第9話
「儂にお主の国に伝わる日本刀を一振り作ってくれ、あとお主の武器も作れ。」
ティーターンは課題を出した。
「お主は戦闘を好まないらしいな。まぁ、ある程度のモンスターなどならミチルが蹴散らすだろう。」
「だが、ミチルに依存する事を儂は許さん。自分の身くらい、自分で守れ。」
「食べ物はどうする?町中に居る分には買えば良いが、旅の途中の野営ではどうする?」
「ミチルが狩って来るまで、雛鳥の様に待っているのか?」
ティーターンは捲し立てた。
「そうですね、まだ外に出てなかった事も有りますが余りにも考え無しでした。忠告ありがとうございます。」
侑は何も考えて無かった自分を悔いた。
…侑が雛鳥、良いんじゃない?寧ろ、大歓迎だけど…
ミチルはキツい言い方をしたティーターンを睨んだ。
「お主のクリエイトは石を使うんだったな。それはこちらで用意しよう。」
ティーターンは手を叩き、広げると大量の様々な石がテーブルの上を跳ねた。
…どこぞの錬金術士みたいだな…
侑は石を眺めた。
「好きなものを使うと良い。」
そう言い残すと、ティーターンは部屋から消えた。
侑は石の分別を始めた。
石をいくつかのグループを分け、グループのひとつを自分の近くに寄せた。
その工程を見ていたミチルは有に疑問を投げかけた。
「ねぇ侑様?それはどういうグループ分けなの?」
ミチルはテーブルの上に降りた。
「まず、俺の武器は水晶で良いとして日本刀を何の石で作るか考えた。」
「で、石を主な採掘地で分けた。日本刀だから、日本で取れる石を探したんだ。」
「この中には何種類か有ったんだけど、昔愛媛県で取れていたスティブナイトインクォーツを選んだんだ。」
「スティブナイトはもう日本では採れなくなっている希少石なんだけど、内包物(インクルージョン)が刀をイメージさせる色と輝きだからすごく人気ある石だよ。」
ミチルに分かりやすく、石を触りながら説明した。
…侑は勘違いしてるわね。ティーターン様も気付いたから、こう言う課題なのね…
ミチルはふーんって素っ気ない返事をした。
侑は日本刀のイメージを始めた。
神様が持つんだから、攻撃力より装飾メインかな。
でも、日本刀のイメージってシンプルな中にある渋さっていうか…あんまり派手なのって無いよな。
それはティーターン様も当てはまると思うんだよな。
名刀といえば、正宗だな。
正宗なら、守る刀と言われてるしピッタリだな。
スティブナイトを持って、正宗をイメージする。
イメージが固まったら、指輪にかざした。
指輪から魔法陣が発動する、俺は魔法陣に手を入れて刀を引き出した。
「イメージ通りだな」
侑は鞘を抜いて、刃紋を見惚れている。
「キレイ…」
ミチルは肩に乗り、ウットリしている。
俺はスティブナイトをもう一つ手に取り、イメージを開始した。
「あれっ?自分のは水晶で作るんじゃなかったっけ?」
ミチルは疑問を投げかけた。
「うん、これは俺のじゃ無いよ。もう一振り作るんだ。」
俺はイメージを中断して答えた。
次は菊一文字則宗をイメージする。
この刀は沖田総司の愛刀で実際には一度しか使われていないらしい。
本来は太刀なのだが、俺は脇差のイメージで作るつもりだ。
俺はイメージを固め、同じ作業をする。
魔法陣から引き出した刀は正宗と比べると短い。
「失敗したの?」
ミチルは心配そうにこちらを見ている。
「いや、失敗してないよ。これは脇差って言うんだ。」
ミチルに説明をしながら、鞘を抜いてみる。
正宗とは違った趣のある刃紋が姿を見せた。
「さて、次は俺のか。」
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