第34話

「じゃ、エリカも行く!」

家に着いた侑は皆を集めて王城での話をした。

一ヶ月位かかる採取を罰として受けたと伝え、明日にでも出発すると言った時に泣きそうな顔でエリカが侑に詰め寄った。


「駄目だよ、エリカは連れて行けない。

エリカを連れて行ったら、罰ではなくて旅行になってしまう。

なるべく早く帰るから、子猫達の世話をして待ってて。」

侑は泣き出したエリカをなだめた。


「もういい…

勝手に行けばいい…

侑の事なんか知らない…」

エリカは泣きながらリビングから出てしまった。


「侑、良かったの?

本当の事をエリカに言えば良かったんじゃないの?

エルフの国に行くから、エリカは掟で入れないだろって。」

サラは侑がエリカに本当の理由を言わないのか不思議だった。


「本当の事を言ったらエリカは行くって言うよ。

行けないのはエルフの国だけだからな。

入れなかったら、外で待つと言い出すよ。

それにこれから行くのは火山とか砂漠とかエルフにとって耐性の低い火属の土地ばかりだからね。

エリカにとっては辛い旅になる、それでも行くって聞かないだろう。」

「でも、あの言い方だと納得できないエリカの気持ちも分かる気がするんだけど…」


「それは俺も分かってる。

分かってるんだけど、何て言えば良いか分からないんだよ…

俺の中にエリカにとって辛い旅になるから留守番してもらいたい気持ちと、それでも連れて行きたい気持ちが喧嘩してるんだ。」

「なら、正直に全部言って本人に決めさせたら?

もう大人なんだから自分の事くらい決めさせてあげましょうよ。」

サラはリビングから出てエリカを呼びに行った。


「火山とか砂漠って言っていたが、素材は何なんだ?」

ドラゴは火の国から来たから、もしかしたら知ってるかもしれないと言い出した。


「火山の青い薔薇と砂漠の浄命水、あと世界樹の新芽だけど?」

「青い薔薇なら話に聞いたぞ。

火山に住む火竜の巣の近くだと言っていたな。

何なら俺が取って来ようか?

そうすればエリカは火の国に行かなくて済むぞ?」

ドラゴは一人で全部集める必要は無いんだろうと侑に聞いた。


「確かにそうなんだけど…

材料は全部自分の手で集めないと駄目な気がするんだ。

どういう土地で…

どういう環境で…

すべて知っていないと失敗する気がするんだ。」

侑は時の器を使っていた感覚から、材料を全て器に入れてひっくり返すだけという説明が曖昧で違う気がしていた。


「何よ、まだ話があるの?

勝手に行けばって言ったはずだけど?」

サラに連れられてエリカが戻ってきた。

強がっているが、涙で目が真っ赤になっている。


「ごめん、エリカにちゃんと話そうと思って。

話を聞いて、それでも行くと言うならエリカも連れて行くよ。」

侑は何処に何を採りに行くのか説明した。


「侑のバカ…

最初からちゃんと言ってくれればいいのに。

私の事を考えてくれていたんでしょ?

だったら、留守番してるって言ったよ。」

エリカは頬を膨らました。


「いや、エリカならついて行くって言いそうだったから…

エリカの身体に負担をかけたくなかったし、エルフの国には入れないって言ってたし。

エリカの火傷を治す薬の材料を採りに行くのにエリカの身に何かあったら意味無いし。」

侑はエリカの意外な答えに戸惑った。


「家で待ってるけど、長い留守番は不安だから…

出来れば、たまに帰ってきてくれると嬉しいな。

例えば材料一個採ったらとか…」

「分かった。

一つ採ったら、戻ってくるよ。

報告もしたほうがいいと思うし。」

侑はエリカの頭を撫でながら約束した。



※今回は短くなりました。

次回からは四章に入ります。

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