第8話

白い回廊を歩き出すと、Tが待っていた。


「おかえり、お兄ちゃん」

Tは嬉しそうだ。


「ただいま、これありがとう。すごく助かったよ。」

俺は借りていたカバンをTに返した。


カバンを受け取ると、Tは名残惜しそうにチャクラブレスを俺に返してくれた。


「この扉の向こうで、ティーターン様が待ってるよ。」

Tはもう少し話したかったが、我慢した。


…Tが指差した方に扉がある、さっきは無かったと思うんだけど…


「じゃ、ティーターン様に会ってくるね。」

俺は手を振りながら、扉を開けた。


部屋の中に入ると、テーブルと椅子。

さっきまでと同じ風景。

違うのは、花瓶が有るか無いか。


待っていたのは、大きな男の人だった。


「侑と申したな、よく来た。儂が地の神ティーターンと申す。」

「それと、Tが世話になった。」

ティーターンは礼を述べた。


「侑と申します、Tには此方がお世話になりました。青い鳥はミチルと申します。」

侑はミチルを紹介した。


「青いフェニックスとは、珍しい物を召喚してきたな。

あと、聞いたがお主はブラフマーのユニークスキルを貰ったそうだな。」

「あやつはお主の事を相当気に入ったと見える。」

ティーターンは興味津々だ。


「ティーターン様には、ミチルがフェニックスだと分かるのですか?」

侑は不思議そうに訊ねた。


「儂は地の神だから、地場や空気の揺らぎ等に敏感なのだよ。

先程、地場がかなり揺らいだ。なので、ブラフマーに問うた。」

侑は納得し、椅子に腰掛けた。


「お主の持ってきた大切な物をテーブルの上に出してみよ。」

ティーターンは標本を出すように指示した。


侑は標本をカバンから出しテーブルに置いた。


ティーターンは標本から一つ石を取り、口の中に入れた。


「何をするのですか!」

侑は声を荒らげ、ティーターンを睨んだ。


「お主が怒っているのは、父親のプレゼントを食べられたからか?」

「それとも、自分の持ち物を勝手に食べられたからか?」

ティーターンは侑の目を凝視する。


「違います!」

「父親から貰った思い出は食べられても無くなりません。」

「勝手に食べられたからと怒るのであれば、俺は色々な食べ物から怒られるでしょう。」


「この石達はいつも俺を慰めてくれたり、話し相手になってくれた大切な物です。

この石ひとつひとつが宝物だから、声を荒らげたんです。」

侑は気持ちを抑えながら、ティーターンに説明した。


「うむ、石自体が宝物だと言うのだな。

では、返そう。試して悪かったな。」

…思った通りの人間だな、ブラフマーが気にいるのも分かる…


ティーターンは手を開き、口に入れたはずの石を侑に返した。


「では、本題に入る。」


「本来なら、儂からもスキルを3つお主に渡す筈だったがお主の貰ったスキルがあれば、儂からのスキルは不要であろう。」


「なので、儂からはミチルにスキルを一つとお主に魔導具を一つ渡そうと思っているのだが如何か?」

…ブラフマーはやり過ぎだ、儂の立場というものを分かっていない…

文句を言いながら、侑に提案した。


侑はティーターンからの提案を喜んで受けた。


「ミチルには毎朝ランダムに一つずつ石が産めるスキル(ガチャ)

お主にはこの砂時計を渡すとしよう。

この砂時計は自分以外の時間を遅らせるスキルを発動する事が出来る魔導具である。」

スキルと魔導具を説明すると

「お主はラーニングを持っているな?ガチャは覚えられんぞ、オスだからな」

と笑った。


「お主はこの後、儂の治める国で生活してもらう。

あくまでもスタート地点と考えて、他の国に移動してもらっても構わぬ。

ブラフマーから言われておるだろうが、お主は好きに生きれば良い。」

侑には自由に旅をして欲しかったので、わざと突き放した言い方をした。


「ただ、旅立つ前に試験をひとつ受けてもらうぞ。」

ティーターンは侑に課題を出した。


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