2100
最高に栄えたと言われた世から6、70年後の物語。
下らない権力者たちの戯れ、他国との経済格差、、他国との大きな亀裂
こうして何度繰り返されても、理解も学習も出来なかった人々による「戦争」が始まってしまった。
たくさんの国で、たくさんの人々が死んだ。
もちろん日本でも、他国からの攻撃により駆り出されていた男たちの大半が死に、こうして私たち女を利用することにまで進んでしまった。
「・・・・・・」
戦地へと向かうトラックでは一切の声があがらない。
怒りも、恐怖も、悲しみも、何もかもが静寂に押し殺される。
しかしこうして同じトラックで、同じ日に移送されるということは同じ部隊に入ることになるのだろう。
そうだとしたら、自己紹介から始め、少しでもコミニュケーションを取るべきなのだろうか。
そんなことを考えた私だったが、私たちには「番号」が付いていることが完全に頭から抜け落ちていたようだ。
そうだった。所詮私たちは上にとっては期待すらされない存在なのだ。
体格で男に勝つことが難しい女、さらには持たされた武器はいつの時代だと言わせるような先に剣の付いたタイプの銃だ。
どうやらコスト的な面では頭が回るようで残念だった。
私たちはそんな上層部の1秒のために人生を捨てなくてはならないのか。
私は軽く銃を握りしめる。
すると前方から大きな爆発音のようなものが耳の鼓膜を刺激する。
「戦場が近い!いつでも戦えるようにしておけ!」
言われなくてもそのつもりだよ。
運転手のそんな言葉を吐き捨てた。
銃を支える左手が熱を持つ。
目の前に迫る「死」という直接的な感覚
そしてこれから私がすべきである「殺」という感覚
私はそんな感覚を覚えながら、耳で戦争というものを掴んでいく。
そんな時、私の頭に響くような激痛が走った。
どうやら目の前で爆発があったらしい。
当然、指揮官などいない私たちは躊躇うことなく車を離れ、近くの遮蔽物にそれぞれ身体を隠す。
運転手も慌てて外へと飛び出そうとした瞬間、わざとのように車が燃え、煙を上げながら爆発した。
こんな光景を見ても、いや見たからこそ自分だけでも生き残りたい気持ちが強くなった。
飛び道具だけで私たちを制圧しようとしたのか、しばらく身を隠していると爆撃が一切飛ばなくなったが、さらに待つと足音が目の前に迫っていた。
重く、噛み締めるように歩く敵歩兵団に、私は軽くため息をつく
ただその時を待つ。
周りもどうやら覚悟は出来たらしい。
誰もが逃げることが不可能だと悟り、自分の武器を構える。
少しづつ近づく足音に、誰に合わせるでもなく飛び出した。
もちろん、相手も武器を構えていただろう。
しかし私たちの方がタイミングを作り出せたことによって、先に引金を引くことが出来た。
飛び交うことなく当たり倒れる敵。
当然のことだった。
しばらくすると敵にも余裕が出来、戦力にものを言わせた銃撃戦が始まった。
肉壁がある分有利を作る敵勢力は、容赦なく私たちお隙をついて弾幕をあびせる。
横なんて見ている余裕はなかったが、体感だけだがかなり死んだようだ。
敵も味方も、たくさん死んだ。
思い入れが無いからこそ躊躇なく殺せる。
思い入れが無いからこそ死に直面出来る。
どうやらついに自分自身にも死が近づいてきたらしい。
銃弾もほとんど無くなり、周りを見ても味方は数える程しか生きていない。
目を瞑り、口の中に銃口を構える。
・・・・・・・・・・・・
音が聞こえなくなった。
小さい頃から才能だけには恵まれていたが、自分以外との競争に疲れた私
かつて私をあの世界から引きづり下ろした奴らはどうしているのだろうか。
私は引き金に手をかけた。
そうして、銃声が周りに鳴り響いた。
「・・・・・・!・・・!」
しかしその銃声は、私のものではなかった。
一発の銃声が鳴り響くと共に、少し遠くから人々が見えてくる。
味方らしき人々は、突然の襲撃に戸惑った敵を、躊躇なく撃ち殺し、少しの犠牲だけで殲滅させた。
「君、大丈夫かい?」
一人の女性が声を掛けてくる。
「あ、え・・・」
言葉が出てこない。
恐怖からの脱却による安心なのだろうか。
あんなにも自分自身を殺すのに躊躇いを持てなかった私が?
「落ち着いて、敵は殲滅したから、とりあえず安心していいと思うよ。所属と名前言える?」
「えっと・・・えっと・・・」
ただ名前を言うだけなのに言葉が出てこない。どれだけ自分が恐怖していたかが分かってくる。
「・・・だったら私が先に名前言うね」
女性は立ち上がり、今や久しぶりともいえる笑顔で言った。
「私は陸軍37班の指揮官・・・・・・。よろしくね」
どうして彼女は・・・
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