イメチェンの理由

 バイト先で気になっている女の子が、ある日ばっさりと髪を切ってきた。

 それはもう、腰まであったのを肩にかからないぐらいにばっさりとだった。

 古臭い考えかもしれないけど、女性が髪を切るというのは失恋をした時の可能性がある。

 もしも彼女を振る男がいたとしたら信じられないが、同時に俺にもチャンスが出来て感謝する気持ちもあった。

 だから休憩中、確かめるために彼女に話しかけた。

「どうして、髪を切ったの?」

「え。ああ、理由ですか。……実は彼氏に振られちゃって」

 彼女は特に気にした様子も無く、髪をいじりながら教えてくれる。

 その様子からは、振られた悲しみを感じられない。

 失恋の痛手に付け入れそうもないなら、正攻法でアピールするべきか。

 色々と考えて、俺は覚悟を決めた。

「そうなの。それじゃあさ、俺にもチャンスがあるって事かな」

 遠回しにだけど、鈍感じゃない限りは通じる言い方。

 彼女にも、きちんと伝わったみたいだ。

「うーん、あるかもしれませんね」

 可愛らしく笑いかけられる。

 その表情を見て、本当にチャンスがありそうだと俺は確信した。

 それなら、アタックをし続けるべきだ。

「じゃあ、今度さ。一緒にどこかに出かけようよ。何時が暇?」

「そうですね。しばらくは後片付けをしなきゃいけないから、それが終わったら良いですよ」

 俺の誘いにも、簡単に了承してくれた。

「手伝おうか?」

「いえ。元彼なんで、私一人でやろうと思います。気を遣ってもらって、ありがとうございます」

 彼女は元彼の事を、きっぱりと忘れるみたいだ。

 その晴れ晴れとした表情で分かる。

 これは、もしかしたらすぐに付き合えるかもしれないな。

 俺は、これからの日々を期待しながら、胸を高鳴らせた。

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