「自分の手が勝手に動く時って無い？」

「は？　そんな事、あるわけないだろ」

　友人との飲み会。

　酒がまわってきた頃、そんな話を急にされた。

　僕はジョッキを片手に、間抜けな顔をしてしまう。

　自分の手が勝手に動く？　それは病気なんじゃないか。

　心配と呆れが混じって、どんな答えを返して良いか分からない。

「いや、あるんだよな。しかも大体、パソコンで何かをしている時」

　しかし友人は俺が返事をする前に、勝手に話を続ける。

「特に検索をしようとすると、手が勝手に動いて変な文字を打ち出すんだよ」

「変な文字って？」

「……『見ている女首を吊る』」

「何それ、ホラーじゃん」

　病気じゃなくて、怖い話のほうだったのか。

　まさか彼がそんな非現実的な話をするとは思わず、嫌な顔をしてしまった。

　僕は、そういった類のものを信じていない。

　どうせ、これも僕をからかうために言っているんだろう。

　絶対に信じない。

　そう内心で思いながら、僕は彼の話に付き合ってあげる事にした。

　ホラー映画だったら、これから恐ろしい何かが起こるんだろう。

　ここは現実だから、ありえないけど。

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