【思い出のうた】

僕の10歳の誕生日にはもう、この国は戦争をしていた。


風の国、スフェーンでは

豊かな土地と環境でたくさんの資源が手に入る。

小鳥がさえずり、木の実を運び

村々は畑を耕し、街は盛んに人々が歩く。


スフェーンのガラドル、所謂魔法使いは

ハインという人間の女性だ。

風を呼び、この土地を豊かにしてきた。

僕は将来このガラドルに使えるのが夢だ。


スフェーンにはハイン様の加護のもと

たくさんの資源のおかげで

戦争になることも多い。

特に東にあるシトリンはフロゾ族の国で

資源が無い砂の国だからか何十年か毎に戦争を仕掛けてくる。

彼らの寿命は短く、長寿を求めてくるみたいだ。


窓から空を見上げると、懐かしい風が流れてくる。

戦争を忘れさせてくれるような。


―――――

「ミゲル!降りてきなさい。お父様がお帰りよ」


母様の優しい声で僕は部屋を出て、急いで階段を駆け下りる。

父様が帰ってきた!


「お父様、お帰りなさい。」

「あぁ、ただいま。すまないね、しばらく家を留守にしてしまい…」


庭の花壇の前で楽しそうに話している母様と父様の姿を見て

僕はうれしくなり、家を飛び出し二人に駆け寄る。

父様が大きなゴツゴツした手で僕の頭をなでる。


「今日はミゲルの10歳の誕生日だからね。帰ってきたよ、さぁ愛しの坊や」


そういうと僕を軽々と持ち上げる父様。

にっこりとほほ笑んで母様と一緒に家に入る。

父様はハイン様に使えるシュバリエだ。


たくさんのお菓子やケーキ、食事をとり、

3人で誕生日を祝う。

そんな楽しい一日がそろそろ終わるころ。


夜中にのどが渇き、キッチンへ降りようと階段を降りると

二人が話している内容が聞こえた。

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