第15話

「おはようございます」

ドアをノックする音が聞こえる、しかも聞き覚えのある声だ。


『ガチャッ』

侑はドアを開けた。

そこにはギルマスのロゼと見知らぬ青年が立っていた。


「侑、おはよう

ちょっと良いかな?

あと、バトラ様も一緒にお願いしたいんだけど。」

ロゼは真剣な顔で侑を見つめた。


「取り敢えず中に入りなよ。

そちらの方も一緒にどうぞ。」

二人をリビングに案内すると、バトラを呼んだ。


「お宅にまで押しかけて申し訳ありません。

先日、侑達から報告を受けまして町の北側を探索致しました。

魔素濃度が異常に高い場所を特定し、魔素を噴き出している穴を発見しました。

現在、穴に関しては厳戒態勢を敷いています。

今日伺ったのは、この件に関するお願いをする為です。

こちらにいるのはドラゴと申します。」

ロゼは普段見せない丁寧な言葉遣いと佇まいを見せた。


「ドラゴと申します、竜人族の冒険者です。」

見た目は侑と同年代でイケメンだ。


「それでお願いとは?」

口火を切ったのはバトラだった。


「はい、これからのギルドの対応に協力していただきたいとお願いに参りました。

このあと、私はギルドに戻り依頼を発行します。

内容は穴の周辺に居た獣が魔獣化してスタンピードを起こす前兆がありましたので、魔獣の討伐依頼です。

討伐依頼に参加して頂きたいのと同時にもう一つお願いがありまして…」

ロゼはどう切り出していいかモゾモゾとしている。


「俺から言おう。

侑君とバトラ様にお願いします。

俺とパーティを組んで下さい。」

ドラゴは深く頭を下げた。


「何故?

一緒にって事じゃなくて、何故家まで来てお願いするのですか?」

侑はパーティが組みたければ、ギルドで頼めばいい。

わざわざ家まで来たのには他の理由が有るからでは?とドラゴの顔を見た。


「それは私から説明するわ。

ドラゴは竜人族なの、そして私も。

ギルドで侑を呼び止めてドラゴを紹介したらみんなはどういう目で見るかしら?

ドラゴを贔屓している様に見るか、侑を贔屓している様に見るか。

どちらにしても、良くは見られないわ。

でも、どうしてもドラゴと侑を組ませたい。

だから、無礼を承知で家まで来たのよ。」

ロゼは侑の顔を見つめながら、お願いした。


「理由は分かったよ。

あと一つ、何故俺なの?

俺なんかより、Lvの高い人と組んだ方がメリットが多い気がするけど?」

侑はドラゴの顔を見た。


「それに関してはこれを見てくれ。」

ドラゴはギルドカードを侑に見せた。


ギルドカードには転生人とチートなステータスが、そして最後にはブラフマーの加護と書かれている。


「俺はこの世界に来て何をすればいいか分からなかった。

だから、ひたすらLvを上げた。

それでも答えは出なかった。

ブラフマー様に相談したら、この世界で頑張っている侑君の話を聞いたんだ。

俺は侑君を探して手伝う事で答えが出ると思ったんだ。

どうか、俺を助けると思って手伝わせてくれ。」

ドラゴは真剣な眼差しで侑を見た。


「ブラフマー様はまったく……

俺はこの世界で知り合いと言える冒険者は居ないから、別に組むのは構わないよ。

ただ、手伝うって気持ちは要らないな。

あと、『君』も。

ドラゴは俺の使者じゃないから、自由にすればいい。

やりたい事をやりたい時にすればいいんじゃない?

気に入らない事はすること無いよ。」

侑はドラゴが友達になりたいと言うなら良いよと言った。


「分かった。

侑、俺と友達になってくれ。」

ドラゴは侑に握手を求めた。


侑とドラゴは『これからよろしくな』と握手をした。


「気になってたんだけど、侑のステータスを見せてくれないか?」

「別にいいけど?」

侑はテーブルの上にギルドカードを置いた。

ステータスを見せるとドラゴは驚いた。


「なんだよ、このステータスは!

Lvは一桁なのに知力は俺の倍かよ!

それにこのスキルの量は異常だろ?

鍛冶のLvが5っておかしいだろ!

匠だぞ?誰でもなれるもんじゃないぞ?

魔法も闇以外一通り使えるのかよ、聖魔法ってなかなか身に付かないって言うぞ?」

ドラゴは捲し立てると、溜息をついた。


「2・3日後には錬金術もLv5になるわよ?」

後ろから声がする。

振り向くとサラが誇らしげな顔で立っている。


「錬金術がLv5?

何で言い切れるんだ?」

ドラゴが不思議そうな顔をすると


「初めまして、薬師のサラって言います。」

サラはエリカと共に自己紹介をした。


「薬師殿?

何故、薬師殿が此処に居るんですか?」

ドラゴは薬師と聞いて、畏まった。


「薬師殿って…

別にサラで良いわよ。

侑がエリカの火傷を治す助言をしてるのよ。」

さらは薬師という肩書で畏まられても困ると言った。


「そろそろギルドに戻らなきゃいけないから先に行くわ。

あとで、依頼を受けに来て頂けるとありがたいんだけど。」

「確認だが、パーティは五人までか?

従魔は含まれるのか?」

バトラはロゼを引き止めた。


「はい、五人までです。

従魔はカウントされません、何匹でも大丈夫です。」

ロゼは従魔という言葉で『ハッ』としてバッグの中を漁った。


「侑、頼まれてた物を持ってきた。」

従魔用の首輪を手に持っている。


「ありがとう、早かったね。」

侑は魔素濃度の報告に行った時、オニキス用の首輪を注文していた。


「今回の依頼に連れてくるでしょ?

首輪が無いと討伐される恐れがあったから、急いで作らせた。」

ロゼは職人に頭を下げて、無理を言って作らせていた。


「あとで顔を出すよ、その時に代金?を払うね。」

侑は首輪を作らせる代わりに服を作る約束をしていた。


「では、失礼してギルドで待っています。」

ロゼはソファーから立ち、一礼してギルドに戻った。


「今の所は三人か…

あとはどうするか?

このままで三人編成にするか?」

バトラが侑に聞いた。


「四人でしょ?」

後ろから声を上げたのはメイだった。


「お前も行くのか?

後方支援が居ると助かるが、武器はどうする?

愛杖はまだ治ってないだろう?」

バトラはメイを心配な顔で見ている。


「そういえば、母さんのジョブって何?」

侑は戦杖で戦っているメイを一度見ただけでジョブは知らなかった。


「私のジョブはエンチャンターよ。

平たく言うと、付与術師ね。

後方で味方の戦況に応じて、回復をかけたりブースト系の魔法をかけたりするジョブよ。

使い慣れている杖は修理に出してるから、また戦杖で戦うかな。」

メイは自分のジョブを説明した。


「エンチャンターですか、永続魔法は使えますか?」

ドラゴは臨時で組んだパーティの中にエンチャンターが居て、戦い易かったのを思い出した。


「ヒール系なら、三十分保てるわよ。

ブースト系なら、十五分ね。」

侑はピンと来なかったが、ドラゴは驚いていた。


「俺の組んだ事のあるエンチャンターはLv50でしたがヒール系が八分で、ブースト系は四分でしたよ。」

ドラゴは侑が理解できる様に比較してみた。


「多分その人はエンチャンターの本筋に辿り着けなかったのね。」

メイはカバンから何本かの杖を出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る