第4話

湯船に浸かりながら、侑は考えていた。


…魔法って発動する時、何処から出るんだろう。

ベッドで見た映画は杖から出てたな。

読んでたラノベは様々だったな。

取り敢えず、色々試してみるしかないな。


侑は湯船から手を出し、手の上で水が丸まって留まるイメージをする。

手の上に幻像が見えるくらいイメージが固まったら、魔法を呼び出す。


…ウォーター。


手の上に水が渦を巻きながら、発現した。

眺めていると、水は丸くなりフワフワと浮いている。


…出来た。けど、時間がかかったな。

だから、イメージを固める変わりに詠唱して形にするんだな。

多分、今の状態だと詠唱の方が早いな。


ある程度イメージを固めておいて、呼び出すタイミングで調整したらどうだろう…


侑はドライヤーで身体を乾かすイメージをする。

脱衣所に上がった侑はイメージしていた魔法を呼び出す。


…エアー。

侑の周りを風が纏わり、濡れた身体が乾いてゆく。


着替え終わった侑はリビングに向かった。

コップに水を入れてソファーに座った。

肩にミチルが乗った。


「侑様、10年振りのお風呂は如何でしたか?」

ミチルはあまりにも出てくるのが遅かった侑がのぼせてないか心配している。


「魔法を試していたら、長くなっちゃったよ。」

侑は笑顔で答える。


「幾つ覚えたのですか?」

ミチルは四つ位を予想した。


「書斎にあった本に載っていた魔法は大体覚えたかな。あとは、スキルレベルの関係で覚えられないのがある位かな。」

侑はサラッと答えた。


「大分覚えましたね。」

ミチルは予想より遥かに多い量を覚えているのに驚いたが、平然を装った。


「魔法使いになる訳じゃないから、魔法はこれ位でも良いかな。次はせっかく鍛冶の国に居るんだから、鍛冶とか錬金術を覚えたいね。」

これ位ってレベルじゃ無いから!とミチルは心の中でツッコんだ。


「使命も何も無いから、暫くの間はノンビリとこの生活を楽しみたいな。」

当の本人は自覚してない。


「そうですね、それが良いと思います。

スローライフですね。」


「取り敢えず、目先の方向性は料理のレベルアップとティーターン様のさざれ石問題、あとレベルを15にしたいな。

それ以外はスローライフで。」


「レベル15ですか、では戦闘も絡んできますね。

落ち着いたら、冒険者登録をする為にギルドに顔を出しますか。」


「でも、なんで15なんですか?」

ミチルは侑なら、レベルは関係ないと思い込んでいた。だから、余計に不思議に思った。


「ステータスは超えてるんだけど、レベルを15にしないとジョブが習得出来ないんだよ。」


「なる程、ジョブですか。

今の時点で何か候補はあるのですか?」


「具体的には無いけど、生産系のジョブは幾つか欲しいな。

本を読んでて気付いたんだけど、クリエイトって諸刃の剣なんだよ。

物の構造が判らなくても作れる。

でも作った物が、理を無視して作られると大変な物が出来てしまうんだ。」


「だから、物の理と構造はしっかり勉強したいんだよ。」

ミチルは難しい話になってきたので、話題を変えたい。


「明日の朝、湖畔まで散歩に行きませんか?」

ミチルは無理矢理会話の内容を変えた。

「湖畔で朝ごはんにしましょう、

残り物ですが、詰めてお弁当を作ってあります。」

ミチルはどうしても話題を変えたかったので、サプライズで用意していたお弁当をバラしてしまった。


「湖畔で朝ごはんか、気持ち良さそうだ。

楽しみだね、書斎の本を片付けて今夜は早く寝よう。」


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