第4話 俺、出陣!

「ちょうどよい機会じゃ、話しておくことがある」

 ユーリクがいつになく真剣な面持ちで言った。

「いやいや、そんな悠長なこと言ってていいのか?」

 俺はダリアの輝きを増していく瞳を見ながら言った。

「お客さんってあれだろ? ま、魔物だろ?」

「そう、そのお客のことなのじゃ」

 ユーリクは頷いた。

「これは全て、あの日、黄昏の森を消滅させたことに関係しておる」

「どういうことだ?」

「本来、森林というものはじゃな、二酸化炭素を吸い、酸素を吐き出す。およそほどんどの生き物はこの酸素がないと生きていけん。それはみな、知っとるな?」

 俺だけでなく、ダリアやクアリスも黙って相槌を打った。

「あの魔の森も同じようなことをしとる。混沌を吸い、魔素と呼ばれるものを吐き出しとるのじゃ」

「魔素?」

「魔物にとっての酸素のようなものじゃ。大きくて強力な魔物ほど、大量の魔素を必要とするのじゃ」

「だから深い森ほど強力なヤツが湧くのか……」

「うむ。防衛研究所は何年も前から、大気中の魔素の濃度を観測し、世界に警鐘を鳴らしてきた。黄昏の森の増殖を食い止めんと今に大変なことになるとな。ところが嘆かわしいことに、真面目に耳を傾ける国などほとんどあらなんだ。人間というものは脅威が目の前に迫らねば、動かぬものらしいのぉ」

 なんだか二酸化炭素の濃度とか、温暖化現象の問題に似ているなと、俺は思った。どこの世界も似たようなものなんだな。

「要は黄昏の森の増殖を止めればよい。そう考えた防衛研究所は、数年前、一つの森を焼き払った。ところがじゃ……」

「駄目だったのか?」

「うむ。確かに黄昏の森は一旦は焼失した。しかしあっという間に再生しよった。そしてなおさらの勢いで増殖し始めよったのじゃ。どうやら土壌まで汚染されておるらしい」

「それはやっかいだなぁ」

「じゃが、手をこまねいているわけにはいかぬ。防衛研究所は、新たな対策を講じた。それが魔道リーバじゃ。黄昏の森を土壌ごと健康な原生林に転生させる秘術じゃ」

「ああ、そういうことだったのか」

 ようやく俺が森の中で経験したことの一端が見えてきたようだ。

「ところがじゃ、リーバの術理公式を完成させるにあたっては、難しい問題が山積みじゃった。あれほどの魔道となると、いくつもの術理公式を組み込まねばならんのじゃが、生命そのものを扱う術理には禁忌のものが多い。一歩、扱い方を誤れば、恐ろしい兵器にもなるし、世界を滅ぼしかねない災厄をまねくやも知れん。これがややこしい事情もあって、どうしても使用許可が降りんかった」

「ルヴィ様は、リーバの完成のために、その禁忌の術理公式を盗み出したんだな?」

「そうじゃ。リーバは絶対に完成させねばならんかったのじゃ。魔素の濃度は右肩上がりで、このままではいつ臨界点を迎えるやも知れんでな」

「臨界点?」

「魔王が現世に具象化出来る濃度のことじゃ。それだけではないぞ。魔王が具象化出来る濃度となれば、当然、配下の一切の魔物も具象化できるということじゃ。魔王の配下、何千、何万の魔物の軍勢が襲ってくるということになる」

「めちゃくちゃやばいじゃないかっ!」

「だからこそ禁忌を犯してでも魔道リーバを完成させねばならんかったのじゃ。黄昏の森の増殖は、魔王どもの最重要戦略じゃ。それを消滅させるリーバの開発を気づかれるわけにはいかん。そこでルヴィ様は、わしにある任務を与えた」

「それで黄昏の森に住んでやがったのか!」

「ほっほっほ。そうじゃとも。わしは、魔王どもに気づかれずに仕上げが出来る場所を探した。滅びゆく国の片隅の村にある小さな森は、まさもうってつけの場所じゃった。しかも、そこは英雄降臨の地でもある。世界再生は、まさにそこから始まるんじゃ」

「久宝昌平か…!」

「お前さんもじゃよ」

「お、俺? よせやい、俺が雑魚なのは、ユーリクが一番してるだろ」

「世界は、そうは見ん。もう一度、世界がまとまり力を合わせるには、象徴が必要なのじゃ」

 そうか、そうだったのか…! 実力など問題ではない。ユーリクは最初から俺をそういう風に利用しようとしてのか!

「このジジイ、やってくれたな?」

「ほっほっほ。面白い人生になりそうじゃろう?」

 この後があまりにも思いやられる。スライムをつつくだけしか出来ない俺が、救世の英雄だと?

「まあ、その話はええわい、話をもどすぞ」

 クソジジイは、咳ばらいを一つして、

「ところがこの計画には誤算が二つほどあったのじゃ。一つは術理公式を盗み出したことがバレたことじゃ。うまくやったと思ったのじゃが、ルヴィ様にはストーカーがいたんじゃな。ああ四六時中つきまとわれていては、バレるのも仕方がないことじゃ」

「ピルロだな?」

「そうじゃ」

「んんっ! やっぱりピルロ様、気持ち悪すぎるっ」

 ダリアが嬉しそうに身震いした。

「不幸中の幸いは、ピルロは国家当局に届けず、ルヴィ様を脅かす材料にするため、自分の胸にしまい込んだことじゃの。二つ目は、魔道リーバの余波を見誤ったことじゃ」

「あんな独特で大きな魔道反応、隠しようがないよ」

 レーダー顔負けのダリアが言うのだから間違いない。事実、こいつに感応を感知されてピルロに見つかったのだから。

「魔王どもが気づきよったのじゃ。魔道リーバの存在に……!」

「そうか、それでユーリクはいつも追手を警戒してたのか」

「現にドラゴンの来襲があったじゃろ。ドラゴンは魔物というには特殊な存在じゃが、やはり魔素の存在は欠かせん。あの夜は、あれだけの怪物を召喚できるほど、魔素が濃かったんじゃ」 

「やつらには、ルヴィ様のいどころが分かるのか?」

「いや、魔王が王宮に目をつけたのはピルロの存在があったからじゃろう。あやつを追えば、ルヴィ様に行きつくことを知っておるのじゃ」

「魔王はそんなことまで知っているのか?」

「当たり前じゃ。どの国にも魔は潜んでおり、諜報活動をしておるよ。ピルロがルヴィ様に懸想しておることなど先刻承知じゃ」

「知らない間に操られたり、目や耳を乗っ取られたりしてる場合もあるよネ」

 存在自体がスパイみたいなダリアが言うんだからこれも間違いない。

「魔道リーバは、ルヴィ様のここにしか存在しない」

 ユーリクの頭を指さしながら言った。

「守りの固いボルゴダに帰還する前に、是が非でも亡き者にしようとするじゃろう。それが―」

 突如、サイレンがけたたましく鳴り響いた。続いて伝声管から緊張した声で全艦に放送が流れた。

「総員に告ぐ、一級戦闘配置! 各自、完全武装の末、戦闘配置に着け! 現在、甲板にて敵、魔物数体と交戦中! その数はますます増える模様! 繰り返す、一級戦闘配置!」

 ユーリクは放送が終わると、ため息をついて、

「―それが、これから訪れるお客さんというわけじゃ」

 と言った。

「いくぞ!」

 ユーリクは老人には似つかわしくない足腰をしている。ひょいと軽やかに立ち上がると、そのまま部屋を飛び出して、もう廊下を駆けている。

「おい、待てよっ」

 俺たちは慌てて後を追った。一気に甲板に辿り着くと、大粒の雨の中、すでに兵士たちが魔物と闘っている。

「ありゃなんだ? 魚か?」

 一言でいうと海に似つかわしく半魚人みたいな魔物だ。全身が鈍く虹色に光る鱗に覆われており、頭から背中にかけて、するどいヒレが逆立っている。大きな目玉の割りに身長は兵士たちの肩ぐらいまでしかないが、三又に分かれた、フォークみたいな槍を器用に振るって戦いを挑んでくる。

「マホクじゃ! こりゃ面倒くさい相手じゃのう」

「マホク…!」

 そのマホクは海面から大ジャンプを行い、次々と甲板に降り立った。対して兵士たちも続々と甲板に上がって来る。ほどなく、大人数が入り乱れて戦う乱戦になった。

 俺たちは、メインマストのシュラウドと呼ばれる網の部分に上った。とりあえずの安全地帯だ。ここなら戦況を一目で見下ろせる。

 見ていると屈強な兵士たちは苦も無く、マホクと呼ばれる半魚人を片付けていく。

「そんなに強くはないな」

「いや、侮るでないぞ」

 ほどなくユーリクが面倒くさいと言った意味が分かった。一体、一体は確かにさほど強くないのだが、マホクたちは次から次へとひっきりなしに甲板に飛び上がってくる。そのうち3匹、4匹と、同時に飛びつかれ、身動きできなくなったところを攻撃され、負傷する兵士が出始めた。

「危ない!」

 クアリスが叫んで、小さな術理公式を展開した。負傷をした兵士にとどめをさそうと突進してきたマホクが、見えない壁に衝突したように弾き飛ばされた。その隙に仲間の兵士が助け起こし、船内へと運んでいく。

「重力障壁か、やるのう」

「すごいな、クアリスは。 でも、どうせだったらヤツらを持ち上げて叩き落せばいいのに」

「禁忌です」

 クアリスが言った。

「え?」

「意志あるものの意に反して、重力を操ることは禁忌になるんです」

 なんというフェアプレイだ。でも、そんなこと言ってる場合なのか。

「攻撃に使う時は、モノを投げつけたり、障壁を作ったり、そういうやり方になります」

「心魂の魔道もそうだよ。誘惑したり、魅惑したり、付け込んだりするのは構わないけど、相手の気持ちを完全に無視して操るのは禁忌」

 ダリアが付け加えた。

「なんでもかんでも禁忌なんだな」

「ボルゴダは魔道の先進国じゃ。だからこそ魔道に関する戒律も厳しい。人間や生き物の尊厳にかかわることは、特にな」

 なるほどね。人権に配慮してってヤツだな。しかし剣で切り裂くのはどうなんだろう。どうせ相手は悪だ。そうであるなら遠慮なくやっつければいいのにな。

「私、行ってくるネ」

「え?」

 ダリアが腰の鞘からスラっと刀身を抜き放った。少し細い日本刀といった感じの剣である。

「お、お前、それ本物だったのか?」

「なんだと思ってたの?」

 そういうと、ダリアはマントをひらりとなびかせて、甲板に繰り広げられるマホクと兵士たちの乱戦に飛び込んだ。

「あ、危ないぞっ! 何考えてんだ、あのじゃりン子は! クアリス、さっきの重力障壁とかいうやつで助けてやれよ!」

「心配いりません」

 クアリスはにっこりとほほ笑んだ。

「何を言って…!」

 だが、クアリスの言葉の意味はすぐに分かった。ダリアは剣をきらめかせ、くるくると体を旋回させながら、次々にマホクを切り刻んでいく。その姿はまさしく華麗な剣の舞だ。みじんも危うさを感じさせない。

 俺の口は貝柱の切れたホタテ貝のようにあんぐりと開いたままになった。

「こりゃ見事じゃ……!」

「あの娘は剣技に関しては天才とよばれていますから」

「天才? 魔道の方じゃなくて?」

「ダリアは魔道に関しても、それは優れた才能を持っているのですが……ずる休みをしたり、禁忌に興味を持ったり、素行に問題ありとされ、学校での成績はそんなによくないのです。でもその剣技は―」

「やっ、とぉっ!」

 ダリアは宙で一回転し、そのまま3匹のマホクの額を叩き割って着地を決めた。

「―紛れもなく天才です。剣術の師範もダリアには敵わないほどです。でも彼女はその裏ですごい努力をしてるんですよ。どうしても心魂の魔道だけでは、心許ないときがあるからって」

 くっ、認めんぞ。格闘においてもあいつが俺より強いなんて…! ますます俺の立場がなくなるではないか。

「きりがないぞ!」

 甲板では戦況が動き始めた。兵士たちは相変わらず戦いを優位に運んでいる。ただし、一対一では、である。次々にマホクを倒すのだが、それに倍するマホクが甲板に飛び上がってくるのだ。数の暴力の前に兵士たちはじりじりと押され始めた。

「くそっ! ヤツら何匹いるんだ? ユーリク、これはまずいぞ」

「そうでもない」

 ユーリクが言い終わらないうちに、5~6匹のマホクがまとめて宙に舞い上がり、甲板にたたきつけられた。

「ビトー副隊長!」

 兵士たちが信頼する上官の名前を口々に叫んだ。ボルゴダの次期最強剣士と言われる焔獅子騎士団副隊長ビトーの登場である。

「手を焼いているようだな」

 ビトーが返り血のついた剣を振り降ろすと、ビシャッと床に血が落ちた。彼は大きく息をすると、よく通る声で叫んだ。

「諸君らに問う! 焔獅子騎士団は、こんな魚野郎に後れを取るのか?」

 兵士たちは答える。

「否っ!」

「そうだろう! 焔獅子騎士団は無敵だ! それは何故か?」

「獅子の魂を持つもの以外、我が団にはいないからです!」

「よく言った! では獅子の魂を持つもの共に問う。それを証明するのは何時だ?」

「今、まさにこの時!」

「よしっ! では私たちの力を存分に見せてやろうじゃないか!」

 ビトーは不敵な、それでいて沁みとおるような笑みを浮かべた。

「おううっ!」

 鬨(トキ)の声が上がり、兵士たちの士気は一瞬で極限に達した。今までの停滞が嘘のように、一丸となってマホクの群れへ突進していく。あっというまにマホクの群れを押し返し、甲板の前部に追い込んでいった。中でもビトーの働きはすさまじく、彼の剣が振り下ろされるたびに、まとめて何匹ものマホクがズタズタに引き裂かれていく。まるで鬼神だ。

 その光景を見ていた俺の体はブルブルと震えた。全身に鳥肌が立っている。

「す、すごい…っ! あ、あんな男が存在するのか…!」

 この全身の震えは、いつもの臆病風に吹かれてではない。ビトーの鼓舞に俺の魂まで呼応し、武者震いというものを生まれて初めて経験したのだ。

(あ、あれが勇者…、あれこそ間違いなく英雄だ)

 もう自分と比べるのが馬鹿らしいほどである。本物との差を嫌というほど思い知らされた。

 だが、そのビトーに隙が生じたようだ。彼が強すぎるがあまり、一人でマホクの群れに突出しすぎ、完全に取り囲まれてしまっている。マホクたちは円形にビトーを囲み、今にもいっせいに飛び掛かろうと身構えた。

「なんだ、それで優位に立ったつもりか?」

 ビトーはマホクたちを見回した。魔物といえども命が惜しいらしい、うかつには飛び掛からない。しかし中には勇気のあるやつもいて、ギョギョギョッと吠えると、三又の槍ごとビトーに突進した。

 ビトーがそいつを切り捨てるより早く、その勇気あるマホクは突然体中から発火し、メラメラと燃えあがった。

「腕前を頼んで、突っ込んでいきすぎるのがお前の悪い癖だ、ビトー」

「ルヴィッ!」

 可愛そうなマホクは、ルヴィ様の業火で燃やされたのだった。彼女は乱戦の中、つかつかとビトーに向かって歩いていく。兵士もマホクも、思わず道を開けた。無理もない、今しがたのすさまじい炎を見れば、誰だって怖くなる。

「ルヴィ、こうやってお前と一緒に戦うのは何年ぶりだ?」

「さあな、忘れた!」

 ルヴィ様はマントをひるがえし、小さな術理公式をいくつも展開させた。

「しかし、安心して背中を任せられるこの感覚は忘れていないぞ」

 そう言うと、短い呪を唱えた。無数の小さな火球が中空に生まれ、マホクたちの群れに降り注ぐ。

 ギョギョギョギョッ!

 なす術もなく逃げ惑うマホクたち。炎に巻かれたものは、あるものは死に絶え、あるものは海に飛び込んだ。

「当分、焼き魚は食べられないな」

 ルヴィ様の炎は甲板を席巻し、マホクの数を猛スピードで減らしていく。その死体が甲板中のあちこちで燃え盛っている。

 ジューッ!

 突然、水が浴びせかけられ、甲板の炎は一瞬で鎮火した。

「ルヴィ様、これでよろしいのでありますか?」

 涓滴の魔導士、サイファの魔道だった。

「うむ。甲板の上で火を使うのは気が引けるが、お前がいれば安心だ。存分に行くぞ」

「ほっほっほ。ルヴィ様も考えたな。サイファの水の魔道では、水棲のマホクと闘うにはちと不向きじゃ。じゃが、消火活動に当たらせれば、ルヴィ様も心置きなく戦えるというものじゃ」

 ユーリクはあごひげを撫でながらそう論評した。

 ダーンッ!

 剣と魔法が織りなす一大スペクタクルに、無粋な銃声が鳴り響いた。

「艦長! 危険です、艦橋にお戻りください!」

「俺の食後のワインタイムをじゃまするヤツは、どこのどいつだ? ヒック!」

 ワインの瓶を左手に、短銃を右手に持ったストランディルがふらふらと船上に迷い込んできた。

「なんだぁ? 俺をほっぽっといて、随分楽しそうなパーティをしてるじゃねーか」

 ダーンッ!

 一体のマホクが倒れた。

「俺も混ぜてくれよ!」

 いや、もう甲板は無茶苦茶である。大人数でもみ合う兵士とマホク。剣の腕が冴え渡るビトー、次々に魚を焼きあげるルヴィ様、そしてその後始末をして回るサイファ。ストランディルは足元もおぼつかないほど酔っぱらって、豪快に笑いながら、次々とマホクを撃ち倒していく。いつ味方に当たるとも限らないので、むしろ兵士たちはストランディルに注意を払いながら戦っているのだから危ないことこの上ない。

 クアリスは兵士が倒れる度、重力障壁を造り出し、けが人を保護している。そしてダリアは…、あれ、ダリアは?

「ちょびっと疲れたワ」

 知らぬ間に俺の横にちょこんと座っている。しかし、押しも押されぬ戦いぶりだったのは認めざるを得ない。

「お前さんは行かんのか?」

 ユーリクがいつもの意地の悪い笑顔で言った。

「みな、それぞれの得意分野で活躍しておる」

 そう言って、あごをくいっと動かして甲板を指し、

「で、お前さんは行かんのか?」

「ユ、ユーリクも何もしてないだろ?」

「いや、わしはこれから医務室に行く。そろそろ軍医だけでは手が足りなろうて。で、お前さんは……」

「うるせー、さっさと行け、このジジイッ!」

 ユーリクはほっほっほと笑いながら、シュラウドを伝って甲板に降り立ち、船内へと降りる階段へ消え去った。

「でも、あのおじいさんは読めないなー。何考えてんだか、さっぱり!」

 クアリスが言った。

「お前でも覗けない心はあるのか」

「うん、けっこうネ、あるよ」

「今の俺の気持ちは分かるか?」

「……う、うそ! 燃え上がってるっ!」

「そうさ、俺は燃えてるんだ、真っ赤にな!」

 そう言い残し、俺はシュラウドから飛び降りた。甲板に落ちていた剣を拾って、眼前の戦場を見つめる。

「やってやるっ!」

 俺はついにスライム以外の敵と戦うのだ!

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