第5話

「そろそろ行くか。」

侑は身支度を整えて、靴を履いていた。

腰にはナタを装備しているが、

「私が居るから必要ないわよ。」

クスクスと笑っていた。


玄関のドアを開けて外に出ると、『カチャッ』って音がして鍵が閉まった。


「オートロックかぁ、便利だな。」

出たは良いけど、入れないってオチは無いよな…

侑はドアノブを握って、鍵が開くことを確認した。


ミチルは侑の挙動不審な行動を見て笑っている。


敷地内は結界が張ってあるから安全だが、湖畔に行くには結界の外に出なければいけない。

何が起きるか分からないので、侑は緊張気味だが…

ミチルは鼻唄?を囀っている。


門に向かって歩いていると、足元に青くて小さい物が動いている。

よく見ると、ゲームでよく見るスライムっぽいがかなり小さい。


ミチルが睨むと、ブルブル震えている。

侑が意識を集中すると

「苛めないで、苛めないで」

小さい声が聞こえた。


「苛めないよ、大丈夫だよ。」

侑はスライム?に話しかけた。


「言葉が通じるの?」

スライム?は不思議そうだ。


「君は何?どうしてここに居るの?」

侑は話しかける。


「僕はスライムだよ、ここは苛めるのが入ってこれないから逃げて来たんだ。」


「そっか、もう少し奥に屋敷があるから注意してね。で、君は一匹なの?他には居ないの?」

侑は優しく問いかける。


「うん、分かった。僕は集合体だよ、今は八匹が一緒になって見つからないように小さくなってる。」

(スライムはくっつくのか、不思議だな)

「体のサイズが変えられるんだね。」

侑は敢えて確認した。

「うん、通常のサイズはこれくらいかな。」

スライムは八匹に分かれて、掌サイズになった。


「俺は危害を加えないし、今から湖畔に行くから居なくなるけど。

誰か来るかもしれないから、さっきのサイズで見つからないようにしてね。」

侑はバトラが来るのを思い出した。

「うん、ありがとう。湖畔にはカニが居るから気をつけてね。」

スライムは小さくなり、移動を始めた。


「侑様良かったのですか?」


「何が?」


「あのスライムを倒せば、レベル上がりましたよ?」


「結界の中に入れる弱い魔物を倒す気は無いよ。レベルアップは急いでないし。

危険を感じたら、ミチルが動いてたでしょ?

動かなかったって事は、危害は加えられないって事でしょ?」

侑はミチルの動きをしっかり見ていた。

「確かにあのスライムは問題ないから動きませんでしたが、スライムの中にも危険な個体は居ますからね。皆、仲良くは無理ですからね。」

ミチルは侑に釘を刺した。

「大丈夫、分かってるよ。

危害が無いなら仲良くしたいけど、お腹が空いたら食料は必要だし節度を持って仲良くするよ。」


「なら、良いのですが。

この門の向こうは結界が無いですからね、良いですか?」


「よし、行こう。お腹が空いてきた。」


門から出ると、湖畔までの道が続いてる。


結局、湖畔までは何も無かった。

湖畔には備え付けのテーブルとイスが等間隔に並んでる。

侑は周りが見渡しやすそうなちょっと高い位置にあるテーブルを選び、テーブルクロスを広げた。


湖は透き通っていて、魚が泳いでるのが見える。

水辺にはカニやヤドカリが騒がしく動いてる。


お弁当を広げ、侑とミチルは朝食を取り始めた。


「侑様、今日は何をしますか?」

「そうだね、書斎の本は入れ替えてもらわないと読む物無いし。」

町まで行くのはもう少し後だし。

何をしようかね。

侑はノンビリする事を決めた。


「ご飯は作ってくださいね。」

ミチルは念をおした。


「大丈夫だよ、昨日調理のスキル覚えたから。」


「では、今夜は海鮮系にしますか?

目の前に食材が一杯居ますよ?」


「あれ、一応魔物だよね?」

「食べれるの?」


「大丈夫ですよ、火を入れれば問題ないです。」

「侑様の覚えた魔法でも、ナタでも倒せますけどあまりキズ付けないでくださいね。」

「あまりキズ付けると、食材では無くなりますよ。」

「あと、これ大事です。」

「ランゲージを外してください!」


「そうだね、断末魔聞きたくないし。」

侑はパッシブからランゲージを外した。

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