エレベーターの知人

 マンションに住んでいる家族の所に行く時、必ずエレベーターに乗る。

 その時にだけ、たまに会う人がいた。

「こんにちは」

「こんにちは、また会いましたね」

 マンションの住人なんだろう、五十代の女性。

 一緒になると、軽い世間話をする仲になっていた。

 エレベーターに乗っている数十秒の間だったけど、何となく彼女の人となりは予想出来た。

 持っている買い物袋の中身からして、家族がたくさんいる。それか大食いの夫か子供か。

 それに、おせっかい。初めて話した際には、私の服についていたゴミを教えてくれた。

 私はいつしか、彼女と会うのが楽しみになっていた。


 家族から、あんな話を聞くまでは。

「え? その人、一人暮らしのはずだよ。家族とか一切見た事ないから」

 次に会う時は、いつもの様に話を出来そうにない。

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