第一幕『目覚め』

第1話

 人は自分たちとは違うものを嫌悪する。


 人は自分たちに理解できないものを憎悪する。


 人は自分たちよりも劣っているものを嘲笑う。


 人は自分たちよりも優れたものを貶める。



 人類が生来有している罪は主の力を以てしても淘汰しきれない。



『今ここに悪魔の子をはりつけにした!!』

『見よ!! この赤く染ったおぞましき牙を、屍人の如き白い肌を!! 老いず、死なず、血を流さず。それでも動くこの体を!!』

『おい、これはどういうことだ? 俺は悪魔を告発したんだぞ!! その謝礼がたった銀貨二枚ぽっちっておかしいだろう!!』

『ええい黙れ、今は悪魔の処刑をしなければならんのだ。失せろ!!』



 聖書を大事に抱える者ですら、その身のうちに獣を飼っている。東洋には矛盾という言葉があるが、その言葉は人にこそ相応しいと彼女は思う。


 人という生物は、偉大な主とやらが作った割には欠陥だらけの生物である。曰く、禁断の果実を食したからだというが、ならば主はなぜそのようなものを残したのか? その答えは驚くほどシンプルで――




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