらかにおねがいします……」


 ヒスイは半分娘の背中に隠れて、小さな声でそう言った。


「お前は大丈夫だ。安心しろ」


 竜は笑う。


「何も甘やかし放題だったわけではないのだ。一番シラユキに接していたのは私たちの母竜でな」

「ああ、以前お聞きしましたね」

「そうだ。母竜はお前の叔父以上に豪快でな。甘えをとおり越して、我儘を言っているだけと判断したときの迫力は、言葉に表せないものだった」

「ええ、それは容易に想像できます……」


 娘は視線を斜めに流し、ふっと笑った。ヒスイも、心なしか背筋を伸ばしている。


「なぜお前たちがそんな反応をする」

「それはまあ、続きを聞いていただければわかります」


 こくこくと、ヒスイも勢いよく頷いている。柔らかい翡翠色の髪がふわふわと揺れた。


「まるで会ったことがあるかのような口ぶりだな。……まさか」

「まあ、それはもう少し私たちの話を聞いてくださればと」


 娘は苦笑した。

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