第3話 怪奇
校舎の周辺を歩いていると、厳重な鎖で施錠されている扉が見つかった。どうやら、ここが入り口のようだが……。
「どうする? その辺の木材で叩き壊すか?」
Bが物騒なことを言った。いくら使われていない建物だとは言え、器物損壊に当たるのではないかと思う。
「心霊スポットに来るのが目的だから、無理に校内へ入る必要はないだろう」
「んっだよ、ノリわりーな」
「あたりも暗いし、誰かの身に危険が及んだら……」
Dが引き返すようBを説得している途中。
『ガチャ……ガタン』
鎖をつないでいた錠前が落ち、ガタガタとドアが少しだけ開く。
「おっ、おい……今の見たか?」
「あ、ああ」
その瞬間を全員が目撃し、凍り付いた。まるで、俺たちに『入れ』といわんとしているようだ。
嫌な予感がする……俺の第六感は目の前の怪現象に、危機感を告げている。
「よかったじゃん、幽霊がウェルカムだって」
Cが気楽にそういう。
「ここまできて、入らないっていう手はないよな」
Bは半ば挑発するように、Dへけしかけた。
「わかった。だが、みんなの安全が最優先だからな。何かあったら、すぐ外へ避難しろ」
こうして、先輩Dを先頭にし、中へ入ることとなる。希咲や先輩Cは万が一の場合に、助けられるよう真ん中へ配置した。
全員が校舎へ侵入した次の瞬間!
『バタン!!』
急に扉が閉まったのだ。
「お、おい! 誰が閉めた!」
「我が輩じゃないであります!」
「ちょっ、冗談はやめてよ!」
何名かが、扉を開けようと頑張っているが、ビクともしない様子だ。
「ね、ねぇ……何か聞こえませんか?」
希咲が震える声でそう言った。俺たちは耳を澄ませてみる。
『ん~んん、ん~んん、ん~んん』
それはうめき声のようでもあり、不気味な歌声のようでもあった。開かない扉の前で、俺たちが何もできないでいると、その声の主が廊下の奥から姿を現す。
それは、毛むくじゃらで、まん丸な出で立ちをしており、目のあたりが異様に光っている。手と足は緑色で異様に長く、鋭い爪を持っていた。そいつらは集団でこちらへと向かってくる。俺たちは恐怖のあまりに固まっていると……。
『に、逃げろー!』
誰かがそう叫んだ。すると、金縛りが解けたように、俺たちは近くにあった階段で上階へと駆け上がった。
そこからは無我夢中で、ひたすらに奴らから逃れるように走った。そして、どれほど走ったのだろうか……。
気がつけば、俺の周りには誰の姿もなかったのであった。
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