第6話 御札

 問題のキーワードをなんとなく別の言葉に変換してみる。俺の導き出した答えはこうだ。

 幽霊と自家用車。霊魂とマイカー……レイコンマイカー。つまり、幽霊のスピードは0コンマ以下だからだ。それゆえ圧倒的に勝利した。


「ウフフフ、セイカイダヨ」


 すると、女の子はどこかの鍵を渡してくれた。カギのプレートを見ると『6年3組』と書かれている。俺はその教室に向かうと女の子に告げようとしたが、既にその子の姿はなくなっていた。


♢♢♢


 俺は静まり返った廊下を警戒しながら歩く。惨殺されたAの様子から、例の化け物どもにつかまれば命はないだろう。だからといって、この場から逃げるためには、御札おふだというものが必要となるらしい。

 学校の構造上、教室の配置で学年の並びは想像できる。勘を頼りに、6年3組を目指し、どうにかたどり着いた。

 鍵を使い、教室の中を調べていく。すると、教壇きょうだんからみて正面。つまり、教室うしろの黒板にふだらしきものが張られていた。


「これが、その御札か……」


 ようやく、ヒントの一つを発見したことに安堵あんどした俺は、何の考えもなしにそれをがす。すると……。


「うっ!?」


 お札を剥がした跡から、青白い手が出てきて、俺の首を掴んだ。


「が! がはっ!」


 呼吸ができず、もがき苦しむ。このままでは死ぬ……刹那の考えの中、必死でその手を振りほどいた。


「がは、はぁ、はぁ」


 そのまま、教室を出ようと走る抜ける。だが、背後から、片足をその青白い手に掴まれたようで、並んだ勉強机の中に突っ込むように転ぶ。


「ぐっ、ぐわぁ! はなせ! はなせよ!」


 青白い手は黒板から伸びてきており、俺の足を掴んでいる。転んだ痛みよりも先に、このままでは殺されるという考えで頭は一杯だ。振りほどこうとはするものの、パニック状態で先ほどのようにうまく振りほどけない。


「た、助けて! 助けてくれ!」


 希望のない救いを求める俺。すると、天の助けか……人影が、教室へ飛び込んできた。


「誰かいるのか?」


 それは先輩Dであった。無事だったのか? いや、今はそれどころじゃない。


「せ、先輩! 助けてください!」


 黒板から伸びてくる長い手に、Dは一瞬動揺どうようしたものの、すぐさま俺の手を引き、力のままに教室外へ引きずっていく。俺を教室の外へ出すと、教室のドアを思いきり締め、足を掴む手をはさんだ。掴む力はすぐには弱くならなかったものの、何度も力強くはさまれると、青い手は俺の足を離し、元の黒板へと逃げて行った。

 教室のドアを閉め、息切れした俺たちはその場にへたり込んだ。


「はぁはぁ、無事だったんだね○○君」


「先輩こそ……」

 

 こうして、俺たちは仲間に会えた束の間の安堵を共有した。

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異次元校舎怪奇録 若狭兎 @usawaka

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